「現場の前まで警察が来ていたのに」防げなかった未成年不同意性交事件…被告の男に言い渡された判決
年齢を「21歳」と偽り……
「今日は何するの?」「高校見学」
「楽しんだ?」「うん」
中学生同士の会話なら、どこにでもありそうな日常のひとコマかもしれない。しかしネットで知り合っただけで会ったこともない35歳の男と15歳の少女のやり取りだとしたら、異様に感じないだろうか。
女子中学生Aさん(当時15歳)へのわいせつ誘拐と不同意性交等の罪に問われていた南郷貴俊(なんごう・たかとし)被告(35)。
’26年8月7日、さいたま地裁で江見健一裁判長に「拘禁刑3年(求刑6年)」を言い渡されていたが、控訴期間の終わる21日までに控訴したことがわかった。
南郷被告が逮捕されたのは、今年の5月のことだった。
「’26年5月28日、埼玉県警川口署はわいせつ目的誘拐と不同意性交等の疑いで東京都の配送業・南郷被告を逮捕しました。1月中旬の午後8時ごろ、SNSで知り合ったAさんをわいせつな行為をする目的で自宅に誘拐して性交した疑いです。
同日、Aさんの母親が『娘が友人と出かけて、その後、連絡が取れなくなった』と交番に行方不明届を提出。翌日の午前11時ごろ、捜索中の警察官が都内でAさんを発見しました。逮捕直後、南郷被告は『弁護士と接見するまで話しません』と話していたそうです」(全国紙社会部記者)
上下黒のTシャツとハーフパンツで入廷した南郷被告は、細身で身長170cmほど。根本が黒くなったロングの茶髪で、彫りの深い端整な顔立ちをしていた。
検察官が読み上げた起訴状や冒頭陳述などによると、2人は’25年の12月にチャットアプリを通じて知り合ったという。南郷被告は自身の年齢を「21歳」と偽っていた。
南郷被告はこの年の6月に児童ポルノ禁止法違反で罰金刑を受けたばかりだった。17歳の少女を自宅に連れ込んで性交に及び、その行為を撮影したという。逮捕されて身柄を拘束されたにもかかわらず、刑を受けてから約半年後にはさらに幼い少女と連絡を取り始めたことになる。冒頭のやり取りは南郷被告とAさんとの間で交わされたものだ。
事件のあった今年の1月中旬、Aさんは都内で友人と遊んでいた。友人と別れた後、まだ遊び足りなかったAさんがSNSに「遊べる人、いない?」と投稿したところ、「池袋まで来られない?」と連絡をしてきたのが南郷被告だった。その後、池袋で2人は合流。顔を合わせたのは、この日が初めてだった。
そして、「お酒、飲まない?」という南郷被告の誘いに「未成年だから(飲まない)」とAさんが答えると、「少し寒いし、俺の家に行こうか」と提案してきたのだという。
「位置情報で親も私がどこにいるかわかる」
検察官が読み上げたAさんの供述調書には、このときの気持ちがこうつづられていた。
「私は、この日初めて会った男性の家に行くことに抵抗がありました。ですが私のスマホには位置情報がついており、親も私がどこにいるのかわかるだろうと思ったこと、男性の家に行ってもこの日のうちに家に帰れば大丈夫だろうと思ったので、『うん、わかった』などと言いました」
スマホの位置情報については南郷被告も気にしていたようで、Aさんの供述調書によると、「『位置情報とかついていないの?』と聞かれたので、『15歳だからついているよ』と答えました」とのやり取りがあったという。しかし南郷被告は法廷で「(このような会話があったことを)覚えてない」と主張していた。
その後、南郷被告の自宅で「ベッドに来るように」と言われたAさんは、「私は男性の家にいるし、言うことを聞かないと何をされるかわからない」と考え、拒否できなかったと供述している。
同じ頃、「ネットで知り合った人の家に行く」とのメッセージを最後に連絡が取れなくなったことを心配したAさんの母親は、交番に行方不明届を提出していた。警察官が位置情報をもとに、南郷被告の自宅付近まで行ったものの12階建ての大きなマンションだったため、Aさんの発見には至らなかったという。
マンションの前まで行ったにもかかわらず、事件を未然に防ぐことはできなかったのだ。Aさんの「スマホの位置情報がついているからどこにいるのかわかる」という期待は打ち砕かれた。Aさんが保護されたのは、翌日の午前11時ごろ。「このまま家に帰ったら絶対に怒られる」と1人でいたカラオケボックスが位置情報で突き止められたためだった。
検察官が読み上げた供述調書で、Aさんの母親は南郷被告に対する強い怒りを露わにしていた。
「娘はまだ15歳の少女です。精神的に未熟ですし、正しい判断はできません。そんな娘を、大人の男が誘拐して家に連れ込み性交したなんて絶対に許せません。娘がもてあそばれたことを思うと、いまでも犯人の男に対して強い怒りが込み上げてきます」
未成年と知りながら性交した理由
被告人質問のなかで、南郷被告はAさんと初めて会ったときに「幼いな」と思ったことは覚えているという。しかし、「どのように性交に誘ったか」は「もう半年以上前のことなので覚えていませんが、Aさんが言ったとおりだと思います」と話した。
ただ事件当時、「幼いと思いながらも家に連れ込んだのはなぜか」という質問にはこう答えていた。
「家でお酒を飲んで楽しくできたらいいなと考えていました。ちょっとエロいことができたらいいなぐらいの感情もありました。16歳未満はまずいことになるとわかっていましたが、警察沙汰になるという意識が薄く、それよりも、いま遊びたいという感情のほうが勝ってしまいました」
南郷被告は性交する際に避妊具を使用していなかった。その理由については、このように振り返った。
「相手が『着けて』っていう場合には着けていましたが、特にその旨がない場合には着けていませんでした。これまで着けずに性交しても妊娠したこともなく、自身で簡易な検査キットで調べた際には、自分の精子がほぼなかったので、着けなくてもいいぐらいな感覚になっていました」
ただその後、「妊娠のリスクだとか性病とか、Aさんが不安に思う要素は多分にあったんだろうな」と考えを改めたそうだ。
事件を起こした理由について「日頃から法に対するモラルとか意識が低い」と述べた南郷被告に、江見裁判長は「捕まるのがわかっていて、16歳未満と性交するのはなんで?」と問いかけると、「考えさせてもらってもいいですか」としばらく無言になった後、言葉を詰まらせ涙ながらにこう語り始めた。
「ここ数年、会社を辞めてから、当時同棲していた彼女とも別れて、知り合いも誰もいなくなりましたし、もう、適当に生きるのが日常になってしまいました。そんな自分を振り返ると、人生どうなってもいいやっていう部分があったので、それが出たのかなっていうのを感じています」
そして、「カウンセリングに通って、自分の感情をコントロールできるようになる」「社会人として新しい人間関係を構築し直し、環境を変える」ことで、「今後はチャットアプリに触れないような生活を送る」ことを約束した。
法廷で、「寂しかった」と何度も口にする南郷被告に検察官はこう問いかけた。
「寂しかったからといって、(16歳未満の少女と)性交しなくてもいいじゃないですか。あなたは一度、身に染みて反省してるわけですよね」
その言葉に「そうです、はい」と答えた南郷被告。
拘禁刑3年の判決を不服として控訴した今後、高裁でどのような主張をするのだろうか。
取材・文:中平良
