根管治療で行われる超音波洗浄とは?使用する洗浄液や治療の流れを解説
根管治療では、根管内部に残った細菌や組織などを取り除くために、器具による清掃だけでなく洗浄液を用いた根管洗浄が行われます。
その際に用いられる洗浄方法の1つが超音波洗浄です。
超音波洗浄は、根管内部に入れた洗浄液を超音波によって振動させ、洗浄液の動きを活発にすることで根管内部の清掃を補助します。
シリンジによる洗浄と併用される場合もありますが、どのような方法で行われるのか気になる方もいるでしょう。
そこで本記事では、超音波洗浄の仕組みや使用する洗浄液の役割、治療の流れや痛みについて詳しく解説します。
根管治療中の方や、これから治療を控えている方はぜひ参考にしてみてください。
監修歯科医師:
石毛 俊作(大神宮デンタルクリニック)
東北大学歯学部卒業。千葉大学医学部附属病院歯科・顎・口腔外科 臨床研修医。千葉大学大学院 医学薬学府医学博士。独立行政法人地域医療機能推進機構。船橋中央病院。歯科口腔外科/インプラントセンター勤務。いとう歯科クリニック勤務、海岸歯科室勤務。
根管治療で行われる超音波洗浄とは

根管治療ではなぜ根管の洗浄が必要なのですか?
根管治療では、根管内の細菌や細菌が産生した物質、残存した歯髄組織や壊死組織などを取り除くために根管洗浄が必要です。
根管の内部は単純な形ではなく、イスムスやフィン、側枝や根尖分岐などの複雑な構造をしています。そのため、治療器具を用いた機械的な清掃だけでは、根管内の無菌化はきわめて困難です。
そこで、器具による清掃に加えて根管洗浄や根管貼薬を行い、根管内に残った細菌や組織などの除去を図ります。根管洗浄は、複雑な形をした根管内部の感染をコントロールするうえで重要な処置の一つといえるでしょう。
根管治療で行われる洗浄方法の種類を教えてください。
根管治療で行われる洗浄方法には以下のような種類があります。
シリンジを使用して洗浄液を注入する方法
超音波発振装置を使用する方法
可聴域振動装置を用いる方法など
日本の歯科大学・歯学部を対象に2024年に行われた調査では、根管洗浄に使用する器具としてシリンジが96.4%、超音波発振装置が89.3%、可聴域振動装置が28.6%との結果でした。
なかでもシリンジの使用率が高く、超音波発振装置も高い割合で使用されています。また、同調査ではほとんどの講座でシリンジと超音波発振装置を併用していることが報告されています。
この結果からも、根管洗浄では1つの器具だけを使用するのではなく、複数の方法を組み合わせて行われていることがわかります。そして超音波発振装置は、シリンジによる洗浄と組み合わせて使用されている方法の1つです。
根管治療で行われる超音波洗浄について教えてください。
超音波洗浄とは、根管内部に入れた洗浄液を超音波によって振動させ、洗浄効果を高める方法です。根管は複雑な形をしているため、治療器具やシリンジによる洗浄だけでは十分に届きにくい部分があります。
超音波による振動を加えると、根管内部の洗浄液に音響流(アコースティックストリーミング)と呼ばれる流れが生じ、洗浄液の動きが活発になります。この作用を利用して、根管内部に残った細菌や組織片、象牙質の削りかすなどの除去を補助するのが超音波洗浄です。
なかでも、根管内部の洗浄液を超音波によって活性化させる方法はPUI(Passive Ultrasonic Irrigation:受動的超音波洗浄)と呼ばれています。
根管治療の超音波洗浄で使用する洗浄液の種類と役割

超音波洗浄で使用される洗浄液の種類を教えてください。
根管治療の超音波洗浄では、主に次亜塩素酸ナトリウム(NaOCl)やEDTAなどの洗浄液が使用されています。
日本の歯科大学・歯学部を対象とした2024年の調査では、超音波発振装置で洗浄する液として、次亜塩素酸ナトリウムが80.0%、EDTAが56.0%でした。このほか、精製水や生理食塩水、デンタルチェアーからの給水などを使用している施設もあります。
使用する洗浄液にはそれぞれ異なる特徴や役割があるため、目的に応じて使い分けたり、組み合わせたりしながら根管内部の洗浄を行います。
超音波洗浄で使用される洗浄液にはどのような役割がありますか?
洗浄液には、根管内部の細菌や汚れ、残った組織などを取り除いて清掃する役割があります。根管は複雑な形をしているため、治療器具による機械的な清掃だけでは、すべての部分にアプローチするのが困難です。
そこで、洗浄液を用いた化学的な清掃を組み合わせ、器具だけでは届きにくい部分の洗浄を補います。さらに超音波によって洗浄液を攪拌、活性化させると、洗浄効果を高めることが期待できます。
洗浄液は種類によって作用が異なるため、それぞれの特徴を踏まえて使い分けるのが重要です。
洗浄液の種類によって役割の違いはありますか?
根管洗浄に使用する洗浄液は、種類によって役割が異なります。代表的な次亜塩素酸ナトリウム(NaOCl)は、殺菌作用に加えて根管内部に残った有機質や壊死組織を溶かす作用を持つ洗浄液です。
一方、EDTAには象牙質などの無機質を脱灰する作用があります。根管を器具で拡大、形成すると、象牙質の削りかすなどからなるスミヤー層が根管壁に形成されます。その除去を目的として使用されるのがEDTAです。
このように、次亜塩素酸ナトリウムは主に有機質に作用するのに対し、EDTAは無機質に作用する点が大きな違いです。1つの洗浄液ですべてを補うのは難しいため、目的に応じて複数の種類を使い分けたり、併用したりします。
根管治療で行われる超音波洗浄の流れや回数

超音波洗浄の流れを教えてください。
超音波洗浄は、以下の流れで行われます。
根管内部を器具で拡大、形成する
根管内部に洗浄液を入れる
超音波ファイルを根管内部に挿入する
超音波振動によって洗浄液を活性化させる
洗浄液に流れを生じさせ、根管内部を洗浄する
根管は複雑な形をしているため、器具を用いた機械的な清掃だけでは十分に対応できない部分があります。そこで、根管内部に入れた洗浄液に超音波振動を加え、洗浄液の動きを活発にすることで根管内部の清掃を補助します。
なお、根管の形態や状態は一人ひとり異なるため、実際の洗浄方法や使用する器具などは症例によって異なります。
超音波洗浄は何回くらい行われますか?
超音波洗浄を行う回数は、一律に決められているわけではありません。日本の歯科大学・歯学部を対象とした2024年の調査では、根管洗浄を行うタイミングについて拡大サイズ上昇時に毎回が39.3%、拡大サイズの上昇時に適宜が60.7%でした。
根管治療の超音波洗浄には痛みがありますか?
超音波洗浄を行った場合でも、根管治療後に痛みや違和感を生じることがあります。従来の洗浄方法と比較した研究では、超音波洗浄を行ったグループのほうが治療後6時間から48時間の痛みが少なかったと報告されています。ただし、治療後に多少の痛みを感じる場合もあるため、痛みの程度や経過には注意が必要です。
また、日本歯内療法学会によると、根管治療の期間中には歯がしくしくしたり、浮いたように感じたりする場合があります。軽度の症状は通常1週間程度で自然に治まるとされていますが、腫れや痛みが生じる場合もあるため、症状が続く場合は治療を受けている歯科医師に相談しましょう。
編集部まとめ

超音波洗浄は、根管内部に入れた洗浄液に超音波による振動を加え、洗浄液の動きを活発にすることで根管内部の清掃を補助する方法です。
根管洗浄に使用する洗浄液には複数の種類があり、それぞれ異なる役割を持っています。そのため、目的に応じて使い分けたり、複数の種類を併用したりする場合もあります。
また、根管洗浄を行うタイミングは一様ではなく、超音波洗浄の回数をそのまま通院回数として考えるものではありません。
根管治療の期間中や治療後には、痛みや違和感を生じる場合もあります。
超音波洗浄の特徴や役割を理解したうえで、治療方法や痛みなどに不安や疑問がある場合は、治療を受けている歯科医師に相談しましょう。
参考文献
歯内療法とは|日本歯内療法学会
根管洗浄に関する研究|九州大学学術情報リポジトリ
日本の歯科大学・歯学部の臨床における根管洗浄法|日本歯科保存学雑誌
Postoperative pain in root canal treatment with ultrasonic versus conventional irrigation|PubMed
歯内療法に関するQ&A|日本歯内療法学会

