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NISAの生涯投資枠1,800万円を最短で使い切ったあと、追加投資なしで資産1億円を作れるのでしょうか。仮に50歳から投資を始めた場合、一律の利回り計算では「1億円到達は100歳前後」という厳しい現実が待ち受けています。本記事では、過去25年のS&P500データに基づくリアルな資産推移と、1億円到達への現実的な道筋について、YouTubeチャンネル登録者数40万人超の人気FPである鳥海翔氏が解説します。

50歳から年利5%で運用しても「1億円到達は100歳前後」

NISAにおいて、一般的には最速で生涯投資枠の1,800万円を埋めることが推奨されています。しかし、一般的な年利5%や7%といった一律のシミュレーション計算を当てはめると、50代から投資を始める人が1億円に到達するのは極めて困難であるように見えます。

毎月30万円を5年間積み立てて1,800万円の投資枠を最速で埋め、その後は追加投資をせずに運用のみを続けさせるケースで考えてみましょう。50歳で投資をスタートした場合、55歳の積立完了時点で資産は約2,040万円となります。これを追加投資をせずに寝かせて運用し続けた場合、年利5%では、65歳時点で約3,300万円、75歳時点で約5,420万円、85歳時点で約8,830万円となります。

50歳で開始した人が1億円に到達するためには95歳や100歳前後まで待つ必要があり、現実的な資産形成としては難しいことがわかります。

では、年利7%で計算した場合はどうでしょうか。55歳の毎月30万円の積立完了時点で約2,150万円。その後、65歳時点で約4,230万円、75歳時点で約8,320万円、85歳時点で約1億6,300万円となります。この場合、1億円に到達するのは75歳から85歳の間である80歳前後となり、やはり実感が得られにくい結果となります。

時間的な余裕が十分にある若い世代であれば、この一律の年利計算であっても、新NISAのみで1億円を作ることは不可能ではないかもしれません。しかし、50代や60代から投資を始めて1,800万円を1億円にするのは、このシミュレーションに頼る限り、さすがに無理であると考えるのが自然でしょう。

過去25年のS&P500データが証明…1億円到達の「リアルな年数」

しかし、一律の年利計算ではなく、過去の実際の騰落率(S&P500)に当てはめてシミュレーションを行うと、まったく異なる驚くべき結果が得られます。

2000年1月から2004年1月にかけて、毎年新たに投資を開始した5つのパターン(毎月30万円を5年間投資して1,800万円を埋め、その後は追加投資をせずに放置したケース)を実際の過去データで検証したところ、1億円に到達するまでに要した期間は以下の通りでした。

2000年1月スタート:25年

2001年1月スタート:24年

2002年1月スタート:23年

2003年1月スタート:22年

2004年1月スタート:21年

どの年に開始した場合でも、おおむね20年から25年程度という現実的な期間で資産1億円を達成していることがわかります。一律の年利計算よりも、実際の市場データを用いたほうが、はるかに早いスピードで資産が拡大しているのです。

20年かけても5,000万円未満…資産拡大の明暗を分ける「最後の5年間」

実際の過去データを用いたシミュレーションを確認すると、資産は毎年綺麗に右肩上がりで増えていったわけではないことがわかります。長く停滞する我慢の時期が続いたあとに、最後のわずか数年で爆発的に急増するのが運用のリアルな実態です。

最も期間を要した「2000年1月スタート(1億円達成まで25年)」の具体的な推移を追うと、その極端な値動きが明確になります。

スタート~5年目(2004年12月):積立完了期 毎月30万円を5年間コツコツ積み立て、元本1,800万円の積立を終了した時点の資産額は1,953万円です。

15年目(2014年12月):10年間放置した後 追加投資をせず10年間寝かせた時点の資産額は3,326万円に留まります。

20年目(2019年12月):さらに5年経過した後 運用開始から20年が経過した時点でも資産額は4,730万円であり、元本の3倍にも届かず、5,000万円の大台すら突破できていません。

25年目(2024年12月):最後の5年間 ここから劇的な変化が起こります。2019年から2024年にかけてのわずか5年間で、4,730万円だった資産が一気に1億2,500万円へと急増しました。

約20年という長い歳月をかけても5,000万円に届かなかった資産が、最後のたった5年間で2倍以上に膨れ上がり、一気に1億円を突破したことになります。この「最後の5年間で一気に増える」という現象は、2001年スタートや2002年スタートのケースでも全く同様に確認されています。

2001年1月スタート(1億円達成まで24年)の推移

積立終了時点(5年目):2,026万円

10年放置した時点(15年目):3,404万円

さらに5年経過した時点(20年目):5,363万円

最後の5年間を経過した時点(24年目):1億4,800万円に急上昇

2002年1月スタート(1億円達成まで23年)の推移

積立終了時点(5年目):2,306万円

10年放置した時点(15年目):3,563万円

さらに5年経過した時点(20年目):7,450万円

最後の5年間を経過した時点(23年目):1億4,600万円に急上昇

驚くべきことに、投資を開始した時期がそれぞれ数年ずつずれているにもかかわらず、すべてのパターンにおいて1億円の大台を突破した時期は、市場が猛烈に急上昇した「2024年2月」という同じタイミングに集中しています。

このデータが示す通り、長期投資においては、15年や20年といった大半の期間は地道な停滞期であり、資産形成の成否は「最後の数年間における急上昇期の爆発的な力」によってもたらされるのです。

「運がよかった」だけ?…急激な上昇相場を捉える「稲妻が光る瞬間」

この資産推移の結果をどのように解釈するかによって、将来資産を増やせるかどうかの道が明確に分かれます。

資産を増やせない人は、この結果を見て「たまたま最後の5年間が好調だっただけであり、再現性がない」と判断して片付けてしまいます。一方で、資産を増やせる人は「長期で運用を続けていれば、確率論としてこのような劇的な急上昇期に遭遇できる」と考えます。

市場には、短期間で株価が爆発的に上昇する「稲妻が光る瞬間」が存在します。この瞬間がいつ訪れるかは誰にも予測できません。明日かもしれないし、1年後や10年後かもしれません。この稲妻が光る瞬間に、ある程度のまとまった資金(1,800万円の枠を埋めた状態)を市場に置いておけるかどうかが、資産形成の成否を決定づけます。

投資を行わない状態は、いわば「下りエスカレーター」を自力で登るようなものです。物価の上昇や税金の増加、自身の体力の衰えという厳しい環境のなか、労働による努力だけで登り続けようとしても、力尽きて足を止めれば元の場所、あるいはそれ以下に押し流されてしまいます。

これに対し、投資を行うことは「上りエスカレーター」に乗ることを意味します。長期にわたって乗り続けることで、ときとして驚異的なスピードで上昇する高速エレベーターのような急上昇局面の恩恵を受けることが可能になります。

投資額を先に決める」…資産を早く増やす人が実践している思考法

NISAの枠を最速で埋め、この急上昇期の恩恵を最大限に受けるためには、何よりも「入金力(投資額)」を高める必要があります。

しかし、お金を増やせる人と増やせない人とでは、投資資金の作り方に対する根本的な考え方が異なります。

お金がなかなか増えない人は、「収入が増えたら投資額を増やそう」と考えます。この順番で考えると、節約や副業の努力がなかなか実を結ばず、結局はいつまでも投資に回す資金を確保できないまま時間が過ぎてしまいます。

これに対して、お金を早く増やせる人は「まず毎月の投資額を増やすと決める」という行動を先に行います。毎月10万円や20万円を先に投資に回すことを決めて自動的に引き落とされる環境を作ると、口座残高が減るために「このままでは足りなくなる」という健全な危機感が生じます。

その結果、何としても設定した投資額を維持するために、必死になって節約や副業の工夫を実行するようになり、行動のパフォーマンスが向上します。

NISAの1,800万円という投資枠を最速で埋め、20年から25年という現実的な期間で1億円の資産を築くことは、過去のデータが示す通り、十分に再現性のある合理的なシナリオです。

「たまたま運がよかっただけ」と片付けることなく、長期投資の過程で必ず訪れる「稲妻が光る瞬間」を捉えるために、早く市場に資金を置いておく状態を作り出すことが重要です。

まずは投資額を先に決めるという思考の転換を行い、固定費の削減や好きなことを活かした副業を通じて入金力を着実に引き上げ、将来の経済的安定に向けて愚直に歩みを進めていきましょう。

鳥海 翔
株式会社Challenger 代表取締役
FP(ファイナンシャル・プランナー)/投資

※本連載は、株式会社Challenger 代表FP(ファイナンシャル・プランナー)で投資家の鳥海翔氏のYouTube動画を再編集したものです。
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