「マンションは高すぎて、今から買っても損をするのではないか」。価格の先行きが見通しにくいなか、購入に踏み切れない人は少なくない。そんな人に知ってほしいのが、これまで7戸のマンションを購入し、4戸を売却(住み替え6回)してきた西岡孝洋氏の経験である。

 西岡氏が初めてマンションを購入したのは24歳のときだった。当時は不動産に関する知識がほとんどなく、銀行選びも不動産会社の勧めに従っていた。

 本連載では、何が相場に恵まれた結果で、何がこれからマンションを購入する人にも応用できる判断なのかを切り分けていく。第1回では、資産形成を目的としていなかった24歳当時の購入から、西岡氏がマンションを「住む場所であり、売れる資産でもある」と捉えるようになるまでの経緯をたどる。


24歳、自己資金500万円。不動産知識ゼロで選んだ1戸目


 私が最初のマンションを購入したのは、社会人3年目・24歳の頃です。「いつまで賃貸に住むのだろう、買うなら早いほうがいい」と考え始め、親の後押しもあって購入に踏み切りました。準備した自己資金は約500万円です。


 そこで選んだ場所が大崎でした。当時勤めていたフジテレビへりんかい線で一本で通える利便性に加え、再開発で街が便利になる将来性にも惹かれたからです。ただ、山手線の内側は予算オーバーだったため、外側エリアの物件に絞って購入を決めました。


 ・購入時期:2000年
 ・購入価格:4,880万円
 ・自己資金:約500万円(借入は差し引き約4,380万円)


 もっとも、今の私ならローン条件や流動性、将来性を細かく検証しますが、当時は不動産知識がほぼゼロ。住宅ローンも不動産会社に勧められたものを言われるがまま選ぶ状態でした。


 実際、購入翌年の2001年には同等の部屋が4,100万~4,200万円まで下落し、購入価格(4,880万円)から700万~800万円も値下がりしました。しかし、当時は「家は買った瞬間から下がるもの」という意識が一般的だったことに加え、結婚や子育てを見据えて15年ほど住むつもりだったため、焦ることも、特別な失敗とも思いませんでした。


 それでも、知識ゼロの状態でスタートしながら致命的な失敗を避けられたのは、売り手が個人の不動産会社ではなく中堅デベロッパーだった点が大きいです。「信頼できる相手を選ぶことで大崩れを防ぐ」という視点は今でも通用します。


 ただし、これはあくまで当時の市場だったから成立した話です。現代の市場で知識ゼロのまま買えば、数百万円単位の損をしかねません。時代が変わった今だからこそ、不動産リテラシーの有無が明暗を分けます。

15年住むつもりだった家が、なぜ420万円高く売れたのか


 そんななか転機が訪れます。2000年代半ばにかけて都心の不動産価格が上昇し、購入価格を超える査定が出たため、2008年に大崎の家を約5,300万円で売却。結果として、購入額(4,880万円)を420万円上回る利益が出ました。


 数字だけ見れば「420万円のプラス」ですが、実際の体感は1,000万円以上の値上がりでした。購入翌年に700万~800万円ほど落ち込んだ底値を知っていたからです。もし「短期で稼ごう」と買っていたら、下落局面で不安になり手放していたでしょう。反対に、「長く住む前提」だったからこそ、下落に動じず保有し続けることができました。


 とはいえ、この売却も、将来を見越した投資というより「バブル的な上昇のタイミングで利益確定した」感覚でした。実際、売却直後にリーマン・ショックで市況が冷え込んだため、タイミングとしても非常に恵まれていました。


 ただ、この体験によって、私の住宅観は根底から変わりました。家は「買った瞬間から下がる消費財」ではなく、「生活の拠点でありながら、市況次第で利益を生む資産にもなる」。住宅を資産として捉える思考の原点となった出来事です。