「ファーストクライ 母子救命救急班」が示した“人は誰しも、誰かに生かされながら生きているということ”【第10話(最終回)レビュー】

9月9日(水)第10話(最終回)を放送した日本テレビ系水曜ドラマ「ファーストクライ 母子救命救急班」。
数々の名作ドラマレビュー記事を手掛ける「テレビ視聴しつ」室長・大石庸平氏は、第10話をどう見たのか?第10話の場面写真とともに紹介する。
(※以下、第10話のネタバレを含みます)
本作は、富裕層向け“セレブ病院”の秘密裏に設立された「母子救命救急班」を舞台に、行き場をなくした妊婦たちを救い、新たな命の産声=ファーストクライを守るために奔走する、産科医療の最前線を描いたドラマだ。
最終回に残された、解決しなければならない最大の難題。それは、前回ラストに待ち受けていた衝撃--光井(比嘉愛未)の幼なじみで、仕事上でも良きパートナーだった羽鳥美咲(徳永えり)の突然の死。それがなぜ最終回直前に描かれたのか?ということだ。
最終回は、今作らしい「展開の妙」と「キャラクター」、そして「人情」、「社会性」のすべてが見事に噛み合っていた。亡くなった美咲が残した子どもの容体、両耳が聞こえなくなってしまった光井の危機、神谷(真矢ミキ)の過去が暴かれたことで窮地に陥った母子救命救急班の今後。それらが一体どう収束していくのか?という物語上の興味はもちろん、これまで積み重ねてきた個性豊かな登場人物たちの特性を存分に生かし、それぞれを物語に絡めながら結末へ向かっていく構成は実に美しかった。

しかし、今作の最終回において最も注目したいのはやはり、命の尊さを丁寧に描いてきた今作が、最終回直前に美咲という一人の妊婦を亡くしてしまった、その意味である。
“取りこぼされてしまう命”を救う本作が、これまで描いてこなかったもの。それは、“取りこぼされてしまう”立場にある、社会的に弱い立場の妊婦が、母子救命救急班によって救われた、「その後」ではないだろうか。
子どもを授かり、産むことにもさまざまな苦労や困難がある。しかし、やはり本当に大変なのは、その子どもを産んだその先、未来だ。もちろん、連続ドラマの中で描かれる時間には限りがあり、そこまですべてを描き切ることは難しい。そもそも、そんな未来を一つひとつ描いていては、とりとめのないドラマになってしまうだろう。
しかし今作は、その「産んだその先」を、美咲の死によって、さりげなく浮かび上がらせることに成功した。美咲は、子どもを産んだ直後に命を落とすことになった。だからこそ、残された子どもはこれからどう生きていくのか。社会的に弱い立場にある子どもが、母親を失ったその先で、どんな困難に直面し、そして誰に支えられていくのか--。美咲の死は、そんな“取りこぼされそうな命”の、その後を、これまで以上にリアルに想像するきっかけを与えてくれたのだ。
そんな子どもの未来と重なって見えたのが、親友を失った光井の姿だ。光井は、美咲を亡くしたショックで聴覚を失い、医師としての気力も失ってしまった。大切な人を失ったことで、生きることそのものに困難を抱えることになった光井を、それでも仲間たちは支え続けた。そこには、社会的に弱い立場にある子どもが、決して一人で未来を切り開いていくわけではなく、さまざまな人たちに支えられながら生きていく様と重なるように思えたのだ。
そして、そんな光井を支えたのは、今作がこれまで丁寧に描いてきた、一人ひとりのキャラクターの血の通った“人間性”だった。ドラマを彩る個性や特性だけではなく、互いを支え合う仲間として、一人ひとりの存在をここまで描いてきたからこそ、最終回でその関係性が大きな意味を持ったのだ。
光井と美咲が、ともに「なぜそんなに頑張れるのか?」と問われたときに口にしていた「自分のために頑張る」という言葉。その裏を返すように、自分のために頑張ることが、誰かのために頑張ることにもつながっている。そして、誰かのために頑張ることで、また自分も誰かに支えられて生きていく--。
それは普遍的なテーマでありながら、ドラマとして実感させることは決して容易ではない。今作はそれを、美咲の死というあまりにも大きな喪失を通して、視聴者に痛感させたのではないだろうか。
また、“取りこぼされそうだった命”のその先は、気付けば光井自身の人生そのものが、その未来を描いていた。


社会的に弱い立場に置かれた子どもの将来は、決して平坦ではないだろう。しかし光井は、自身の持ち前の明るさと信念によって道を切り開き、やがて自らの境遇を原点として、「母子救命救急班」という、取りこぼされそうな命を救う医師になった。
それは、これまで描いてきた“取りこぼされてしまいそうな命”のその先を、光井という存在によって肯定することでもあったのではないだろうか。最後の最後に、美咲の死によって光井の人生そのものが浮かび上がる。そこで今作が示したのは、人は誰しも、誰かに生かされながら生きているということだった。
そして、窮地に立たされていた母子救命救急班もまた、「誰かによって生かされている」という精神そのものによって、多くの支えを得て存続を決める。その結末もまた、実に美しかった。
今作は実にエンターテインメントだった。
医療ドラマとして必然の盛り上がりを用意する展開。同時多発するピンチを切り抜けていくスリリング。キャッチーで個性豊かでありながら、物語にしっかりと噛み合ったキャラクターたち。一話完結だけではなく、全話を横断するドラマティックな構成。そして、これから先のリアルな未来を少しだけ良くしてくれる、テレビドラマだからこそできる社会への提言。
そのいずれもが過剰にならず、軽くなり過ぎず、また主張し過ぎない。それでいて、しっかりと考えさせられ、癒やされ、そして何より楽しむことができた。誰かに支えられ、誰かを支えながら生きていく。その人生の始まりに響く最初の声こそが、「ファーストクライ」なのかもしれない。そう思えた、素敵なエンターテインメントだった。

▼TVerで第1話~第3話と第10話(最終回)を無料配信中(9月10日現在)
https://tver.jp/series/sr286e3aus
▼Huluでは本編全話とHuluオリジナルストーリーを配信中
https://www.hulu.jp/first-cry/
▼Huluオリジナルストーリー PR映像
https://youtu.be/SZbVVG4pStY
<番組概要>
脚本:浜田秀哉
音楽:菅野祐悟
演出:大谷太郎 上田迅(ザ・ワークス)
チーフプロデューサー:松本京子
シニアプロデューサー:荻野哲弘
プロデューサー:森有紗
山田勇人 遠藤光貴 大垣一穂(ザ・ワークス)
主題歌:JUJU「夏蝉」(ソニー・ミュージックレーベルズ)
制作協力: ザ・ワークス
製作著作: 日本テレビ
ホームページ:https://www.ntv.co.jp/firstcry/
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推奨ハッシュタグ:#ファーストクライ
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