ヴィジュアル系ドラマー兼米農家の魅影氏。「米は日本の宝。父から受け継いだ田んぼは守る」と語る

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 一時は米5キロ4000円超。それでも売り場から米が消え、「古古古古米」なる備蓄米まで放出された。2年にわたり家計を直撃した「令和の米騒動」が今、終わりに向かっている。この秋から、新米の値段が徐々に下がっていくとみられるからだ。消費者にとっては朗報だが、割を食うのは米農家だ。
◆なぜ新米が値下がりする?

 値下がりの起点は「概算金」。JAが集荷時に農家へ前払いするお金で、事実上の“米の卸値”の基準になる。この金額が今年、各地で前年から3~4割引き下げられた。産直サイト運営のビビッドガーデンの調査では、概算金を提示された登録農家の8割超がその水準を「厳しい」と答え、4人に1人は「経営継続に強い不安」を選んだという。

「稲刈りの機械には屋根がなくて、真夏の炎天下に何時間も座りっぱなし。終わったら夜まで倉庫で袋詰めです。繁忙期は朝8時から夜7時まで。人を雇うお金なんてなくて一人なので、時には朝も昼もメシ抜きで働きます。田んぼのど真ん中で倒れても誰にも気づいてもらえないでしょうから、今年もちゃんと生きていられるかなって」

 そう話すのは、茨城県で4ヘクタールの田を一人で耕す魅影氏。V系バンド「曇りのち、」のドラマーとの兼業農家を10年続けている。だが、これほど働いても米だけでは食えないという。

◆「10年やって初めてまともな生活ができたのに…」

「平年なら、経費を引いて手元に残るのは年200万円ほど。夏の繁忙期以外はバンド活動とバイトで食いつないでいます。それが去年は60キロ3万5000円まで卸値が上がって、いきなり収入が3倍に。10年やって初めて、まともな生活ができました」

 その矢先の急落だった。

「まだ確定していませんが、噂では60キロ1万4000円まで落ちそうだと。コロナの頃は9000円で、1年間働いても収支プラマイゼロ。それを考えると、ギリギリ許容範囲ではあります。しんどいですが、父から譲り受けた田んぼを守りたい一心でこれからも続けます。米は、日本の宝ですから」

◆「令和の米騒動」はなぜ起きた?

 そもそも、「令和の米騒動」はなぜ起きたのか。埼玉県を中心に300ヘクタール超を耕す国内屈指の大規模法人、中森農産の中森剛志氏が解説する。

コロナ後、肥料や燃料、人件費は上がったのに、米の値段にはほとんど転嫁されなかった。コスト増を、農家が被ったからです。‘23年度、米農家の半数以上が赤字か減益になり、翌年には過去最多の離農数に。一方、物価高による生活防衛のために家で米を炊く人が増え、米の需要は2年連続で伸びました。‘23年産で見れば、44万トンもの不足です。弱りきった生産基盤に、歴史的な需要増が重なった。これが『令和の米騒動』の正体です」