大人の「内臓脂肪」は減らない?“間違った対策”で見逃す落とし穴【医師監修】

「食事に気をつけているのになぜ内臓脂肪が減らないのか」と感じる方もいるかもしれません。その背景には、インスリン抵抗性による悪循環や、加齢に伴う基礎代謝の低下が関係しています。ホルモンバランスの変化や甲状腺機能の問題も影響することがあります。身体の内側で起きているメカニズムをわかりやすく解説します。

監修医師:
茺粼 秀崇(医師)

東京大学理学部卒、広島大学医学部卒。国立国際医療研究センター病院・国府台病院を経て、神奈川県内のクリニックに勤務。糖尿病を専門に、内科疾患および内分泌疾患を幅広く診療している。

内臓脂肪がなかなか落ちない理由(生理的・代謝的な要因)

このセクションでは、生活習慣を改善しているつもりでも内臓脂肪が落ちにくいと感じる方に向け、身体の内側で起きているメカニズムを詳しく説明します。

インスリン抵抗性と脂肪燃焼の妨げ

内臓脂肪が落ちにくい根本的な理由の一つとして、インスリン抵抗性の存在が挙げられます。インスリンは血糖値を調整する重要なホルモンですが、内臓脂肪が増えるとインスリンの効きが悪くなります。すると、膵臓はより多くのインスリンを分泌しようとします。インスリンには脂肪の分解を抑え、余ったエネルギーを脂肪として蓄える働きがあります。したがって、血中のインスリン濃度が高い状態(高インスリン血症)が続くと脂肪が蓄積されやすくなります。

つまり、内臓脂肪が増えることでインスリン抵抗性が高まり、インスリン抵抗性が高まることでさらに脂肪が燃えにくくなるという、悪循環が形成されるのです。この状態では、少し食事を減らしたり、軽い運動を取り入れたりしただけでは思うように内臓脂肪が減らないことがあります。

また、内臓脂肪から分泌される悪玉の物質などの炎症性物質も、インスリンシグナルを妨げることがわかっています。軽い炎症が長期間続くことで、代謝の効率が低下し、脂肪燃焼がさらに困難になります。このメカニズムを理解すると、「なぜ頑張っているのに結果が出ないのか」という疑問のヒントになるかもしれません。

内臓脂肪の数値の改善には、血糖値の急激な上昇を避ける食事の工夫(後述の食事の順番が参考になります)や、インスリン感受性を高める有酸素運動・筋力トレーニングの継続が有効と考えられています。短期的な取り組みではなく、数ヶ月単位での継続的な取り組みが求められます。

基礎代謝の低下と加齢による影響

内臓脂肪が落ちにくいもう一つの大きな要因は、加齢に伴う基礎代謝の低下です。基礎代謝とは、呼吸や体温維持など生命活動を維持するために消費される安静時のエネルギー量を指します。一般的に、基礎代謝は20代をピークに加齢とともに低下していく傾向があります。

筋肉量は加齢によって自然に減少し、これが基礎代謝の低下に直結します。筋肉はエネルギーを消費する主要な組織であり、筋肉量が減ると同じ食事量でも余剰エネルギーが脂肪として蓄えられやすくなります。40代・50代になってから体型が崩れやすくなると感じる方が多いのは、こうした身体の変化が背景にあります。

女性においては、閉経前後のホルモンバランスの変化が内臓脂肪の蓄積を加速させます。エストロゲンには内臓脂肪の蓄積を抑え、脂肪の分布を調節する働きがあると考えられています。そのため、エストロゲンの分泌が低下する更年期以降は、脂肪が皮下よりも腹部や内臓の周りに蓄積しやすくなります。

また、甲状腺機能の低下(橋本病などによる甲状腺ホルモンの不足)も基礎代謝の低下を招き、体重増加やむくみ(粘液水腫)につながることがあります。いくら食事や運動に気をつけても体重が落ちないという方は、内科や内分泌内科で甲状腺機能を確認することも一つの選択肢です。こうした基礎的なホルモン・代謝の状態を把握したうえで生活習慣の改善に取り組むことが、より効果的な結果につながります。

まとめ

メタボリックシンドロームは、正しい知識と継続的な取り組みによって改善が見込める状態です。一人ひとりの生活背景に合ったペースで、できることから始めていくことが、長期的な健康維持への着実な一歩となります。

健康診断でメタボリックシンドロームを指摘された方や、内臓脂肪が気になっている方は、ぜひ食事の順番の見直しや運動習慣の導入を検討し、必要であれば内科・代謝内科への相談を早めに行うことをおすすめします。日常の小さな積み重ねが、将来の健康を守る力になります。

参考文献

日本内科学会「メタボリックシンドロームの定義と診断基準」

厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド 2023」

厚生労働省 eヘルスネット「メタボリックシンドロームの診断基準」

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