くら寿司の店舗(9月7日 都内/弁護士JPニュース編集部)

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大手回転寿司チェーン「くら寿司」で、人気キャラ「ちいかわ」とのコラボキャンペーンの景品を従業員が着服していたことが発覚した。

発覚のきっかけは、景品がフリマサイトで大量に出品されていたことから、すべての店舗の従業員に聞き取り調査をしたことだったという。

ここで気になるのが、着服された商品を購入した人が、何らかの法的責任を問われる可能性があるか、ということである。

「返せ」と言われたら返さなければならない?

まず、民事責任はどうか。

そもそもの前提として、被害品である景品の所有権は誰に帰属しているのか。損害賠償事案をはじめ民事実務に詳しい荒川香遥弁護士(弁護士法人ダーウィン法律事務所代表)は、「実際にくら寿司がフリマサイトでの購入者に対して何らかの請求をするかどうかは不明」としながら、原則としてくら寿司が所有権を持つと説明する。

荒川弁護士:「所有権者とアカの他人の間で所有権が移転するには、原則として両者の間に『売買』『贈与』などの正当な取引によらなければなりません。

本件では、従業員が景品を着服しており、その景品は窃盗ないしは横領された物です。

したがって、理論上は、くら寿司は、購入者に対し、所有権に基づき返還請求をすることができます」

景品が「窃盗」された場合、「例外」は認められない?

これに対し、購入者がくら寿司からの請求を拒める例外的なケースはあるのか。荒川弁護士は、くら寿司が実際に購入者に対し返還請求を行った場合、購入者が返還を拒める場合もあり得ると説明する。

荒川弁護士:「まず、他人の物をそうと知らず、過失なく買い受けた場合、即時取得(民法192条参照)という制度によって、その物の所有権を得られることがあります。

本件の場合、購入者は、出品者が景品をキャンペーンで正当に入手したと過失なく信じていたことが必要です。

報道によれば、一部の景品について、配布開始前から出品された物もあったそうですね。少なくともこのような出品については、『なぜ配布開始前に世に出回っているんだ』という点に疑問を感じるべきなので、購入者に過失があったといわざるを得ず、即時取得が成立しない可能性は高いでしょう。

また、くら寿司が従業員による景品着服のことを公表しキャンペーンが中止になった後の段階では、たとえば1人の出品者が一気に景品を大量出品していたような場合には、いかにも不自然であり、着服されたものである可能性を疑うべきと言えるので、過失が認められる可能性があります」

それでもなお、被害品を過失なく購入し、即時取得が成立するケースも考えられる。ただし、この場合は、景品が窃盗によって持ち出されたのか、横領によって持ち出されたのかで結論が異なり得る。

荒川弁護士:「景品が窃盗によって持ち出された『盗品』に当たる場合、即時取得が成立しても、被害者は盗まれてから2年間、被害品を所持している人に対して返還を請求できることになっています(民法193条参照)。

したがって、この場合には、後述する民法194条が適用される場合を除き、購入者は、くら寿司から返還を請求された場合には、拒否することができないのです。

ただし、従業員の行為が法律上『横領』に当たる場合には、横領物は民法193条の『盗品』には含まれません。そのため、購入者に即時取得が成立すれば、くら寿司が所有権に基づいて返還を求めることができない場合があります。

なお、窃盗等の被害品については、即時取得が成立する場合でも、所有権は被害者の下にあると考えられています(大審院大正10年(1921年)7月8日判決等参照)」

結局、着服された景品をフリマサイトで購入した場合、くら寿司から返還請求を求められれば、必ずしも返さなければならないとは限らないことになる。

荒川弁護士:「なお、『公の市場』で盗品等と知らずに購入した場合には、『代金を弁償しなければ返しません』と主張することができます(民法194条参照)。

ただし、フリマサイトが民法194条の『公の市場』に当たるかについては解釈上議論があり、一概にこの主張ができるとはいえません」

落札者が支払った代金の回収は?

となると、次に、購入者は支払った代金をどう回収するのかという問題が発生する。

荒川弁護士:「その場合、購入の際に支払った代金は、出品者、つまり着服してフリマサイトに出品した店員に対し、返還請求をすることが考えられます。

出品者には、取引の目的物の所有権を移転する債務があり、その債務不履行を理由として、代金を返還するよう請求することになります」

フリマサイトの運営会社に対し責任追及を行うことは、事実上困難だと指摘する。

荒川弁護士:「フリマサイトの運営会社は規約において、盗品等の出品を禁じており、また、盗品と判明したら、直ちに出品停止などの措置をとることを明言しています。

もし、運営者がそのような『やるべきこと』をやっていない場合、運営会社の責任を追及する余地はあるかもしれません。しかし、それを立証するのは容易ではありません。また、仮に責任が認められる場合でも、認められる損害の範囲は個別事情によります」

刑事責任を負う可能性は?

では、購入者が刑事責任を負う可能性はあるか。荒川弁護士は、犯罪に問われる可能性は低いと説明する。

荒川弁護士:「本件のようなケースで問題になるのは、刑法の『盗品等有償譲受罪』(刑法256条2項、10年以下の拘禁刑および50万円以下の罰金)です。

この罪は、『盗品その他財産に対する罪にあたる行為』によって得られた物を、有償で譲り受けた場合に成立します。犯人から直接買い受ける場合だけでなく、フリマサイトで購入する場合についても適用される余地があります。

しかし、盗品有償譲受罪は、罪を犯す意思(故意)がなければ成立しない故意犯です。『着服された品だと知らなかった』という場合には、どれだけ不注意だったとしても、成立しません。

したがって、本件で同罪が成立し得るのは、購入者が、『これは着服された品かもしれない』と認識し『それでも構わない』と認容していた場合という、極めて限定的なケースに限られます」

着服された景品を購入した人は、(実際に行われるかどうかは別として)もしもくら寿司が返還請求をした場合、景品がどのように持ち出されたかなどによっては、せっかく手に入れた景品を返さなければならず、とんだ災難を被ることになる。

売主がどのような物なのか、その物がどのようなルートをたどって売られているのかということについても気を配ることが大切であるといえる。相手が誰だか分からないフリマサイトにおいては、なおさら、そのような意識で取引に臨むことが強く求められる。