西川貴教、やりたいことが尽きない「増えてきりがない」筋トレは500年生きるため フェスの主催は「しんどい」も続ける理由
歌手の西川貴教(55)が、T.M.Revolution(TMR)としてのデビューから30周年を迎えた。7月に節目を記念して、YouTubeチャンネル「THE FIRST TAKE」(TFT)で代表曲「HOT LIMIT」(1998年)の最新パフォーマンスを披露し、話題となった。見る人に「楽しんでほしい」という思いを胸に活動する日本屈指のエンターテイナー。地元・滋賀での主催フェスや今後の展望などを語った。(松下 大樹)
わずか3日で再生回数1000万を突破。史上最速記録を打ち立て、今夏の音楽シーンを象徴すると言っても過言ではないTHE FIRST TAKEの「HOT LIMIT」。公開から約2か月が過ぎたが、西川は“HOT”ではなく“COOL”に現状を見つめていた。
「もう世の中は落ち着いているんじゃないかと思っているんですけど、いまだに『見てますよ』とか反響をいただくことがある。いつまでこれに触っていたら良いのか分からなくなってる状態で、見極めがすごく難しく悩ましいです」
動画では曲の発売当時の衣装に加え、パワフルな声量も注目を集めた。視聴者から「原曲よりも声が出ているのでは?」とのコメントも多く寄せられたが、「全部雰囲気でやってるので、理論的なものとかよく分からない」とキッパリ。「いわゆるボイストレーニングや歌唱法に一切触れずに、ここまで来てしまっている。自分の歌唱テクニックを言語化できないんですよね。魂でやってますので!」と笑い飛ばした。
TFTの出演も含め、活動の原動力は見てくれる人に「楽しんでほしい」という思いから。「皆さんの導きがあってここまでやらせていただいているので、『○○やってほしい』と言ってくだされば『分かりました』と。とにかく、頂いたお話の一つ一つに全身全霊でお応えするのみといったところですかね」
真摯(しんし)な姿勢は、地元での取り組みから築き上げられてきた。母の病気をきっかけに滋賀への郷土愛が募り、2009年から同地で「イナズマロックフェス」を主催する。出演者のキャスティングのほか、地元自治体や企業との調整など多岐にわたる業務にも自ら携わっている。
「地域を盛り上げたいと思って、ゲストに『出ていただけませんか?』とオファーしても100%OKを頂けることはない。イベントを作る側の苦労をたくさん感じたことで、自分がお話を頂いた時に出し惜しみせず、200%やりたいというマインドを持つようになったと思います」
過去には、悪天候による中止やコロナ禍によるオンライン開催など大きな壁が立ちはだかったこともあった。「いや~、しんどいっすわ。毎年苦労もさせられてるし、近づいてくると不安しかない。何でこんなこと毎年やろうと思ったんたやろうっていうくらい」
ついつい関西弁で本音が漏れても、「地元の方に『期待してるで』『頑張ってや』と励まされて、今がある。なかなかやめるわけにはいきませんな」と言い聞かせる。
18年目となる今回からは、「ロック」という名称で生じていたさまざまなジャンルの出演者に対する心なき声を防ぐため、「FEST.INAZUMA」に改称した。「音楽イベントとして楽しんでもらうという趣旨以上に、地域の皆さまと積み上げてきた歴史を大事にさせていただくイベント。継続していって、さらに成長できればと思っています」。19日からの3日間をこれまで以上に盛り上げるつもりだ。
今年はTMRとしてのデビューから30年。歌手、俳優、実業家と幅広く才能を発揮してきた。「一つのことを続けていくことも大切だけど、僕はいろんなことに手を出して自分の満足度を上げてきた。『できないんじゃないか』と言われることを形にしていくことに非常に達成感を感じます」
音楽に限っても、TMR以外にバンド「abingdon boys school」や「西川貴教」名義の活動も並行する。
「2倍、3倍と言わず、他の方の4倍も5倍もいろんな経験をさせていただいている気がする。本当に素晴らしい30周年を迎えられていると思います」
感謝の念がにじんだ後、すぐに「ただね…」と切り出した。「やりたいことが同時に増えていく。やってもやってもきりがないです」。19日に56歳の誕生日を控え、会社員であればキャリアの終盤に入る頃だが、貪欲な心は尽きない。「『これやりたい』『あれやりたい』と思い続けて生きていく人生だと覚悟しています」と、次々にアイデアが浮かんできているという。
度々注目される筋トレなどで作り上げた強靱(きょうじん)な肉体は、あふれんばかりの願望を叶えるためのものだ。「自分がやりたいことを一つでも多く達成するためには、400、500年生きないといけないという気持ち。そのための準備をしている感じです」。体調管理も徹底しており、「熱が出て『今日はベッドで過ごしました』みたいな日が絶対にないようにしたい。一日も逃せないんです」と説いた。
この先も自らのスタンスを変えるつもりはない。「僕自身がやりたいこともたくさんありますけど、それよりも『どういうことをすれば、みんなが楽しくなれますか?』ということ(が大切)。『それ、できるかな?』というものに、少し背伸びして頑張り続けることが自分を成長させてくれる気がします」。そう言うと、白い歯をのぞかせて続けた。「ぜひ引き続き無理な難題を頂ければ。皆さんに置いていただいたところできれいに咲きます」
TMRも含めた西川貴教の最終形態は、自身でも「どうなるんすか?(笑)」と想像がつかない。一つだけ間違いなく言えるのは、日本屈指のエンターテイナーに“LIMIT”はないということだ。
◆西川 貴教(にしかわ・たかのり)1970年9月19日、滋賀県生まれ。55歳。96年「T.M.Revolution」として「独裁-monopolize-」でデビュー。NHK紅白歌合戦に計5度出場。2008年「滋賀ふるさと観光大使」に就任。17年、「西川貴教」名義でも音楽活動を開始。20年、滋賀県文化功労賞を受賞。24年、野洲市市民栄誉賞を受賞。
