11月運行開始、名古屋と伊勢志摩を結ぶ優雅な列車旅 近鉄“初”のレストラン列車「Les Saveurs志摩(レ・サヴール・しま)」
近鉄(近畿日本鉄道)には、大阪・京都・名古屋と伊勢志摩を結ぶ「しまかぜ」、大阪から飛鳥・吉野へは「青の交響曲〔シンフォニー〕」、大阪・奈良・京都を結ぶ「あをによし」という魅力的な観光特急“三姉妹”が走っている。そこへ新たに、名古屋と伊勢志摩を結ぶ「レストラン列車」が、2026〔令和8〕年11月に華々しくデビューする。その名は「Les Saveurs志摩〔レ・サヴール・しま〕」。景色を眺め、料理を味わい、大切な人と過ごす・・・美食誘う優雅な列車旅を演出する新型車両を、いち早くご紹介することにしよう。
※トップ画像は、近鉄のレストラン列車「Les Saveurs志摩〔レ・サヴール・しま〕」の4号車の車内。流れる景色を眺め、美食を楽しむために洗練されたくつろぎ空間は、非日常的な旅へと誘う=2026年9月18日、近鉄名古屋線で
「味わい」、「風味」を表すフランス語“Saveur”
美食が誘う、優雅な列車旅をコンセプトに開発された近鉄の新型レストラン列車。この車両、元々は1977(昭和52)年に登場した特急電車「サニーカー」(12400系)を、総工費7億5千万円をかけて改造したもので、新たな形式は19400系を名乗る。過去には、昭和天皇、香淳皇后の「お召列車」としても使用された車両だ。
編成は4両編成で、名古屋駅寄りから1号車、2号車の順で、伊勢志摩寄りが4号車となる。車体(エクステリア)は、志摩の「海・白砂・太陽」をイメージしたブルーメタリックを基調としたカラーリングに、ゴールドの帯をあしらった高級感漂うデザインに仕上げられている。総座席数は50席で、提供される食事の内容によって利用する号車が異なる。
車内(インテリア)は、4両のうち3両が客室となっており、1・2号車は各座席を窓に向けて斜めに配置し、車窓を楽しみながら料理を味わうことができる向かい合わせのテーブル配置になっている。”座席を窓に向けて”と聞くと、駅に停車したときなど他人の眼が気になると思われたかも知れないが、そこはレストラン列車。窓ガラスは特殊加工によって外から車内は見えにくくなるよう配慮されている。1号車には2人席5卓の計10席と車いすスペースが3台分あり、2号車には2人席10卓と1人席4卓の計24席が、それぞれ用意される。各座席ごとに大きな仕切りが設けられているのもこの車両ならではの特徴で、ほど良いプライベート空間を生みだしている。化粧室(多目的トイレ〔1号車のみ〕、女性用または共用トイレ、パウダールーム、洗面所)は、1号車と4号車に設けられている。
4号車は、4人席2卓、2人席4卓の計16席という贅沢な空間が用意され、シートは革張りを配した落ち着きのあるインテリアになっており、優雅なひとときを過ごすことができる。車内の照明は1・2・4号車ともに高級感を醸し出す“間接照明”を採用している。
3号車は、食事の準備を担うキッチンを備えたバックヤード車両。4名の調理スタッフが仕上がりの美しさや提供するタイミングにも心を配りながら、テキパキと料理を仕上げる姿を垣間見ることもできるオープンカウンター式のキッチンだ。厨房には、IH調理器、スチームコンベクションオーブン、冷蔵・冷凍庫、電子レンジなどが備わる。給仕をつとめるアテンダントは、9名乗務している。

「Les Saveurs志摩〔ㇾ・サヴール・しま〕」の車体前面には、フレンチコースの丸皿をイメージしたエンブレムがひときわ目を引く=2026年9月18日、愛知県蟹江町

1号車には2人席が5卓のほか車いすスペースが3台分用意されている=2026年9月18日、近鉄名古屋線で

2号車には2人席10卓と1人席4卓が備わる(定員24席)=2026年9月18日、近鉄名古屋線で

4号車だけに備わる革張りを配した16席のみという贅沢な空間でいただくことができるフレンチコース。写真は6種類の料理が並ぶ=2026年9月18日、近鉄名古屋線で

キッチンカーの厨房(オープンカウンター)では、あらかじめ別の場所(調理基地)で調理された食材をスチームコンベクションオーブンなどを使用して温められて、盛りつけされる=2026年9月18日、近鉄名古屋線で
フレンチコースとフレンチ膳を味わう
日常を離れ、時の移ろいを愉しむレストラン列車。その車内では、流れる景色を眺めながら、洗練された美食のフレンチを味わうことができる。何とも贅沢な時間だ。料理は、三重・伊勢志摩の恵みを織り込んだこだわりのフレンチコースと膳の2つのスタイルから選ぶことができる。
肝心なお値段はというと、平日と土休日で料金設定が異なり、フレンチコースならば平日が33000円に対して、土休日は36000円、フレンチ膳は平日が19000円で、土休日が21000円だ。この値段には、料理代のほか片道乗車券(名古屋駅とフリー区間〔伊勢市駅~賢島駅間〕)と、ウェルカムドリンク(スパークリングワインまたは、みかんジュース)、食後のドリンク(コーヒーまたはハーブティー)、諸税が含まれる。乗車券のフリー区間内は、利用する日に限り乗り降り自由となる。ドリンクについては、有料で日本酒などを追加することも可能だ。なお、子ども料金の設定はない。
「フレンチコース」は、2016(平成28)年に開催された伊勢志摩サミットで、ワーキングディナーを担当した志摩観光ホテルの総料理長・樋口宏江さんが監修した本格フレンチで、4号車だけの限定メニューとなっている。熊野地鶏、三重県産和牛、鮑、伊勢海老といった選りすぐりの食材を使い、香り立つ魚料理に濃厚な味わいのメインディッシュと柑橘香るデザートまで、車窓とともに優雅に楽しめるレストラン列車の旅にふさわしいメニューだ。
いっぽうの「フレンチ膳」は、近鉄・都ホテルズ監修によるもので、木箱仕立てという可愛らしい食器に、三重・伊勢志摩の“海の幸”や、“山の恵み”を感じる彩り豊かな食材が、和のテイストで盛り付けられている。こちらは、1・2号車の限定メニューで、真珠貝、あおさ、伊勢まだい、伊勢湾産アサリ、三重県産和牛など食材の豊かな風味が響き合い、車窓に移ろう景色とともに多彩な味わいが楽しめる。
コース、膳のいずれも、食材の入荷状況により料理の内容が変更となる場合がある。列車に積まれるドリンクは29種類あり、ウエルカムドリンクにはスパークリングワイン「伊勢っ子(伊勢美し国醸造)」または、三重県産みかん100%ジュース、食後には、なかむら珈琲、または志摩観光ホテル・オリジナルハーブティーが提供される。このほか、有料となるが三重の伊勢ワイン(赤/2200円)や日本酒「作(純米大吟醸/冷酒)1900円」、クラフトビール(志摩醸造)1000円などを追加注文することも可能だ。もちろんノンアルコールのスパークリングワインやビール、ソフトドリンクも用意される。フレンチコースには、その味わいを引き立たせるペアリングセット「美し国ブラン(白)、キュヴェ・モミジ・シャルドネ(白)、美し国ノワール(赤)」4500円が用意されているのもうれしい。
その昔の「列車食堂」といえば、走る列車のなかでコックが腕を振るい調理を行っていたものだが、近年は保健所による衛生管理が厳しくなったこともあり、調理許可がおりないという。結果、事前に別の厨房で調理されたものを列車内に持ち込み、温めやお皿への盛り付けなどをするだけにとどまる。昭和世代にとって、あの何とも香ばしい調理の音とにおいが、つい頭の中をよぎってしまう。

「フレンチコース」は、2016(平成28)年に開催された伊勢志摩サミットで、ワーキングディナーを担当した志摩観光ホテルの総料理長・樋口宏江さんが監修した本格フレンチ。写真はビーフシチューとデザート=2026年9月18日、近鉄名古屋線で

志摩観光ホテル・樋口総料理長監修の「本格フレンチコース」。熊野地鶏、三重県産和牛、鮑、伊勢海老といった選りすぐりの三重・伊勢志摩の食材は、香り立つ魚料理、濃厚な味わいのメインディッシュ、柑橘香るデザートへと姿を変え、車窓とともに優雅に楽しむことができる=2026年9月18日、近鉄名古屋線で

4号車だけに備わる革張りを配した16席のみという贅沢な空間でいただくことができるフレンチコース。写真は6種類の料理が並ぶ=2026年9月18日、近鉄名古屋線で

4号車だけに備わる革張りを配した16席のみという贅沢な空間でいただくことができるフレンチコース。写真は2人席=2026年9月18日、近鉄名古屋線で

近鉄・都ホテルズ監修による木箱仕立てのフレンチ膳。三重・伊勢志摩の“海の幸”や“山の恵み”を感じる彩り豊かな和のテイストに仕上げられている=2026年9月18日、近鉄名古屋線で

2号車に備わる1人席テーブルからは、車窓を独り占めしながらフレンチ膳を味わうことができる=2026年9月18日、近鉄名古屋線で

1号車と2号車に備わる2人席=2026年9月18日、近鉄名古屋線で

1号車と2号車に備わる2人席。車窓を眺めながらフレンチ膳を味わうことができる=2026年9月18日、近鉄名古屋線で
乗車チケットの購入方法
レストラン列車「Les Saveurs志摩〔レ・サヴール・しま〕」に乗車して料理をいただくためには、乗車する3か月前(10月1日に1月分の予約が解禁となる)から11日前までの間に、専用の予約サイトから申し込む必要がある。このチケットは、料理と列車がセットになった「旅行商品」として販売されており、当然ながら”列車に乗るだけ”を目的とした座席のみの利用はできない。全席指定、禁煙。
乗車券の購入は、近鉄(近畿日本鉄道)の専用予約サイトのほか、全国の主な旅行会社でも取り扱っている。なお、近鉄が開設している専用予約サイトは、近鉄が販売する旅行商品分だけを取り扱っているものなので、他の旅行会社の販売分は反映されない。
そして、レストラン列車は毎日走っているわけではなく、運行日は2026(令和8)年11月1日以降の「指定日運転」となっているため、 専用の予約サイト 内にある「運行カレンダー」から運転日を確認する必要がある。また、乗車できる区間が、フレンチコースとフレンチ膳では異なっている点にも注意が必要だ。
例えばフレンチコースで伊勢志摩方面へ向かう場合、近鉄名古屋駅〔11時5分発〕から乗車し、鵜方駅〔13時29分着〕または終点の賢島〔13時35分着〕で下車できる。その逆の近鉄名古屋駅へ向かう場合は、始発駅の賢島駅〔16時35分発〕または鵜方駅〔16時41分発〕から乗車すると、終点の近鉄名古屋駅〔19時12分着、ただし土休日は19時8分着〕まで、下車することができない。
これに対して、もうひとつのフレンチ膳の場合は、上記の駅(フレンチコースに記載した駅)のほか伊勢市駅、宇治山田駅、五十鈴川駅、鳥羽駅の各駅でも、(名古屋駅から乗った場合に)下車することや、(乗車する場合は)名古屋駅へ向かうことができる。詳しい各駅の時刻などは、専用の予約サイトから確認してほしい。
すでに、専用の予約サイト等での発売は始まっており、一部の列車では満席になるなど、出だしは好調のようだ。運行時間帯の関係もあるのだろうか、比較的、伊勢志摩方面から近鉄名古屋駅へ向かう列車には空きが見られる。これからの季節、伊勢志摩へ旅行する際には、ぜひとも乗車してみてはいかがだろうか。

近鉄レストラン列車「Les Saveurs志摩〔ㇾ・サヴール・しま〕」。前面に輝くエンブレムは、浮かび上がるように光の演出が施されている=2026年9月18日、近鉄名古屋駅で

近鉄レストラン列車「Les Saveurs志摩〔ㇾ・サヴール・しま〕」の車体前面に輝くエンブレム。英虞湾(リアス式海岸)の風景を料理のお皿のイメージに重ね、象徴的に表現している=2026年9月18日、近鉄名古屋駅で

3号車は、食事の準備を担うキッチンを備えたバックヤード車両で、料理の最終仕上げを行うスペースだ=2026年9月18日、近鉄名古屋線で

フレンチコースは4号車でしか味わうことができない。写真には6種類の料理が並ぶ=2026年9月18日、近鉄名古屋線で

2号車に4卓だけ備わる1人席。座席の向きは自由に動かすことができる(固定式ではない)=2026年9月18日、近鉄名古屋線で

3号車のキッチンカーは、厨房に面した車体側面には窓がない。そこには光の当たり方で色調が変化するメタリック塗装にデザインされた志摩の文字が映える=2026年9月18日、愛知県蟹江町

近鉄レストラン列車「Les Saveurs志摩〔ㇾ・サヴール・しま〕」の編成写真。車体の外装は、志摩の「海・白砂・太陽」をイメージしたブルーメタリックを基調に、ゴールドの帯を身にまとったデザインだ=2026年9月18日、愛知県蟹江町で
※この記事にある運転日や運転時刻、運賃・料金、価格等は、掲載時点のものです。情報内容については、ご利用になる前に鉄道事業者のホームページ等でご確認ください。
文・写真/工藤直通
くどう・なおみち。日本地方新聞協会特派写真記者。1970年、東京都生まれ。高校在学中から出版業に携わり、以降、乗り物に関連した取材を重ねる。交通史、鉄道技術、歴史的建造物に造詣が深い。元・日本鉄道電気技術協会技術主幹、芝浦工業大学公開講座外部講師、日本写真家協会正会員、NPS会員、鉄道友の会会員。

