タイで現地女性と国際結婚した69歳日本人男性。勘当・失業を乗り越え、タイの屋台店主にたどり着くまで
90年代後半には日系企業進出も増え始めたタイなので、長期滞在者の中には20年を超えて居住する人も少なくないが、それよりもずっと前から移住している人もいる。タイ在住40年選手のひとりである杉森美仁さん(69歳)のタイ人生を聞いてきた。
◆初めてのタイは1978年のころ
「大学に入学したものの1年で中退し、観光専門学校に入りました。観光業に入れば旅行にタダで行ける。そんな考えからです」
当時はまだ卒業すれば誰でも採用してくれるような就活に最高の時代だ。卒業生が大手旅行社に散らばっていき、卒業旅行シーズンには母校へさまざまなパッケージツアーを提案してくる。
「東南アジアとかアメリカ、ヨーロッパとかですね、日本国内もあるんですけど、ワタシは東南アジアに行きたかったので親にねだって申し込み、卒業旅行として初めてタイに来たんです」
卒業後、杉森さんも旅行社に就職したものの、理想とのギャップに悩まされる。営業所に配属された新人は経理関係から始まって、国鉄の切符を販売したりなど、「これじゃあ旅行にタダで行けないじゃないか」となってしまった。
他方では実はしっかりとタイと繋がっていた。卒業旅行で泊まったタイのホテルで働いていたタイ人女性スタッフと仲よくなっていて、文通をしていたのだ。当時はメールもないし国際電話も簡単にできるものではなく、いわゆるエアメールで互いに手紙を送りあっていたのだった。
◆旅行社の恩恵で親に内緒で恋人を呼び寄せる
就職したのは79年のころ。杉森さんはまだ21歳のときである。
「70年代は旅行業界・航空業界が大量輸送時代に入っていました。ジャンボジェットが導入され、俗にいわれるチャーター便が多く運行されていたのですね」
チャーター便は航空会社がジャンボの座席を旅行会社数社に分割して販売する便だ。旅行社はそれを利用してハワイやバンコクへのパッケージツアーを組む。まだ個人旅行でチケットを購入する時代ではなかったというのもある。
