(※画像はイメージです/PIXTA)

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親が亡くなってから随分と時間が経ったあとに、生前の借金が発覚して突然の督促状が届くケースがあります。相続放棄には「熟慮期間」と呼ばれる期限があるため、「もう手遅れなのでは」とパニックに陥る遺族は少なくありません。父親の死から1年後、突然「500万円の督促状」が届いた45歳男性の事例をもとに、弁護士法人山村法律事務所の代表弁護士・山村暢彦氏が期限経過後の相続放棄について解説します。

30年音信不通だった父親の訃報と放置した相続

都内のメーカーで会社員として働くサトシさん(仮名・45歳)は、妻と小学生の子ども2人と平穏な日々を送っていました。

しかし1年前、警察からの1本の電話で日常が揺らぎます。

「あなたのお父様が、地方のアパートで亡くなっているのが発見されました」

サトシさんの両親は、彼が中学生のときに離婚しています。原因は父親の度重なる浮気と金銭トラブルでした。母親に引き取られたサトシさんはそれ以来、30年近く父親とは一切連絡を取っていませんでした。

突然の訃報にも悲しみは湧かず、サトシさんは「遺骨はそちらで無縁仏として処理してください」と伝え、葬儀はおろか遺品の整理にも向かいませんでした。

「親父の財産なんてどうせ何もないだろう」と思い込んでいたため、相続の手続きなども一切行わず、そのまま放置していたのです。

父の死から1年後…突然届いた「500万円の督促状」

父親の死からちょうど1年が過ぎたころ。サトシさんの自宅のポストに1通の封筒が届きました。差出人は、聞き覚えのない債権回収会社です。

不思議に思いながら封を開けると、そこには目を疑うような内容が記されていました。

「亡きお父様の未払い金について、相続人であるあなたに返済を求めます。請求金額:500万円」

サトシさんは血の気が引きました。どうやら父親は生前、複数の金融業者から借金を重ねており、その債権が回収会社に譲渡されていたようです。父親が亡くなったことで、相続人となったサトシさんのもとに督促が届いたのでした。

「そんな馬鹿な……。親父とは30年も会っていないのに、なんで俺が借金を払わなきゃいけないんだ」

サトシさんは焦ってインターネットで「親の借金 払わない方法」と検索しました。そこで「相続放棄」という制度があることを知りますが、次に目に入った一文に絶望します。

『相続放棄は、自己のために相続の開始があったことを知ったときから3ヵ月以内に申し立てなければならない』

サトシさんが父親の死を知ったのは、間違いなく1年前の警察からの電話です。「相続放棄の期限は、とっくに過ぎてしまったのではないか……?」と思ったサトシさんは、途方に暮れました。

「なんで俺が…」相続放棄の“期限切れ”に絶望

「期限を過ぎてしまったら、親父の借金を全額背負うしかないのか……?」

サトシさんの貯金は、子どもの将来の教育費や住宅ローンの返済に充てる予定であり、500万円もの大金を肩代わりできる余裕などありません。妻に打ち明ければ、家庭崩壊の危機すらあり得ます。

「親父の財産なんて1円も受け取っていないのに、借金だけ背負わされるなんて理不尽すぎる……」

顔面蒼白になったサトシさんは、督促状を見つめながら、これからどうすればいいのかわからず、ただ震えることしかできませんでした。

しかし、相続放棄の「3ヵ月」という熟慮期間については、単純に「親が亡くなってから3ヵ月」と考えればよいとは限りません。

では、サトシさんのように、親の死後かなりの期間が経ってから多額の借金の存在を知った場合、相続放棄は認められるのでしょうか。

弁護士の助言】死後1年経っていても「相続放棄」は間に合うか?

相続放棄について、「親が亡くなってから3ヵ月を過ぎたら、もう絶対にできない」と考えている方は少なくありません。しかし、必ずしもそうとは限りません。

今回のように、長年親と疎遠で、相続するような財産は何もないと考えることに相当な理由があり、死亡からかなり経って初めて督促状によって借金の存在を知ったという場合には、借金を知った時点から3ヵ月以内に相続放棄を申し立て、受理される可能性があります。

もっとも、単に「借金を知らなかった」と主張すれば認められるわけではありません。なぜ財産や借金がないと考えていたのか、親との交流状況、死亡後に遺産を調査したかなど、具体的な事情が重要になります。

こうした督促状が突然届いた場合、慌てて一部を支払ったり、債務を認めるような書面に署名したりする前に、まず弁護士相談してください。死亡から3ヵ月以上経っていても、そこで諦めずに相続放棄が可能なケースかを検討することが重要です。

山村 暢彦
弁護士法人山村法律事務所
代表弁護士