判決を受け会見する被告の選挙ウォッチャーちだい氏(左)と代理人の石森雄一郎弁護士(右)(8日 都内/弁護士JPニュース編集部)

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弁護士の福永活也氏がジャーナリストの「選挙ウォッチャーちだい」氏(本名:石渡智大)を被告として、名誉毀損を理由に損害賠償を求めた訴訟の控訴審で、東京高裁(阪本勝裁判長)は8日、福永氏の控訴を棄却する判決を行った。

福永氏は、ちだい氏がSNS上で福永氏による複数の訴訟提起を「クソスラップ裁判」などと投稿したことで名誉を毀損されたと主張。一審の東京地裁で請求を棄却され、控訴していた。

東京高裁は、ちだい氏の投稿は福永氏の一連の訴訟提起に対する意見・論評の表明であり、その前提となる事実の重要な部分が真実であることの証明があったとして、違法性を阻却した。

判決後の記者会見で、ちだい氏は、今回の判決の意義について「福永氏について『スラップ裁判を仕掛けてくる弁護士である』と言ってもなんら問題がないということが認められた」と語った。

福永氏は上告しない意向を示しており、判決は確定する見通しだ。

判断の枠組みは一審判決と異なるも、結論は維持

本訴訟で争点とされたのは、ちだい氏が2025年4月に行った複数のSNS投稿である。

ちだい氏は、福永氏およびNHKから国民を守る党(N国党)の関係者から訴訟を提起されたことに対し、「なんだ、このクソスラップ裁判」「くだらないスラップ裁判を仕掛けてきて」などと投稿した。

一審の東京地裁判決(今年2月6日)は、これらの「スラップ裁判」との表現を、福永氏が「事実的、法律的根拠を欠き勝訴の可能性が低い訴訟を、相手に負担を強いる等の目的により提起した」という「事実の摘示」に当たると判断。

その上で、福永氏の過去の訴訟活動や自身の発言などを根拠に、摘示された事実は「その重要な部分について真実であると認められる」として、福永氏の請求を棄却した。

一方、今回の控訴審判決で東京高裁は、判断の枠組みを変更した。「スラップ裁判」という表現について、一審とは異なり「事実の摘示」ではなく、「嫌がらせ等を目的とした不当な訴訟であるという見解を摘示するもの」であり、「被控訴人(ちだい氏)の意見または論評を表明したものであると解するのが相当」と判示した。

その上で、名誉毀損における意見・論評の表明の違法性が否定されるための要件として、その前提となる事実が「重要な部分について真実」であるかを検討。結論として、福永氏の請求を棄却した一審判決を支持した。

判決後の記者会見において、ちだい氏の代理人を務める石森雄一郎弁護士は、判決内容を以下のように評した。

石森弁護士:「『スラップ訴訟』という意見・論評の前提となる事実が真実と認定された。弁護士にとってはかなりきつい内容の認定を受けたということだ」

石森雄一郎弁護士(8日 都内/弁護士JPニュース編集部)
「面白いからやろうと思って」「勝っても負けてもいい」過去の動画での発言も焦点に

控訴審判決は、「スラップ裁判」を「相手の批判を封じ、相手を困惑させ、または相手に経済的もしくは精神的負担を強いるなど嫌がらせ等を目的とした不当な訴訟」と定義した。

判決はこの「スラップ裁判」の定義を前提に、以下の事実を認定し、ちだい氏が「スラップ裁判」と評した前提となる事実の「重要な部分について真実であることの証明があった」と結論付けた。

(1)福永氏が、自身に批判的な弁護士に対し多数の訴訟を起こしてこれを棄却された経験があること。
(2)福永氏自身も動画内で、これを面白いからやろうと思った旨述べていること。
(3)福永氏が被控訴人を相手方とする多数の名誉毀損訴訟の受任を宣伝していること。

このことからわかるように、判決理由で特に重視されたのは、福永氏自身の過去の発言や訴訟活動のあり方である。

石森弁護士は、福永氏が2025年3月12日に公開された動画の中で、過去の訴訟について次のように発言していたことを指摘した。

「最初の頃、僕も面白いからやろうと思って、うるさい弁護士を、同じ弁護士を5回も6回も訴えたことあるんです」

「誹謗中傷とか名誉権侵害とかはもう手数が勝負で、もう勝っても負けてもいいから、訴えまくることが大切なんですよ」

実際に、福永氏は2021年から2022年にかけて、高橋雄一郎弁護士に対して5回、都行志弁護士と菊川一将弁護士にそれぞれ2回、名誉毀損などを理由に訴訟を提起したが、いずれも請求棄却判決を受け2022年中に確定している。

石森弁護士は、これらの事実について、福永氏が提起した一連の訴訟が権利救済という本来の目的から逸脱し、相手への嫌がらせや負担を強いる目的で行われたことを示すものだと評した。

また、福永氏のような弁護士の存在が、司法制度自体への信頼を損なうものだと厳しく批判した。

石森弁護士:「司法制度は本来、国民が自分の権利を実現するためのものなのに、ただ嫌がらせのために訴訟を提起するのは制度の趣旨を逸脱し、悪用するものだ。

この先も同じようなことをする弁護士がたくさん出れば、弁護士バッジの価値はとてつもなく下がり、信用されなくなる。司法のリソースも浪費され、わが国の裁判制度自体への信頼が損なわれる事態になりかねないことが危惧される」

選挙ウォッチャーちだい氏(8日 都内/弁護士JPニュース編集部)
福永氏「妥当な判決」「上訴の予定はない」

弁護士JPニュース編集部は、福永氏に対し、本判決の判決文を引用しつつ、判決に対する評価、および上訴の意向の有無についてコメントを求めた。

これに対し、福永氏は、判決の主要な論拠となった点、すなわち、ちだい氏による「スラップ裁判」との論評の前提となる事実に関し「重要な部分について真実であることの証明があった」と認定したことについては言及しなかったものの、以下の通りコメントを行った。

【福永氏のコメント(原文ママ)】
判決を受領していませんが、表現行為が意見論評型と評価された事案であれば、被告側の表現行為はいわゆる「お気持ちの表明」に過ぎないと認定されたわけですね。

一方、原告側がいわゆる「スラップ訴訟」をしたか否かは事実認定の対象ですらなく、原告側のこれまでの提訴の違法性は一切確認されなかったことになります。

結果、原告側の裁判を受ける権利と、被告側の表現の自由という共に憲法上の権利の保障が厚く認められた妥当な判決と言えるでしょう。

これからも、違法ではない提訴に尽力して参ります。

上告の予定はないです