《他人の子の頭をなでると“不審者”?》女児の頭なでた73歳男性がブッ飛ばされ骨折…防カメ映像拡散で大論争に「勝手に触るな」vs.「過剰反応」【シンガポール】
見知らぬ大人が、わが子の頭を突然なでる──。それを「かわいがってくれた」と受け止めるか、「勝手に触らないで」と警戒するのか。
【写真を見る】フードコートで食事中の女児に近づき…父親らしき男性に高齢者がぶっ飛ばされる一部始終
子どもへの性犯罪や連れ去りへの警戒が強まるなか、その距離感は変化している。日本では実際に「子どもの頭をなでる」という行為を、不審者情報として自治体が注意喚起したことで議論を呼んだこともある。
そして遠く離れたシンガポールでも。現地で起きたある一件が、大きな論争を巻き起こしているのだ。
フードコートで起きた「事件」
事件が起きたのは8月15日午後4時40分ごろ。シンガポール東部にある商業施設「ロクシー・スクエア」内のフードコートだった。
防犯カメラには、足を引きずりながらゆっくり歩く高齢男性の姿が映っている。男性は、ワンタン麺の老舗「Bei-Ing Wanton Noodle」を約40年間営んできた屋台店主ヨー・ソン・クーンさん(73)。通路を歩いている途中、席にいた幼女に目を留め、その頭を軽くなでた。
直後、女児の向かいに座っていた母親とみられる女性がヨーさんに何かを言うと、そこへ父親とみられる男性が足早に戻ってきた。男はヨーさんに指をさしながら詰め寄り、腕をつかむと、そのまま床へ倒した。周囲の客が驚いて助け起こす様子までがカメラに残されていた。
男性はその場で謝罪し、「娘に対して過保護になっていた」と説明。ヨーさんもその場で男性を責めることはなかった。
「床に倒されてから数時間後、ヨーさんは背中に痛みを感じ始めた。翌日、家族に説得されて受診すると、背中の骨折が判明。その後は店を休んだものの、痛みで横になって眠れず、座ったまま眠る日々が続いたといいます。それでも5日後の8月20日には、歩行補助具を使いながら店に復帰しました。
ヨーさんは地元メディアに『あの子がとてもかわいかったから』と説明。『年寄りは小さい子の頭をなでるのが好きなんだよ』とも話しています」(海外ジャーナリスト)
ヨーさん本人は男を許そうとしていたが、家族は違った。防犯カメラを確認した息子は、父親が乱暴に床へブッ倒される映像を見て驚き、警察に通報。「この男性が誰か知りませんか」と映像をSNSに投稿した。現場を目撃した客も後日、店を訪れて連絡先を残し、証人になると申し出ている。一方で、穏便に済ませたかったヨーさんは、こうした息子の対応に腹を立てたという。
映像が拡散すると、SNSでは「他人の子どもに勝手に触るべきではない」とする意見がある一方、「注意すれば済む話ではないか」「歩くのも不自由な高齢者を床に倒す必要があったのか」と、男性の行動を非難する声も相次いだ。
「以前は子どもの頭をよくなでていた」前大統領も反応
ハリマ・ヤコブ前大統領も騒動に言及。71歳のハリマ氏は「私も以前は子どもの頭をよくなでていた」と明かしつつ、今では「常に自制しなければならない。とても怖い」と発言。子どもの頭をなでることは、特に高齢者にとって愛情表現だったとしたうえで、「残念ながら社会はとても分断されてしまった」と嘆いた。
元俳優のホアン・イーリャン(65)も「時代は変わった」と指摘。他人が自分の子どもに触れることへの親の抵抗感には理解を示しながらも、今回の父親の行動については「やりすぎだった」とコメントしている。
ヨーさんのもとには事件後、多くの常連客が見舞いに訪れた。10代のころから店に通う40歳の男性は、1歳の娘を連れて店を訪れ、「頭をなでていいですよ」とヨーさんに声をかけた。男性は、ヨーさんが娘の頭をなでる姿を見て、今回の事件で子どもの頭をなでることがトラウマになっていないようで安心したと語った。
ほかにも、子どもを連れてヨーさんを励ましに来る客が相次いだ。見知らぬ大人が子どもに触れることをどこまで許容するのか──。海の向こうで起きた騒動だが、その問いは日本にとっても決して他人事ではない。
