「てんかんの原因」を特定できるのは半数以下?年齢別や遺伝との関係を医師が解説!

てんかんは、脳の神経細胞が過剰に興奮することで発作を繰り返す病気です。その原因は、生まれつきの脳の構造や遺伝子の変化から、脳卒中や頭部外傷といった後天的なものまで多岐にわたります。発症する年齢によって背景は大きく変わり、検査を尽くしても原因が特定できない場合も少なくありません。この記事は、てんかんの原因を、年齢ごとの違い、背景にある病気、遺伝との関係、原因を調べる検査に分けて解説します。

この記事のまとめ

てんかんの原因は、脳の明らかな異常がみつからない特発性てんかんと、脳腫瘍や脳卒中などが背景にある症候性てんかんに大別されますが、原因が特定できるのは半数以下とされています。年齢によって原因は異なり、子どもでは出生前後の脳の障害や感染症、高齢者では脳血管障害や認知症が多くみられます。遺伝については、親から子への発症頻度は一般の2~3倍とされるものの、明確な遺伝形式はなく体質的な要因が大きいと考えられています。

監修廣瀬 正和

京都大学医学部を卒業後、大学病院勤務を経て市中病院で脳神経内科医として5年間従事しました。
専門医取得後、母校大学院で研究を続けています。

【資格、専門医等】
日本神経学会神経内科専門医、日本内科学会総合内科専門医、日本認知症学会認知症専門医・指導医、日本脳神経超音波学会超音波検査士

【診療科目】脳神経内科、一般内科※
一般内科には呼吸器、消化器、循環器、膠原病、アレルギー、腎臓、血液、内分泌、神経、救急の領域、また一部の皮膚科や耳鼻科や泌尿器科の疾患などを含みます

てんかんの原因


てんかんの原因は一つではありません。まず病気そのものの成り立ちと、原因がわかる場合とわからない場合の考え方を解説します。

てんかんとは

てんかんは、大脳の神経細胞が過剰に興奮するために、発作性の症状が繰り返し起こる慢性の脳の病気です。神経細胞はふだん規則正しいリズムで活動していますが、その調和が突然崩れることで発作が起こります。

症状はけいれんだけではありません。ぼんやりとして反応がなくなる、身体の一部がぴくっと動く、意識を失ったまま動き回るなど、興奮が生じた脳の部位によって現れ方はさまざまです。てんかんのある方は1000人に5人から8人、日本全体で60万人から100万人といわれています。

原因がわかるものとわからないもの

てんかんは人口の0.4%から0.9%に起こる病気ですが、原因が特定できるものは通常半数以下とされています。つまり、検査を受けても原因がわからない方のほうが多いということです。

原因がみつからないことは、検査が足りなかったことを意味しません。現在の画像検査や遺伝子検査ではとらえられる変化がなかった、という結果です。てんかんは、この原因がわかるかどうかによって大きく二つに分けられてきました。

原因が特定できない特発性てんかん

検査で明らかな脳の異常がみつからないてんかんは、従来から特発性てんかんと呼ばれてきました。画像検査で脳に病変がなく、発達の遅れや神経の症状も伴わないことが特徴です。

小児期から思春期にかけて発症することが多く、全般発作を示すタイプは25歳を過ぎてからの発症はまれとされています。

背景には、発作を起こしやすい体質的な素因があると考えられています。特に全般発作を示すタイプは、睡眠不足や飲酒が発作の引き金になりやすいと指摘されています。

原因がはっきりしている症候性てんかん

脳の構造や代謝に明らかな異常があり、それが発作のもとになっているものは症候性てんかんと呼ばれます。国際的な分類では、構造的あるいは代謝性という表現に整理されています。

具体的には、脳の形成異常、結節性硬化症などの神経皮膚症候群、脳腫瘍、脳の感染症、頭部外傷、血管の病変、出生前後の脳の障害、脳卒中などが挙げられます。原因となった病変がどこにあるかによって、発作の現れ方も変わります。

年齢によって異なるてんかんの原因


てんかんは乳児から高齢の方まで、どの年代でも発症します。ただし背景にある原因は、年代ごとに大きく異なります。

子どもに多い原因

子どものてんかんは、出生前後に生じた脳の障害、脳の形成異常、遺伝子の変化、脳炎や髄膜炎といった中枢神経の感染症が原因です。生後1年に満たない時期に発作が始まり、発作の回数が多く、発達の遅れや神経の症状を伴う場合は、脳に原因となる病変が隠れていることが多いとされています。

一方で、小児期に始まって思春期までに落ち着くタイプもあり、この場合は画像検査で異常が見つかりません。なお、発熱に伴って起こる熱性けいれんは、てんかんとは区別して扱われます。

高齢の方に多い原因

近年は、60歳以上で新たに発症するてんかんが注目されています。この年代の原因としては、脳梗塞や脳出血などの脳血管障害、脳腫瘍、認知症などが挙げられます。
高齢の方の発作は、手足が激しくけいれんする形をとらないことも多くあります。ぼんやりと一点を見つめる、呼びかけへの反応が鈍い、発作の後のもうろうとした状態が長く続くといった現れ方をするため、認知症と見分けがつきにくい場合があります。

てんかんの原因となる背景の病気


てんかんの背景には、脳そのものに生じた病気が隠れていることがあります。ここでは代表的な病気を解説します。

脳卒中や脳腫瘍など

脳梗塞や脳出血は、大人になってから発症するてんかんの背景として頻度の高い病気です。脳の組織が傷ついた後、その周囲が発作を起こしやすい状態へ変化していきます。

ただし、脳卒中の発症から7日以内に起こる発作は急性症候性発作と呼ばれ、てんかんとは区別されます。時間がたってから繰り返すようになった発作が、てんかんにあたります。脳腫瘍も原因の一つで、けいれんをきっかけに腫瘍がみつかる場合もあります。

頭部外傷や脳炎など

交通事故や転倒による頭部外傷も、てんかんの原因の一つです。脳卒中と同じく、受傷から7日以内の発作は急性症候性発作として扱い、それ以降に現れる発作が後遺症としてのてんかんです。

脳炎や髄膜炎などの中枢神経の感染症も原因の一つで、近年は自分の免疫が脳を攻撃する自己免疫性脳炎も知られています。いずれも脳に炎症や傷が残ることで、発作を起こしやすい状態がつくられます。

てんかんと遺伝の関係


てんかんと診断されたとき、子どもへの遺伝を心配される方が少なくありません。ここでは遺伝と体質の関係を解説します。

てんかんは遺伝するのか

親がてんかんの場合、その子どもにてんかんが発症する頻度は4%から6%で、一般の2倍から3倍とされています。発症した本人が15歳未満の場合、きょうだいが20歳までに発症する頻度は3%から5%です。一般の集団と比べれば高い数字ですが、裏を返せば9割以上は発症しないということでもあります。

てんかん全体として明確な遺伝の形式はなく、親から子へ必ず受け継がれる病気ではありません。

遺伝より体質が関わるという考え方

てんかんの発症に遺伝子が大きく関わる場面は、多くありません。実際には、複数の因子が重なって発症する多要因遺伝の形をとると考えられています。受け継がれるのは病気そのものではなく、発作を起こしやすい体質だと表現するほうが実態に近いといえます。

遺伝子検査で診断が確定するのは、進行性ミオクローヌスてんかんやドラベ症候群など一部の症候群に限られます。家族にてんかんのある方がいても、起こしやすさを受け継ぐことと実際に発症することは別です。

てんかんの原因を調べる検査と受診


原因を調べる手順は、ある程度決まっています。受診の目安と併せて解説します。

てんかんの原因を調べる検査

通常、受診して最初に問診が行われます。発作の頻度、前後の様子、持続時間、初めて起きた年齢などを、本人と目撃した家族の双方から聞き取ります。発作の様子を撮影した動画があると、診断に役立ちます。

検査の中心となるのは脳波検査で、1回では判断できないこともあり、睡眠中の記録を含めて複数回行うことがあります。さらに、必要に応じて数日間の長時間ビデオ脳波モニタリングを追加します。また、原因となる病変を探すには頭部MRIまたはCTを用います。

発作があるときの受診サイン

初めてけいれんを起こしたときは、発作が落ち着いていても脳神経内科や脳神経外科、子どもの場合は小児科を受診してください。発作が5分以上続く、意識が戻らないうちに次の発作が起こる、けがや呼吸の乱れを伴うといった場合は救急車を呼ぶ必要があります。

けいれんを伴わない発作は、周囲から見過ごされがちです。ぼんやりする時間が繰り返しある、短い時間の記憶が抜け落ちる、朝に身体がぴくっとするといった変化が続くときも、受診をおすすめします。

てんかんの原因についてよくある質問

ここまでてんかんの原因などを紹介しました。ここではてんかんの原因についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。

原因がわからないてんかんもあるのですか?

廣瀬 正和医師

てんかんのうち原因が特定できるものは通常半数以下とされており、検査をしても原因がみつからない方のほうが多くみられます。原因が不明でも、発作の型がわかれば治療の方針は立てられます。

親がてんかんだと子どもも発症するのですか?

廣瀬 正和医師

必ず発症するわけではありません。親がてんかんの場合、子どもが発症する頻度は4%から6%で、一般の2倍から3倍にとどまります。てんかん全体として明確な遺伝の形式はなく、多くは複数の要因が重なって起こります。受け継がれる形式が定まっていないため、家族歴だけで子どもの発症を見通すことはできません。

編集部まとめ


てんかんの原因は、脳の形成異常や遺伝子の変化から、脳卒中、頭部外傷、脳炎までさまざまです。子どもは出生前後の脳の障害や形成異常が、高齢の方は脳血管障害や認知症が背景にあることが多く、年代によって傾向が変わります。一方で、原因が特定できるのは半数以下であり、わからないまま経過をみることも珍しくありません。遺伝の影響も、親から子へ必ず受け継がれるほど強いものではありません。発作を疑う症状が続くときは、発作の様子を記録したうえで、脳神経内科や小児科を受診してください。

てんかんと関連する病気

各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。

関連する病気

脳梗塞脳出血脳腫瘍

頭部外傷

脳炎

髄膜炎認知症

結節性硬化症

てんかんと関連する症状

各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。

関連する症状

上腹部からこみ上げる不快感

恐怖に似た感覚

手のむずむずした感じ

高い音が聞こえる

目の前に赤や白いものが見える

既視感

動作が止まり一点を見つめる

唇をなめるなどの無意識の動作

参考文献

『てんかん対策』(厚生労働省)

『てんかん診療ガイドライン2018』(日本神経学会)

『てんかんの診断と病型分類』(日本内科学会雑誌 第105巻 第8号)