めちゃコミック新レーベル「HACHA」始動 『孤独のグルメ』久住昌之らを迎え「滅茶苦茶」ではない「破茶滅茶」な漫画を追求
めちゃコミックから、少年・青年向け作品などを扱う新漫画レーベル「HACHA(ハチャ)」が2026年10月5日に創刊される。
編集長には『孤独のグルメ』『アラサーちゃん』などを編集した牧野早菜生氏、編集委員には『日本三國』『チ。-地球の運動について-』に携わった千代田修平氏を迎える。
本記事では、2026年9月16日に行われた発表会で語られた、新レーベル発足の背景にくわえ、作家の想像力や作家性を読者に届けるための編集方針、そして今後の展望まで紹介していく。
■「滅茶苦茶」と「破茶滅茶」は違う 千代田修平が語る新レーベルの思想
今回発表された「HACHA」という名には、レーベルが目指す漫画の姿が込められていた。
発表会に登壇した千代田氏は、「HACHA」という名前について、めちゃコミックの「めちゃ」と組み合わせると「破茶滅茶」になるという言葉遊びが出発点だったと説明。そのうえで、「僕は破茶滅茶な漫画を読みたいと思っています。それは、作家のなかにある感情や、溢れかえるほどの想像力、そして作家性が十分に発揮された漫画のことです」と想いを語った。
しかし、作家性が発揮されているだけでは、レーベルが目指す“破茶滅茶な漫画”にはならないという。「ただ作家性を放出するだけでは、単なる意味不明な作品として読者の前に現れてしまうことが得てしてあります。つまり、“めちゃくちゃ”と“破茶滅茶”は違うということです。では、それらを分かつものは何か。それは、技術だと思っています」
千代田氏は、唯一無二の作家性や想像力を、漫画として成立させるための技術が重要だと説明。さまざまな技術の結晶によって、漫画は“めちゃくちゃ”なものから“破茶滅茶”なものへと昇華されると語った。
さらに「HACHA」では、めちゃコミックがこれまで培ってきた「読者の欲望や市場を観察し、それに応える漫画を作る技術」と、「作品をWeb上でどのように露出し、どう伝えればより多くの読者に届けられるのか」という知見を、新たな領域に応用していくという。
千代田氏は、「HACHA」編集部の使命について、「作家が書きたいものを書き、それらをちゃんと届くかたちにして届ける」ことだと語った。
「HACHA」の編集長を務める牧野氏は、立ち上げの狙いについて「めちゃコミックはここ数年、女性読者に向けたオリジナルコミックの制作に注力してまいりました。そこで私たちの『HACHA』が次に目指しているのは、少年・青年向けオリジナル作品の強化です」と説明した。 さらに、「HACHA」を通じたプラットフォームとしての展望については「『この作品が読みたいから、めちゃコミックを利用しよう』と思ってもらえる作品を生み出すことで、漫画を読む場所として成長していけるよう、力を尽くしてまいります」と語る。
こうした理念のもと、「HACHA」では今後、さまざまなジャンルの作品が展開されていく。会場には、連載を予定している作品の表紙も掲示され、少年向けのファンタジー、裏社会を扱う刺激的な作品、グルメ漫画等の多種多様なラインナップを垣間見ることができた。牧野氏は「1つのレーベルの中で、一見するとバラバラ、滅茶苦茶と言えるくらい多様な作品が揃うことはなかなか珍しいのではないかなと思っております」と旗揚げに集った作品への自信も覗かせた。
発表会には、本レーベルで連載を予定している作家3名も登壇した。『孤独のグルメ』の原作者としても知られる久住昌之は、58歳と22歳、36歳差の男性2人を主人公に、食と喪失、再生を描く『リアンの馬鹿』の原作を務める(作画は鈴木絢子)。「手応えを感じるのはこれからだと思っています。本レーベルにはさまざまな作家の方がいらっしゃるので、僕も刺激をもらいながら、面白い作品を描いていきたいと思います」と意気込みを語った。
『サイレーン』で知られる山崎紗也夏は、セレブ寄りのパパ活界隈を描く作品を予定しているという。「私は、とにかく女の子を描くことが大好きでこの世界に入ったのですが、本作では過去最高に女の子を描けると思っています。嬉しくてたまりません」と期待を寄せた。
韓国版『エルピス』を手がけるライトハンドは、「本作はドラマを原作としているのですが、今回は舞台を韓国に置き換え、新たに脚色しています。微妙な変化や演出の違いを、日本の皆さんに見ていただけることを楽しみにしています」と語った。
最後に、記者から具体的な目標を問われた牧野氏は「年度内に20作品の公開を目標にしています。そして数年後には、作品から派生して映像化やアニメ化など、横の広がりを持たせられるような作品を生み出していきたいと考えております」と、今後の展望について明かした。さらに、少年・青年向け作品を通じて、子どもたちが漫画に触れるきっかけを作ることや、紙のコミックスの刊行にも力を入れていきたいと考えを示した。
なお、発表会では『HACHA始動準備号』も配布された。本誌は2026年9月28日から三省堂書店限定で発売予定で、価格は500円(税込)となっている。誌面には、新連載の第1話原稿・ネーム・キャラデザに加え、荘子it、岩崎祐介、千代田修平による鼎談をはじめ、コナリミサトとイララモモイのクロストークなどが収録されている。
また「HACHA」編集部は、新たな才能と出会うため、2026年10月5日から新人賞の募集を開始するほか、同10月25日には東京での出張編集部を予定している。さらには「漫画家を目指す人に向けた」Podcastも準備中とのこと。詳細は公式HP・SNSで確認できる。
多様な作家たちの個性と、めちゃコミックが培ってきた編集・マーケティングの技術が掛け合わされることで、どのような作品が生み出されていくのか。新レーベル「HACHA」の今後の展開に注目したい。
(文・取材=はるまきもえ 写真=皆川潤喜)

