「バブルは弾けてから気づく」高騰するタワマンに忍び寄る異変…金利上昇、修繕費、災害という3つのリスク

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価格高騰に沸くタワーマンション市場だが、その足元では異変も起きている。売れ行きの鈍化、長期金利の上昇、将来膨らむ可能性のある修繕費――。不動産仲介業者・滝島一統氏が、「バブル」の先にあるリスクを指摘する。

【画像】バブルの象徴といわれるジュリアナ東京でよく見られたボディコン姿

 

新刊『その家、買ってはいけない 不動産屋が言わない、購入、投資、相続の真実』より一部抜粋・再構成してお届けする。

バブルの予兆

不動産経済研究所のデータでは、首都圏新築マンションの初月契約率は、好不調の目安である70%を下回る月が増えており、売れ行きの鈍化傾向が見られる。

何が起きているのか。構図はシンプルだ。値上がりを前提にした投機的な売買が積み重なり、価格が実需の届かない水準に達してしまった。住む目的で買える人がいなくなれば、成約は減る。しかし、すでに買ってしまった人は損をして売りたくない。だから物件は市場に滞留し、在庫がどんどん積み上がっていく。耐えられなくなった人から順に値段を下げていく。それが今、加速度的に進んでいる。

こうした状況は、不動産業者の間のやり取りやSNS上では「そろそろ怪しい」と囁かれている。だが、公のデータとして報道され始めると話は変わる。パニックに近い動きが起きる可能性がある。

東京・港区の新築高級マンションの部屋が競売に掛けられた、という話も聞いた。ハイエンドの新築マンションで競売が起きるというのは、異常事態だ。儲かる物件であれば、競売になる前に売れるはずだ。それが売れていない。値段が釣り上がりすぎて、手が出せなくなってきているということの証左である。

この不動産市場の異変は、より大きな経済の動きとも連動している。私が特に注視しているのは、国債市場だ。日本の40年物国債の利回りが一時4%を超え、4.2%という危険水域にまで到達した。10年物国債も2%を超え、約27年ぶりの高水準となっている。(原稿執筆時)

これは何を意味するのか?

長年にわたって、日本は世界に対して投資資金の源泉となっていた。いわゆる「円キャリートレード」と言われるものだ。日銀が超低金利政策を維持する中、外国の投資家は低利で円を借り、それを自国通貨に換えて海外で運用してきた。

日本からいくらでも低利の円を借りられる状況が、世界のバブルの燃料になっていたとも言える。日本の金利が上がると、この構造が崩れる。円を借りる旨みがなくなった投資家は、海外の資産を売って円に戻す。これがキャリートレードの「巻き戻し」と呼ばれる現象だ。

40年物国債の利回りが常時4%を超えるようになると、本格的な巻き戻しが起きるとされる水準だ。

超長期ゾーンでここまでの金利が要求されるということは、日本の財政や需給構造に対して、市場が明確に警戒を始めていることを意味する。数字的には、リーマンショックの前夜と同じ動きをしているとも言われている。

「本当のコストが誰にもわかっていない」

日経平均株価は2025年10月に史上最高値を記録し、2026年初頭にはさらに上昇した。だが、上昇相場はいつまでも続かない。後から振り返ったとき、「あの頃が天井だった」と語られる可能性は十分にある。

ここで過去の教訓を思い出してほしい。1990年代のバブル崩壊は、90年1月の株価の下落から始まったと言われているが、バブルの象徴として語られる「ジュリアナ東京」は、実は株価が下落を始めた後の91年5月にオープンしている。

つまり、当時の人々はバブルが崩壊し始めてもその事実を認識できていなかったのだ。人々は、株価が暴落し地価が下がり始めても、「一時的な調整だろう」と思っていた。バブルが本当に弾けたと気づくには、山一證券が破綻した97年まで待たなければならなかった。

リーマンショックのときも同様だ。2008年9月にリーマン・ブラザーズが破綻したというニュースが流れ、日本の株価がそれを本格的に織り込み始めるまでに半年近い時間がかかった。

タイタニック号は氷山に衝突した後も、船内ではしばらくの間パーティーが続いていた。船が傾き始めたとき、もう手遅れだった。バブルとはそういうものだ。今がその瞬間かどうか、私にも断言はできない。だが、いくつかの数字はすでにそれを示唆している。

価格の話だけではない。タワーマンションには、メディアがほとんど取り上げない構造的な問題がある。

一つは、修繕費の問題だ。マンションは古くなれば修繕費がかかる。これはすべてのマンションに共通する宿命だが、タワーマンションの場合はその規模と複雑さが桁違いだ。外壁の修繕一つとっても、低層マンションのように足場を組む方法が使えない。高所作業車が届く高さには限界があり、ゴンドラを屋上から吊り下げる方式になる。当然、コストは高い。

さらに深刻なのは、「本当のコストが誰にもわかっていない」という事実だ。タワーマンションが日本に本格的に普及し始めたのは2000年代以降だ。つまり、最初期に建てられたものがようやく大規模修繕の時期を迎えつつある。

設計段階での試算はあるが、実際に修繕を始めてみると、想定の2倍、3倍のコストがかかることが次々と明らかになっている。修繕積立金がいきなり3倍に跳ね上がった事例もある。

マスコミが語らない構造的問題

修繕積立金の算定も、同様の問題を抱えている。現在の修繕積立金は、同規模の低層マンションの実績から類推して設定されているにすぎない。タワーマンション固有のコストが本格的に顕在化した実例がない以上、その試算がどこまで正確かを誰も保証できない。所有者が毎月払い込んでいる積立金が、将来の修繕費に対して本当に足りているのかどうか、現時点では誰にもわからないのだ。

それだけではない。40階以上のマンションを解体した事例は、おそらく日本にはまだ存在しない。解体費用がいくらかかるのか、誰にもわからないのだ。修繕も然り。直下型地震がタワーマンションに与える影響も、実験データはあっても実際に起きた例がない。

エレベーターが止まれば45階から階段で下りるしかない。火災が起きてもハシゴ車は届かない。スプリンクラーが本当に作動するかどうかも大規模火災で試されたことはない。未知の部分があまりにも多い。

にもかかわらず、エントランスのラグジュアリーな雰囲気、コンシェルジュ、共用ラウンジ、眺望の良さ─そういった「目に見える価値」が購買意欲を刺激し、長期的なリスクへの想像力を封じ込める。

もう一つ、見落とされがちな問題がある。マスコミがタワーマンションのリスクをほとんど報じない、という構造的な事情だ。

不動産会社の中には上場し、メディアのスポンサーになっているところも少なくない。業界で長く仕事をしていると、世間では優良企業で通っている会社が、実態として多くの相談者を苦しめているケースに何度も遭遇してきた。広告費を払っている企業の問題をマスコミが積極的に報じないのは、ある意味で合理的な行動なのかもしれない。

だが、その沈黙のしわ寄せは、情報を持たない消費者に押しつけられる。タワーマンションのリスクが社会的に十分に議論されていない背景には、こうした構造がある、と私は見ている。

文/滝島一統

『その家、買ってはいけない 不動産屋が言わない、購入、投資、相続の真実』 (PHP研究所)

滝島一統

2026年6月17日

1210円(税込)

208ページ

ISBN: 978-4569861319

老朽化が進む日本の住宅は、マンションであれ一戸建てであれ、「持っていれば資産になる」という常識が崩れ始めている。築古マンションでは、修繕積立金不足、住民間の合意形成の難航、管理組合の実態不明といった問題が深刻化し、表面的な価格や立地だけでは見えないリスクが潜んでいる。
中古マンションの契約書類を読んでも、壁の内側の劣化や配管の老朽化、将来の大規模修繕の現実までは把握できない。
一方、地方の一戸建ては、相続をきっかけに「売れない」「貸せない」「解体費だけかかる」負動産へ転落するケースが急増している。
さらに、老後資金対策として注目されるリバースモーゲージやリースバックにも落とし穴がある。契約者死亡時の一括返済や、住み続けられなくなるリスクは十分に知られていない。
ワンルームマンション投資もまた、「不労所得」という甘い宣伝とは裏腹に、空室率、修繕費、金利上昇を織り込めば、一定以上の利回りがなければ利益は出にくい。本書は、マンションと戸建て双方の危機を比較しながら、「住まいは本当に資産なのか」という根本問題を問い直す。買う前に何を確認すべきか、そして「持ち続けるべきか、手放すべきか」を冷徹に判断するための実践的な一冊である。

第1章   老朽化マンションの現実─修繕できない、管理できない、建て替えられない
第2章  〝負動産〟化する戸建て─相続・解体・思い出のはざまで
第3章  不動産投資のリアル─欲望の先に待ち受ける現実
第4章  タワーマンション─バブル崩壊前夜
第5章  賃貸か購入か─どこに住み、どう選ぶか
第6章  それでも家が欲しい人のために
第7章  知識があれば8割は防げる―不動産Gメンとは