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孫の合格祝いに100万円を贈った72歳男性。しかし、息子夫婦の「ある言葉」に激怒する事態に--親心からの支援が、思わぬ親子関係の破綻や老後破産を招くケースは珍しいことではありません。過度な金銭援助に潜む危険性と、大切な老後資産を守るための防衛策について考えます。

孫の合格祝いに「100万円」を差し出した72歳男性の決断

都内在住の佐藤清一(72歳・仮名)さんは、65歳で定年退職を迎えたあと、現在は賃貸マンションで一人暮らしをしています。清一さんが受給している公的年金は月額18万円。普段の生活は年金の範囲内で、大きな出費があるときだけ現役時代の貯蓄を取り崩して対応していました。

そんな清一さんには、郊外に暮らす一人息子の健太(45歳・仮名)さんがいました。健太さんには長男の佐藤翔太(18歳・仮名)さんがおり、清一さんにとっては唯一の孫でした。

2026年春、翔太さんが都内の難関私立大学に合格したという報せが届きます。清一さんは孫の成長を喜び、自身の老後資金の中から100万円を準備して進学祝いとして手渡すことに決めました。

公的年金のみで暮らす高齢者にとって、100万円の資金捻出は決して軽い負担ではありません。

総務省『家計調査(家計収支編)(2024年)』によると、65歳以上の単身世帯における月平均の消費支出は15万4,601円(65歳以上の男性単身世帯では15万1,946円)となっています。多くの高齢者が実収入の不足分を貯蓄の取り崩しで補填している実情があります。清一さんにとっても、この出費は将来の生活設計に影響を与える大きな決断でした。

それでも清一さんは、孫の門出を応援したい一心で祝い金を用意しました。数日後、清一さんは健太さんとその妻の真由美(43歳・仮名)さんを自宅に招き、100万円が入った祝儀袋を手渡します。

夫婦は「お義父さん、本当にありがとうございます。翔太も喜びます」と深く頭を下げました。清一さんも息子の家庭を助けられたと安堵し、和やかな雰囲気のまま食事の準備が進められていきました。

しかし、その平穏な時間は長くは続きません。清一さんが飲み物を取りに台所へ向かった際、隣の部屋でくつろぐ夫婦のひそひそ声が偶然耳に入ってしまったのです。

「あてにして当然」という歪んだ期待が招く家族崩壊

「えっ、たったの100万円? これじゃ初年度の学費分にもならないわ」

「仕方ないだろ。でも、親父はまだ定期預金を持っているはずだ。毎月の家賃と仕送りは少しずつ出してもらおう。そもそも親父の援助を計算に入れて受験させたんだからな」

健太さんと真由美さんの口から漏れたのは、感謝とは程遠い本音でした。自分たちの家計だけでは学費を賄えないと知りながら、「足りない分は祖父に出させればいい」と安易に考えていたことが発覚したのです。

親としての経済的責任を放棄し、最初から祖父母の財布をあてにした無計画な進学でした。清一さんの好意は省みられず、単なる「あてにできる財源」として計算されていたに過ぎません。

さらに清一さんは、孫である翔太さんにも疑念を募らせていきます。今、この場に翔太さんはいません。当初、親と一緒に来る予定が、友人との約束を優先してドタキャン。そもそも翔太さんが連絡を入れてくるのは、小遣いや高額な買い物をねだるときばかり--。

内閣府『令和6年度 高齢者の経済生活に関する調査』によると、同居・別居にかかわらず子や孫の生活費を負担している(「ほとんど負担している」「一部を負担している」の合計)高齢者の割合は25.2%。一方で、自身の今後の生活の備えとして「貯蓄が足りない」と感じている人は57.1%に上り、実際に61.2%の人が毎月平均約6万8,000円の預貯金を取り崩して生活費に充てているのが現状です。

子や孫への援助を行う高齢者は少なくありませんが、自身の老後資産に十分な余裕がない中で過度な支援を続けた結果、親世代自らが経済困窮に陥ってしまうことも懸念されています。

そもそも100万円は、自身の病気など万一の備えとして残していた貴重な資金です。「親や祖父母が援助するのは当たり前だ」という身勝手な態度に対し、清一さんの怒りは頂点に達しました。

息子夫婦が帰る際、清一さんは「さっき話していたこと、聞こえていたぞ」と明かしました。まさか聞かれたとは思わなかったのでしょう、動揺を隠しきれない二人に対し、「もう二度と連絡してくるな!」と吐き捨て、夫婦を追い出しました。

「年寄りが子や孫のためにお金を包む--こちらとしては当然の気持ちですよ。でも、“援助されて当たり前”という、歪んだ期待を持たれては困ります。心からの感謝だけで十分なのに」

また、子や孫への援助は際限なく膨らみがちです。高齢期に老後資金を守るためには、子世代からの過度な要求に対して毅然とした態度で拒絶を示すことも大切です。