夫婦で「認知症」リスクが連動する? 背景に“同じ食卓”の可能性…医師の受け止めは

家族の誰かが認知症になったとき、「自分も認知症になったらどうしよう」と不安を感じる人もいるのではないでしょうか? 台湾の研究グループは、認知症患者さんの配偶者における認知症の発症リスクについて調査。その結果、認知症患者さんの配偶者は、認知症ではない人の配偶者と比べて、認知症を発症するリスクが高いことが明らかになりました。この内容について田頭先生に伺いました。

監修医師:
田頭 秀悟(たがしゅうオンラインクリニック)

鳥取大学医学部卒業。「たがしゅうオンラインクリニック」院長 。脳神経内科(認知症、パーキンソン病、ALSなどの神経難病)領域を専門としている。また、問診によって東洋医学的な病態を推察し、患者の状態に合わせた漢方薬をオンライン診療で選択する治療法も得意としている。日本神経学会神経内科専門医、日本東洋医学会専門医。

研究グループが発表した内容とは?

編集部

国立老年医学・福祉研究センターの研究員らが発表した内容を教えてください。

田頭先生

認知症患者の配偶者は、認知症ではない人の配偶者と比べて、認知症を発症するリスクが高いことが、台湾の国立老年医学・福祉研究センターの研究員らの調査で分かりました。研究では、台湾の国民健康保険データを用い、1998~2022年の期間を分析しています。5年間の発症リスクは、女性で2.75ポイント、男性で3.49ポイント高く、アルツハイマー病や血管性認知症でも同様の傾向が見られました。また、年齢が高くなるほど実際の発症リスクの差は大きくなりました。一方、収入が高い人や子どもの数が多い人では、この関連が弱くなる傾向も確認されました。今回の結果から、認知症のリスクを考える際には、本人の健康状態だけでなく、配偶者や家族との生活環境にも目を向けることが重要だと考えられます。

テーマになった疾患とは?

編集部

今回のテーマに関連する認知症について教えてください。

田頭先生

認知症は、さまざまな疾患によって脳の神経細胞の働きが変化し、記憶や判断力などの認知機能が低下して、日常生活や社会生活に支障が生じる状態です。高齢化に伴い、認知症の人は増えており、2022年度の調査では、65歳以上の約12%が認知症、約16%が軽度認知障害(MCI)と推計されています。ただし、MCIのすべての人が認知症になるわけではありません。
認知症の人や家族を支えるため、地域では「認知症ケアパス」が整備され、医療や介護サービス、相談先などの情報が提供されています。また、認知症カフェなど、悩みを共有したり交流したりできる場もあります。困ったときは一人で抱え込まず、地域の相談窓口や支援を活用しましょう。

内容への受け止めは?

編集部

国立老年医学・福祉研究センターの研究員らが発表した内容への受け止めを教えてください。

田頭先生

近年では認知症は特殊な遺伝的素因がある場合を除いて、食事や運動などの生活習慣が発症に大きく関わっていることが分かってきています。認知症のある人の配偶者で認知症リスクが上がるという現象は、同じ家族内で食生活を中心に共通する部分が多いため、結果として本人と家族の認知症発症リスクが連動している可能性もあります。そのような解釈には注意が必要ですが、認知症の発症に関して、本人のみならず、家族の行動も連動しているという重要な視点を、この研究は与えていると思います。

編集部まとめ

今回の研究から、認知症患者さんの配偶者では、認知症の発症リスクが高い傾向が示されました。ただし、配偶者であることだけが原因とは限らず、介護負担や生活環境なども関係すると考えられます。家族のケアだけでなく、自分自身の健康にも目を向け、無理をせず周囲の支援を活用しましょう。