くら寿司「ちいかわ」コラボで不正行為 従業員の法的責任は? 弁護士解説
人気キャラクター「ちいかわ」とのコラボキャンペーンについて、くら寿司が9月5日、従業員による不正行為が判明したとして中止を発表しました。
くら寿司は8月21日から、フィギュアやキャラクターがデザインされた湯呑みなどを、皿5枚ごとに1回挑戦できる抽選ゲーム「ビッくらポン!」の景品として提供するキャンペーンを開始。
ところが、8月下旬頃から、「あまりにもフィギュアが出てこない」という声がSNS上に相次ぎました。中には「2日間でカプセル53個頑張ったけど、ちいかわフィギュアだけが出てくれない」「周り見渡しても出てなさそうだったし、これ相当ヤバいよね」と嘆くファンの投稿も。
その一方で、フリマサイトでは、フィギュアが大量に出品されていたこともあり、くら寿司の従業員の不正を疑う声も上がっていました。
従業員がガチャに入れるはずの景品を抜き取っていた場合、何罪になるのでしょうか。
●窃盗罪か、業務上横領罪か
従業員のくら寿司に対する刑事責任としては、窃盗罪(刑法235条)か、業務上横領罪(刑法253条)が考えられます。
なお、「業務上」ではない単純横領罪(刑法252条)の可能性もあるのですが、やや細かい話になるのでこの解説では割愛します。
窃盗罪と業務上横領罪の違いは、景品の占有が誰にあったかです。簡単にいえば、お店の景品でも、自分が管理・保管しているものなら「占有」があるといえます。
自分が管理・保管している物を勝手に自分のものにすれば業務上横領罪です。自分が管理・保管しているわけではないお店の物を持ち去れば窃盗罪です。そう考えるのが分かりやすいでしょう。
一般に、アルバイトや普通の従業員は、会社の手足として商品に触れているだけで、自分では管理・保管しているわけではないと解されています。なお、「店長」とか「従業員」とかいう肩書から判断するのではなく、在庫を自分の判断で動かせる立場だったかどうかを実質的に検討します。
報道では「横領」と伝えられています。ただ、くら寿司は9月2日に発表した資料で、景品は「原則、鍵付き倉庫内での保管」とし、「複数名での開封・補充」をしていると説明しています。
この説明どおりなら、通常、景品を従業員が一人で自由に動かせる状態ではないと思われるため、横領罪ではなく窃盗罪の可能性が高まります。
ただ、たとえば鍵や在庫の増減を自分の判断で処理できる立場の従業員が景品を持ち去ったのであれば、業務上横領罪となりそうです。くら寿司の発表や報道からは、抜き取った従業員がどういう立場だったのかは分かりません。
●セブンイレブンの転売問題とは、どこが違うのか
今年7月には、セブンイレブンの店員やオーナーによる人気キャラクター商品の転売が報じられました。
こちらのケースでは、犯罪とするのは難しいと考えられます。
店員はレジで売値を払えば、客と同じように商品を買えます。自分が買った物を売るのは、自分の財産の処分にすぎません。
くら寿司は全店が直営で、景品は会社の物です。しかもガチャの景品には値段がなく、従業員が自分で買うことはできません。配布前の湯呑みも同じです。
●客が当てた景品を売るのは犯罪ではない
なお、自分で皿を入れて当てた景品は、当てた人の物です。売っても犯罪にはなりません。問題は転売ではなく、買えないはずの物を抜き取ったことです。
抜き取ったのが誰で、その人がどこまで任されていたのかが注目されます。それによって、窃盗なのか業務上横領なのかが変わります。くら寿司は公式サイト内で、調査結果を報告するとしています。
●民事責任や社内での処分はどうなるのか
今回、くら寿司はちいかわコラボのキャンペーンを全面的に中止しています。
キャンペーンができなくなったことによる損害を、会社がこの従業員に請求することになれば、大きな金額になる可能性があります。
ただし、キャンペーン中止による損害のすべてが認められるとは限りません。全国で中止するかどうかは会社の経営判断でもあるため、従業員の行為とどこまでの損害に因果関係があるかなどが争われる可能性があります。
また、犯罪の成立が疑われるような悪質な行為で、キャンペーンの全面中止という事態を招いています。会社から懲戒解雇などの重い懲戒処分を受ける可能性が高いといえます。

