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熊本地震から約1か月半…車中泊など“見えない避難者”の存在

最大震度7を観測した熊本地震から約1か月半。発災後、最大で1万人を超えた避難者は2000人を切りました。

【写真を見る】竹馬さん一家が避難生活を送る“コンテナ”「日中は息もできないほど暑い」

一方で、避難所には行かず駐車場や軒先などで避難生活を送る、いわゆる“見えない避難者”が発災直後から今に至るまで相当数いるとみられています。

こうした被災者を支援しているのは、一般社団法人「minori」の代表理事、高木聡史さん。現在把握しているだけで、大型商業施設に50~60台、コンビニ駐車場に30台以上、そのほか住宅地の駐車場や軒先などに「車中泊」の避難者がいるということです。

全体像が分かっていない“見えない避難者”。その実態と課題を取材しました。

夜の道の駅…車中泊の被災者に物資届ける男性

地震から1か月以上経った8月末の夜。夜道を走る1台の軽トラックが。運転するのは被災者への支援を続けている熊本市の高木聡史さんです。

(「minori」代表理事 高木聡史さん)
「きょうは車中泊を続けている方と色々な話をしながら物を届けようかなと思って来ています」

到着したのは最大震度7を観測した熊本県宇城市の道の駅。仲間と一緒に駐車場に停められた車を1台1台見て回ります。高木さんは困窮者支援などを行う熊本市の一般社団法人・「minori」の代表理事です。

支援しているのは、避難所ではなく車中泊などで暮らす“見えない避難者”と呼ばれる人たち。

10年前の熊本地震でも車中泊などが相次ぎましたが、行政などの支援が十分に届いていないと感じていました。

「ほぼ足を上げた状態」エアコンなしで約1か月の車中泊の50代男性

この日は車中泊を続けている50代の男性と出会いました。

(車中泊を続ける 50代男性)
「(避難所は)プライバシーもほとんどなかったので、プライベートがある程度確保されて冷房も調整できる車中泊を選んだ。足はほぼ伸ばせていないですね。ほぼ足を上げた状態」

ただ、今は車が故障し、エアコンが効かない車の中で1か月近く車中泊を続けているといいます。

飲料水・ウエットティッシュなど「今必要なもの」を渡す

高木さんは生活状況や健康状態などを丁寧に聞き取り、今必要なものを渡していきます。

(「minori」代表理事 高木聡史さん)
「とりあえず飲料水。後ろに載せておいていいですか。(このウェットティッシュは)ノンアルコールなので体拭きまではできないかもしれないけど、ちょっと気持ち悪いときに。着替え用にね、TシャツLサイズ。着る人を選びそうで、似合いそうだから」

「非日常的な生活で心も体も疲弊」把握できない“見えない避難者”

(「minori」代表理事 高木聡史さん)
「非日常的な生活の中で心も体も疲弊していく。なかなか将来の展望も見えず、だんだん追い詰められていく」

今回の熊本地震では関連死の疑いがある人も含め38人が死亡。住宅被害は約6万9000棟、避難所には今なお1771人が生活しています(9月11日時点)。

ただ、集団生活への不安や介護の問題、それに、ペットがいるなどさまざまな事情で避難所に行けず、車中泊や被災した家などで生活を続ける人もいます。

こうした”見えない避難者”は相当数いると見られていますが、人数などその実態は把握できていません。

「後期高齢者2人を置いていけなかった」避難所には行かず家族7人で避難生活

宇城市で農家をしている竹馬さん一家も避難所には行っていません。両親と夫婦、聴覚に障害のある子ども3人の計7人で避難生活を続けています。

地震の影響で自宅の外壁に大きな亀裂が入り、家の中も壁が大きく崩れるなどの被害が複数あり、中で生活することは出来ません。

―――避難所に行かなかったのはなぜ?
(竹馬陽子さん)
「お父さんお母さんが行かないと言ったから。後期高齢者2人を置いてはいけなかった」
「自分の家から離れられないんじゃないかな。思いとして。見張っていてもどうにもならないのに、崩れかけている家。合理性だけじゃ動けない」

窮屈な敷地内のコンテナ「息もできないほど暑い」「腰も痛くて体も休めない」

竹馬さん一家は10年前の熊本地震の直後、敷地内に建てた「コンテナ」での生活を選びました。約8畳のスペースで7人並んで寝ていたそうです。

(竹馬陽子さん)
「日中はとてもじゃないけど息もできないほど暑い。朝の8時ぐらいからクーラーは(つけていても)効かない」

あまりにも窮屈だったため、今は敷地内にテントを張って、家族分かれて寝泊まりしています。

(長男 竹馬和さん)
「腰も痛くて体もちゃんと休めない。心はちょっと落ち込んでるって感じですね」

「今必要なものをすぐ」電子レンジを持って訪れた高木さん

竹馬さんのもとには、“見えない避難者”への支援を続けている高木さんが何度か訪れています。
(竹馬陽子さん)
「電子レンジ、やった~」
(「minori」代表理事 高木聡史さん)
「ずっと使う分にはちょっと年期が入っているから、今を支えるだけのためで、いらなくなったら全部持って帰る」

高木さんは、今必要なものをすぐ届ける細やかな支援を続けています。

「ちょっとしたことで涙が…」話を聞くという支援も

物資だけではなく、話を聞くことも大切だといいます。

(竹馬陽子さん)
「聴覚障害だけじゃなくて、頑張っていたんでしょうね。すごく大きなトラブルはないと思いながら見てたけど、ちょっとしたことで涙が止まらなくなって。3日ぐらいモヤモヤしてたね」
(「minori」代表理事 高木聡史さん)
「それ普通。無理に止めなくてもいい」

(竹馬陽子さん)
「私たちみたいに、掌握されていない人間にも手を差し伸べてくれようとする存在があるんだっていうのが、すごく嬉しかったですよね」

まだまだ先の見えない軒先での避難生活が続きます。

ボランティア・支援制度など「避難所で得られる情報から閉ざされてしまう」

様々なリスクが懸念される“見えない避難者”。

今回の地震では車中泊をしていた70代の女性が熱中症の疑いで亡くなりました。災害関連死の可能性もあるということです。

専門家は“見えない避難者”のリスクを次のように指摘します。

(大阪公立大学 菅野拓准教授)「(行政が)把握できないわけですから。体調が悪化して関連死のリスクというのは当然出てきますし、情報から漏れてしまう訳ですね。避難所にいると様々な支援制度の情報が入ったり、ボランティアが助けてくれたり、そういった情報から閉ざされてしまうことが起きます。生活再建が上手くできないまま、とどまってしまう」

京都府亀岡市で整備「車中泊専用」の避難スペース

“見えない避難者”の問題。京都府亀岡市では、全国でも珍しい施設が整備されています。

この春、車中泊専用の避難スペース「カーシェルター野水」を整備。195台が駐車でき、テントを立てる芝生スペースも。

利用時は名簿に登録するため、誰が避難しているか分かります。敷地内の備蓄倉庫には、足を伸ばすことのできる折り畳みのベッドや、車中泊の時に心配されるエコノミークラス症候群を防ぐための靴下などを備えています。

敷地内にはトイレやシャワーなども。断水時に直接、下水道に流して利用できるマンホールトイレ8基も用意しました。

車中泊に特化した避難スペースは全国的にも珍しいということです。

(亀岡市 自治防災課 石津仁係長)
「熊本地震に私も行かせていただき、軒先避難などをされている方がたくさんおられることを目の当たりにした。長期間避難されるケースが想定されるので、快適に過ごしていただけるような避難所でありたいと思う」

災害が起きる度に浮かび上がる“見えない避難者”の存在。対策が急がれます。

(2026年9月15日放送 MBSテレビ「よんチャンTV」内『特集』より)