「北朝鮮資産を差し押さえ」横浜地裁に申し立て…米国では27億円の回収に成功
戦後の「北朝鮮帰還事業」を巡る損害賠償訴訟で勝訴した脱北者らの原告側が31日、北朝鮮政府の資産を差し押さえるため、横浜地裁に申し立てを行った。北朝鮮政府に賠償を命じる判決を、実際の被害救済につなげられるかが焦点となる。
共同通信によると、差し押さえの対象として原告側が目を付けたのは、横浜市中区の海上保安資料館に展示されている北朝鮮工作船と遺留品だ。ただし、工作船そのものを直接差し押さえるわけではない。
工作船などは日本政府が保管している。このため原告側は、北朝鮮政府が所有権に基づいて日本政府に対して持つとする「返還請求権」を北朝鮮の財産と位置付け、これを差し押さえるよう申し立てた。
問題となっている帰還事業は1959~84年に行われ、在日コリアンや日本人配偶者ら約9万3000人が北朝鮮へ渡った。「地上の楽園」などと宣伝された一方、渡航後に厳しい生活や自由の制限に直面した人も多かった。
北朝鮮に渡った後に脱北した人ら4人は、事実と異なる宣伝によって渡航させられ、出国も許されず過酷な生活を強いられたとして北朝鮮政府を提訴。今年1月、東京地裁は北朝鮮政府の不法行為を認定し、4人にそれぞれ2200万円、計8800万円を支払うよう命じた。
しかし、北朝鮮が判決に従って自発的に賠償金を支払う可能性はほとんど期待できない。そこで重要になるのが、日本国内に存在する北朝鮮政府の財産を探し、強制執行によって賠償に充てる方法だ。
同様の試みで先行しているのが米国である。
北朝鮮を訪問中に拘束され、2017年に昏睡状態で帰国した直後に死亡した米大学生オットー・ワームビア氏の両親は、北朝鮮政府を相手取って訴訟を起こした。ワシントンDC連邦地裁は2018年、北朝鮮による人質行為や拷問、超法規的殺害を認定し、約5億100万ドルという巨額の賠償を命じた。
(参考記事:【写真】死亡の米大生「歯がズレた」原因は北朝鮮の拷問…裁判所が認定)
もちろん北朝鮮は支払わなかった。そこで両親は、その後も世界各地にある北朝鮮関連資産を追跡してきた。
そして今年6月、ワシントンDC連邦地裁は、米大手銀行JPモルガン・チェースに凍結されていた約1713万ドル(当時約27億円)の資産について、ワームビア氏の両親への支払いを命じた。
資産はパキスタンの核科学者A・Q・カーン博士のネットワークに関連するものだった。裁判所は同ネットワークが北朝鮮の「代理人または機関」に当たるとして、凍結資産を北朝鮮に対する賠償判決の履行に充てることを認めた。

