スポニチ

写真拡大

 ◇WBA世界ミニマム級王座決定戦12回戦 ○同級1位・石井 武志<KO1回1分5秒>同級2位ウィルフレド・メンデス●(2026年9月2日 横浜BUNTAI)

 尚弥超えの最速65秒KO奪取だ。WBA世界ミニマム級王座決定戦が行われ、石井武志(26=大橋)が、元世界王者のウィルフレド・メンデス(29=プエルトリコ)を、1回1分5秒に左ボディーでKOし、世界初挑戦で王座を獲得した。1分5秒は、井上尚弥(大橋)の1分10秒を超える日本選手最速で、ミニマム級での世界戦最速KO勝利。プロ13戦目で大橋ジム6人目の世界王者となった。 

 うつろな目でキャンバスを見つめるメンデスには、立ち上がる気配がなかった。

 1回。「死んでもいい。男として絶対に行くと覚悟を決めて」臨んだ石井は、いきなりラッシュした。左ボディーがタイミングよくレバーをえぐる。よろけて後退し、座り込んだ元世界王者をカウントアウト。65秒。尚弥超えの鮮やかな王座奪取だった。

 「人生で一番、うれしい。最高です」。大橋ジム6人目の世界王者は、大橋会長が所属したヨネクラジムの5人を超える節目の王者となった。くしくもこの日、ヨネクラジム先輩、ガッツ石松氏のお別れの会が行われた。大橋会長は「ガッツさんが降りてきた。石井が尚弥を抜くとは」と驚き交じりに喜んだ。

 アマ経験のない叩き上げの王者だ。高卒後に始めたキックボクシングで地方タイトルの「大和KICK」の王者となった。だがメジャーのK-1には1メートル56の体に合う階級がなく3年でボクシングに転向した。キック時代に知り合った元WBO世界バンタム級王者の武居由樹(大橋)の縁で大橋ジムに入門。「世界王者になる」と福岡から単身上京したが、5年の道のりは簡単ではなかった。

 23年のプロ初黒星で左眼窩(がんか)底を骨折し「辞めようと思った」。25年9月の東洋太平洋王座の2度目の防衛戦で判定勝ちすると、大橋会長に「最軽量級はKOしないと注目してもらえない」と突き放された。そこから世界3階級制覇の八重樫東トレーナーとフィジカルトレーニングを重ね、たくましい肉体をつくり上げた。その成果のKO奪取に、八重樫トレーナーも「石井の努力はみんな認めている。頑張れば何者にもなれる」と驚いた。

 リングを下りる時、井上尚弥から「オレの記録、抜いちゃったね」と声をかけられた。WBAミニマムのベルトは大橋会長が1992年、八重樫トレーナーが2011年に獲得。大橋ジムの歴史をなぞり、記録を塗り替えた叩き上げの小さな男は「(努力を)やり遂げてみると、凄くいいことがある。これからは、ミニマム級の強い選手と戦いたい」と充実の表情を浮かべた。

 ◇石井 武志(いしい・たけし)1999年(平11)10月26日生まれ、福岡県うきは市出身の26歳。元キックボクサーで「K-1」出場を目指したが、適正階級がなく断念。元K-1王者で前WBO世界バンタム級王者・武居由樹(大橋)の紹介で21年に大橋ジムに入門し、ボクシング転向。22年5月に4回戦デビューし、同年の全日本ミニマム級新人王に。24年9月に12回判定勝ちで東洋太平洋同級王座を獲得。身長1メートル56の右ボクサーファイター。