関連画像

写真拡大

東京・港区の「麻布十番納涼まつり」で販売された「冷やし蟹ラーメン」を食べた人から、下痢や腹痛、発熱などの症状が相次いだ問題で、港区は9月3日、サルモネラ属菌による食中毒だったと断定した。

問題となったラーメンは、麻布十番の飲食店「割烹 こめを」が店内で調理し、イベント会場に持ち込んで販売していた。港区によると、8月22、23日に祭りを訪れた78人が発症し、うち3人が入院したという。

患者全員に共通する食事がこのラーメンだったことに加え、複数の患者と店の従業員の便からサルモネラ属菌が検出された。港区は食品衛生法に基づき、店に9月3日から9日まで7日間の営業停止を命じた。

店側も9月3日、SNSで「体調を崩された皆様、ご家族の皆様に、多大なる苦痛とご迷惑をおかけしましたことを、心より深くお詫び申し上げます」と謝罪。「今回の食中毒により体調を崩された方への補償につきましても、順次対応を進めてまいります」と表明した。

食中毒で仕事を休んだり、楽しみにしていた旅行やイベントをキャンセルしたりした人もいるだろう。

こうした損害は、どこまで補償されるのだろうか。治療費だけでなく、仕事を休んだことによる休業損害や、イベントのキャンセル料まで請求できるのだろうか。今井俊裕弁護士に聞いた。

●治療費だけじゃない、休業損害や慰謝料も

──今回のように、保健所が特定の食品を原因とする食中毒と断定した場合、被害者は店舗側にどのような損害賠償を請求できるのでしょうか。

サルモネラ属菌による健康被害が生じた場合、料理を購入した客は、店舗の運営法人に対して契約不履行責任を追及できます。

また、料理という「製造物」の引き渡しを受けて被害を受けたとして、製造物責任、いわゆる「PL責任」を追及することもできます。

さらに、従業員の不衛生な調理などの過失によって被害が生じた場合には、その従業員には不法行為責任が、雇用主である店舗の運営法人には使用者責任が生じる可能性があります。

賠償の対象となり得るのは、まず医療費や入院費、通院費などです。被害者が乳幼児などであれば、保護者の付き添いにかかった費用についても検討されます。

症状によって仕事を休んだ場合には、休業損害を請求できます。有給休暇を取得した場合でも、その分について請求できる可能性があります。

さらに、治療に要した期間や日数などに応じて、慰謝料を請求することもできます。

食中毒のため、近い時期に予定していた旅行やイベントなどをキャンセルせざるを得なかった場合には、そのキャンセル料も損害として請求できる場合があります。

●レシートや決済履歴は残しておく

──実際に補償や損害賠償を求める場合、被害者はどのような証拠を残しておくべきでしょうか。また、店と示談する際の注意点はありますか。

まず、問題となったラーメンを購入したことを示す資料を残しておくことが重要です。

レシートのほか、クレジットカードや電子決済、バーコード決済などの履歴が考えられます。祭りに参加し、実際にラーメンを食べたことを証明できる資料も残しておいたほうがよいでしょう。

健康被害については、保健所の検査結果や医療機関の診断書、医療費の領収書、診療報酬明細書などが証拠になります。

休業損害を請求する場合には、勤務先が発行する証明書や給与明細書などを用意しておくとよいでしょう。

そして、示談する際に最も注意したいのが「後遺障害」です。

今回の食中毒によって、将来的に後遺障害が生じたと認定される可能性も考えられます。

そのため、現時点で店側と示談するのであれば、示談後に食中毒による後遺障害が判明した場合、その損害については別途協議するという内容の特約を設けておくことが望ましいでしょう。

【取材協力弁護士】
今井 俊裕(いまい・としひろ)弁護士
1999年弁護士登録。労働(使用者側)、会社法、不動産関連事件の取扱い多数。具体的かつ戦略的な方針提示がモットー。行政における、開発審査会の委員、感染症診査協議会の委員を歴任。
事務所名:今井法律事務所
事務所URL:http://www.imai-lawoffice.jp/index.html