【増田 剛】【独自】「迎撃ドローン」を3ヵ月で海自納入…テラドローン社長が明かす「脱中国」2つの死角

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「テラドローン社長」が語る防衛戦略の課題

2026年8月、日本の防衛戦略における「不可逆的なパラダイムシフト」が、かつてないスピードで進行している。

高市早苗内閣が公表した2026年版「防衛白書」は、日本を取り巻く安全保障環境を「戦後最も厳しく複雑」と断じ、人工知能(AI)や無人機(ドローン)を活用した「新しい戦い方」への対応を最重要課題として前面に押し出した。また、防衛省は2027年度予算案の概算要求において、過去最大となる8兆9千億円規模を計上した。この巨額予算の中核に据えられているのも、「新しい戦い方」への対応である。

なかでも、日本政府が力を入れているのが、軍事用ドローンの国産化の推進だ。そして、その背景にあるのが、世界最大のドローン大国・中国の存在である。民生分野のドローン市場において、中国製は世界シェアの7割、日本国内に至っては90%を占有している。台湾有事が現実味を帯びるなか、中国が大量の無人機を使った飽和攻撃を仕掛けてきた場合、日本はどうやって国を守るのか。有事において最も重要なのは、戦闘を継続する力、すなわち「継戦能力」である。消耗戦が前提となるドローンを海外のサプライチェーンに依存していれば、供給網が絶たれた瞬間に日本は戦う術を失ってしまう。

この軍事用ドローンの国産化推進、いわゆる「国産ドローン戦略」の旗振り役となっているのが、小泉進次郎防衛大臣だ。小泉氏は、防衛ビジネスへの「資金の壁(金融機関の消極的な融資姿勢)」を、金融界トップへの直談判で打破するなど、持ち前の実行力で国産ドローン基盤の構築を牽引している。

こうした政府の動きに呼応して、民間でも「地殻変動」が起きている。7月末、国内電機大手の東芝が、スタートアップの「プロドローン」(名古屋市)と提携し「国産迎撃ドローン」の開発を発表。8月中旬には、楽天グループが、迎撃・攻撃用ドローンを手がけるドイツのスタートアップ「ヘルシング」と提携し、防衛分野へ本格参入することが明らかになった。そして、8月25日には、国内スタートアップの「テラドローン」(東京都渋谷区)が、防衛装備庁が実施した「迎撃ドローン早期取得プログラム」において、国内外のドローン企業38社の中から、迎撃ドローン「Terra B1」の量産調達契約を勝ち取ったのだ。公募開始からわずか3か月での量産契約という、防衛装備品の常識を覆す異例のスピードである。

今回、筆者は、契約発表直前の8月25日午後、テラドローンの徳重徹社長にオンラインインタビューを敢行した。「防衛テクノロジー大国」への道を切り拓く気鋭のトップが語った、参入の舞台裏と日本の防衛戦略に残された“課題”をお届けする。

ウクライナの戦地で痛感した「非対称戦」の現実

--防衛産業への参入はハードルが高いとされますが、本格参入を決断した背景を教えてください。

「過去にも何度か検討しつつ躊躇していましたが、昨年5月に新規事業として思い切って参入を決めました。理由は大きくふたつあります。ひとつは、ウクライナへ何度も足を運び、また、中東情勢を注視する中で、現代戦におけるドローンの重要性を肌で感じたこと。もうひとつは、国内で防衛向けドローンを、スピード感を持って開発・供給できるプレイヤーが存在しないという強烈な危機感です。アジャイルな開発力を持つスタートアップの我々がやるべきだという使命感が芽生えました」

現代戦は「非対称戦」へと変貌している。ウクライナの戦場では、一機数十万円の安価なドローンが、数十億円の戦車やミサイルをいとも簡単に破壊している。徳重社長は、現地の空襲警報や着弾音をじかに聞き、戦火を実際に体験する中で、日本の防衛議論と現実との「致命的なギャップ」を感じたという。

「ビジネスのような合意ベースとは異なり、戦争は、相手が仕掛けてくれば一方的に始まります。台湾有事など北東アジアのリスクが高まる中、日本の防衛議論は平時の感覚が抜けず、スピード感に欠けています。有事の準備には、最低でも半年から一年はかかる。2027年から2028年にかけての情勢変化を見据えると、もはや猶予はありません」

迎撃ドローン「Terra B1」とAI自律化がもたらす革命

--今回採用された迎撃ドローンや、開発中の「AI搭載自律型迎撃ドローン」は、国防においてどのような意義を持つのでしょうか。

「『コスト対効果』と『運用性』の2点において、決定的に重要です。まず、自爆型ドローン(シャヘド等)による飽和攻撃に対し、高額なミサイルで迎撃していては、すぐに弾薬が枯渇してしまいます。安価な迎撃ドローンでの対処は絶対条件です。

また、手動操縦(FPV)は極めて難易度が高く、パイロットの養成に時間がかかります。しかし、AIによる自律化が進めば、高度な訓練なしに誰でも扱えるようになり、命中率も向上します。ひとりのオペレーターが、例えば、5機といった複数機を同時に運用する体制も実現可能です」

海上自衛隊への納入が始まる「Terra B1」も、ウクライナで得た知見を活かし、AI自律型技術をベースにさらなる進化を遂げていく方針だという。

異例の「3か月納入」と、真の国防に向けた“2つの死角”

防衛装備品の調達に数年から十数年かかっていたかつての常識からすれば、今回の「3か月納入」は驚異的だ。徳重社長も、政府や防衛省の取り組みを「遅れを取り戻すべく、スピード感を持って進めている点は高く評価している」と語る。しかし同時に、実効性を持たせるための「最後の2つのピース」が欠けていると警鐘を鳴らす。

①サプライチェーンの確保(「ノン・台湾」の視点):「単なる『ノン・チャイナ(脱中国)』にとどまらず、有事の際に供給が止まるリスクがある『ノン・台湾』も見据えた調達網が必要です。現在の加点方式のような緩い入札基準ではなく、『主要部品の65%の国内調達』を必須要件にするなど、制度設計を抜本的に見直す必要があります」

②平時からの「ワンライン」維持と定期発注:「部品を担う中小企業(モーターのアスター社など)は、単年度の不確実な入札では設備投資や人材確保ができません。マザー工場として年間数千~1万台規模の『ワンライン(製造ライン)』を平時から回し、有事の際に10万~20万台へとスケールアップできる体制を整備することが不可欠です」

有事に戦い続けるための「継戦能力」は、平時の産業育成なしには成り立たない。中国製ドローンが市場を席巻する中、純国産サプライチェーンの強靭化は急務である。

大手防衛プライムとの連携で挑む「SHIELD」構想

政府は現在、無人機を大量かつ多層的に活用する沿岸防衛構想「SHIELD(シールド)」を推進している。この壮大な構想を実現するためには、スタートアップの機動力だけでなく、量産体制を持つ大企業の力が必要不可欠だ。

--伝統的な大手企業や海外防衛プライム(主契約企業)との連携の可能性はありますか?

「十分にあり得ますし、重要だと考えています。ドローン開発に必要な『アジャイルなスピード感』はスタートアップが担いつつ、量産や統合力を持つ大手・防衛プライム企業(国内外含む)との連携を視野に入れて動いています。準備が整い次第、発表していく予定です」

東芝の高度なレーダー技術とプロドローンの開発力の「融合」、そして、楽天による海外最先端AI技術(ヘルシング)の導入支援。こうした異業種大企業の参入と、テラドローンのようなアジャイルな新興企業の躍進が交わることで、日本の防衛産業はかつてない「エコシステム」を形成しつつある。

タブー視されてきた防衛への投資は、今や「国を守り、次世代の産業を創る」成長分野へと変貌した。民間活力を結集した日本の「新しい戦い方」は、北朝鮮や中国の脅威に対する最大の抑止力となるはずだ。

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