石垣島や宮古島で、ある外来種の鳥が野生化して繁殖しているという。ムシモアゼルギリコさんは「環境保護のために駆除された個体を食べたことがあるが、とても意外な味だった」という--。
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■美しい羽を持つ「食欲旺盛」な鳥

玉虫色の美しい羽を持ち、主に動物園などで愛でられている。しかし、見た目の優雅さを裏切り、食欲は旺盛。毒蛇や害虫をも食べつくす食性から、仏教では人々の災いも食らってくれる(に違いない)と神格化されていたりもする。

今、そんな鳥が、石垣島や宮古島といった沖縄の離島で野良化して大繁殖しているという。2004年頃から度々話題にのぼっているので、既にご存じの人も多いだろう。

その正体は、インドクジャクだ。リゾート施設や個人が、観賞・観光用として沖縄へ持ち込んだものの、台風で小屋が破壊されて脱走したり、管理不足や遺棄によって野外へ放たれて野良化していったのだ。

インドクジャクは、もちろん個体差はあるものの、野生下でも寿命が15~20年程度と長いのが特徴。しかも、天敵がおらず温暖な気候の沖縄離島では、動物園と同じく30年くらい生きることもあるという。そのため、どんどん繁殖してしまったのだ。2024年の宮古島の報道では、「1000羽を超える可能性もある」という予測も語られていた。

■石垣島や宮古島の希少な固有種を捕食

当初、地元では「猫に似たような、でもなんとなく違うような“みゃーん”という鳴き声がする」と話題になる程度だったと聞く。

ところが、2019年から本格的な調査が開始されたところ、インドクジャクが野良化して大繁殖していたという顛末だ。あの鮮やかな色彩の鳥が走りまわる光景を想像すると、リゾート地らしい異国情緒……なんて感想が頭をよぎるが、インドクジャクは外来種であり、深刻な環境破壊につながるので洒落にならない。

実際、インドクジャクは大食漢なので、島の農作物を食い荒らすだけでなく、石垣島や宮古島の希少な固有種を捕食してしまい、深刻な生態系被害を及ぼしているのだ。ミヤコカナヘビ、ミヤコニイニイ、キシノウエトカゲといった固有種の捕食が確認されている。

各自治体ではハンターによる銃撃、探知犬や箱わな等を駆使して防除を続けており、昨年度の防除数は、宮古島市で971羽。石垣島では442羽と報告されている(いずれも成体、雛、卵を含む)。そうした取り組みによって捕えられたクジャクが、一部では食用にされており、めぐりめぐって筆者の口にも入ったことがある。

■初めてのクジャク肉は衝撃の味わい

ある年、知人が沖縄のハンターからクジャクを入手し、みんなで調理して食べる会を開催した。まずは、冷凍で送られてきたクジャクを解凍。それから、みんなでクジャクを囲み、特徴ある美しい羽根を抜いていく様子は、なかなかの迫力だった。

筆者提供
羽がついたまま冷凍されて送られてきたインドクジャク。 - 筆者提供

ところが、いざ肉を切り分けはじめると……のけぞった。閉口するほど、臭かったのだ。野生の生き物であるジビエ肉は、基本的に個体差があり、また捕獲法や処理の違いにより、肉の品質が大きく変わる。そのうえ、個人間のやりとりで離島から東京へ送られる過程で、肉が傷んだ可能性も大きかっただろう。

その時は結局、スパイスで臭みをマスキングして、カレーにして食べた。肉の味は「臭い鶏肉」くらいの感想。中世ヨーロッパの宮廷宴会では、クジャクの焼肉がごちそうだったはずなのに、「解せぬ……」と唸った。

そもそも、クジャクを食べる文化は、古代ローマや中世ヨーロッパの貴族社会で盛んだった。華やかな姿から、権力の象徴として宴席を彩る豪華な食材だとされていたのだ。しかし16世紀に入ると七面鳥の流通によって、食材としての役目は終了。その後は観賞用や羽の利用がメインとなり、食卓からは姿を消していった。そして時を経て現代の日本では、観賞用から防除のために食用へと逆行している。

筆者提供
みんなでせっせと羽を抜いて丸裸になったクジャク。マスクを装着していたこともあり、まだ匂いに気づいていない筆者。 - 筆者提供

■クジャク肉を扱うレストランも登場

現在は、クジャク肉を扱うレストランもある。旅行で宮古島を訪れた知人たちからは、現地で「焼きクジャク」や「クジャクカレー」を食べたという話を聞いた。

東京では、高田馬場にあるジビエ料理店「米とサーカス」で、入荷があったときだけ数量限定で「クジャク鍋」を提供している。

左=米とサーカス提供、右=筆者提供
宮古島産のインドクジャクを使った「火の鳥鍋」(2~3人前、4980円。※数量が限られるため、入荷時やフェア期間のみ3日前までに要予約)。「火の鳥鍋」を頼むと、クジャクの羽を1本もらえる。 - 左=米とサーカス提供、右=筆者提供

この店で食べたクジャク肉は、限りなくヘルシーな超さっぱり味だった。胸肉とモモ肉ともに力強い歯ごたえはさすが野鳥という感じだが、つまり率直に言って少し硬い。だが、以前、みんなで解体して食べたときのような臭みは一切ない。解体から調理までプロの手を通すと、肉のクオリティが段違いになるという当たり前の事実を、改めてじっくり味わうことができた瞬間でもあった。

店の人に話を聞くと、「お客さんから“驚きのおいしさ!”という声はほぼありませんが、みなさま一様に“これがクジャクの味か”と知的好奇心を満たしながら、噛みしめられているご様子です」とのことだった。

■「オルタナフード専門」の希少肉卸

なお、米とサーカスの火の鳥鍋に使われているインドクジャクは、「Noblesse Oblige(ノブレス オブリージュ)」という会社が卸した肉だ。この会社は、オルタナフード(社会問題解決性食材)専門の希少肉卸である。代表の加藤さんは、宮古島を訪れた際にクジャク肉と出合い、さらに有害鳥獣であることを知って、そこから積極的に島の外でも活用する道を探ったという。

Noblesse Oblige提供
宮古島で防除されたクジャク。他の方法よりも空気銃で捕獲されたもののほうが肉質がいい傾向がある。 - Noblesse Oblige提供

加藤さんは、クジャク肉の味について「肉の食味はキジに近いが、キジよりも肉付きがよくて味が濃く、ヒハツのような香りがある。よく走りまわるので脚がしっかりしていて旨味が強い。ただし腱が非常に硬いため、しっかり取り除く必要がある」と話す。

興味深いのは「肉にヒハツの香りがある」という点だ。ヒハツとは、コショウ科のつる性常緑樹で「島コショウ」と呼ばれることもある植物のこと。シナモンや八角のようなスパイシーで甘い柑橘系の香りが混ざった独特の風味があり、雑食のクジャクが野生のそれらを食べたのかもしれない。米とサーカスでも同じような話を聞いた。「特徴的なのは、むね肉のフローラルな香り。いい出汁が出る」と。残念ながら、その香りはクジャク鍋ではわからなかったが、料理法によっては感じ取れるのかもしれない。

ちなみに筆者が過去に体験した臭みは、保存状態以前に「皮にも原因があると思う」と、加藤さんよりヒントをもらった。クジャクは皮に臭みがあるため、美味しく食べるには、羽だけを抜くのではなく皮ごとまるっと剥くのがいいそうだ。

■気になるクジャク肉の市場価格

クジャク肉は、精肉通販でむね肉等が1パック5000円前後、ジビエ専門店では鍋料理などで2~3人前5000円前後で提供されている。

同じ鳥ジビエであるカモなどと比べると、インドクジャクは体格が大きく可食部(肉量)が多いので歩留まりが良く、グラム単位で見るとコスパに優れる側面を持っている。加藤さんの話では、マガモ1羽が約1kgであるのに対して、クジャク1羽は約2~4kgほどだという。

しかし、捕獲地である沖縄離島からの輸送費がかかること、品質のバラつきにより在庫が不安定であることなどから、市場全体での流通価格は高止まりしているのが現状だ。「希少ジビエ」といえるだろう。

また飼育しているのではなく、根絶やしにするための防除が目的なので、国産の野クジャク肉はいずれ口に入らなくなる日が来る。そう思うと、ますます貴重かもしれない。

■じっくり噛みしめ味わいたい野鳥肉

このように海外から日本に持ち込まれ野生化し、「珍味ジビエ」として食卓に上るのはクジャクだけではない。ペット用途で大繁殖した「アライグマ」は脂の乗った上質な肉として活用されている。観光施設から脱走した小型のシカ「キョン」も、クセのない柔らかい肉質から高級ジビエとして飲食店等で提供されている。

人間の都合で増えた命を食資源として活かす試みは、さまざまな生き物で広がっているが、もし需要が増えると、防除という目的と矛盾してしまう恐れはありそうだ。

実際、海外には、日本(沖縄等)のように「野生化した駆除個体を活用する」形とは異なり、商用目的のインドクジャクの養殖場がある。中国や欧米などでは人工繁殖させて、観賞用・羽毛用・食用(高級ジビエ)として出荷・取引されているケースがあるようだ。

もとは東南アジアだけに生息していたインドクジャク。それが人間の都合で連れてこられながらも、各地でたくましく生き抜く姿にはどこか「あっぱれ」と言いたくなる力強さがある。その数奇な背景ごと、じっくりと噛みしめ味わいたい野鳥肉だ。

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ムシモアゼルギリコライター
1974年、東京都生まれ。ライター。昆虫料理研究会への参加を機に、2008年頃から“虫食いライター”として活動を始める。現在、TV、ラジオ、雑誌、トークライブなどで昆虫食の魅力を広めている。著書に 『むしくいノート びっくり! たのしい! おいしい! 昆虫食のせかい』(カンゼン)がある。
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(ライター ムシモアゼルギリコ)