【特別対談】『AGAVES アガベ』監修者×翻訳者|アガベ探究者が語る、未知への冒険心と植物の造形美

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世界のアガベシーンを牽引する図鑑『AGAVES アガベ』の著者のおひとり、ジェレミー氏。彼はいかにしてアガベの魅力に取り憑かれ、過酷な自生地へと足を運ぶようになったのでしょうか。ジェレミー氏のアガベに対する深い愛情と、その根底にある冒険心について監修のShabomaniac!氏と翻訳のdog.keeper氏が語り合います。

自然が作り出す幾何学的な面白さ

―― 翻訳作業を通じて、ジェレミーさんの植物に対する敬意や美意識について感じたことはありますか?

dog.keeper:実はジェレミーって、昔はそんなに植物が好きじゃなかったそうなんです。子供の頃って、植物園に連れて行かれても動く動物の方が面白かったりするじゃないですか。

Shabomaniac!:僕は子供のころから動かない植物や石なんかも好きだった(笑)。

dog.keeper:彼がアガベを好きになったのは、自然が生み出す幾何学的な模様や色彩といった「造形の面白さ」に魅力を感じたからだと思います。それに、10年、20年とほとんど姿を変えずに過ごしたかと思えば、わずか1~2週間で花茎を一気に伸ばして木のような姿になり、やがてその生涯を終える。そうした劇的な生態にも強く惹かれているのでしょうね。

アーティスティックな視点で切り取る、アガベのディテール

―― アガベのフォルムや色彩の美しさは、図鑑の写真からもひしひしと伝わってきますね。

Shabomaniac!:この本の大きな特徴の一つとして、ジェレミー自身の撮影による「パーツの切り取り方」があります。彼らがアガベのどこを魅力に感じているのかが、写真でしっかり示されているんです。「アガベの何を楽しめばいいのか」「どこに魅力を感じればいいのか」が、とてもわかりやすく伝わってきます。

彼の写真は、色彩やフォルムの抽出やインプリンティングなど、アガベの見どころを非常にアーティスティックに切りとっています。単に美しいアガベの全体像を並べるだけでなく、「アガベに向き合うとき、僕はここを視ている」というような写真の撮り方をしているんです。

dog.keeper:撮って出しの写真を大事にしていて、逆光で透けるような透明感のある表現など、彼ならではの美意識と観察眼が随所に見られます。

未知の領域に挑む「冒険心」と、自らの美学にとらわれない大らかさ

―― ジェレミーさんが過酷な自生地を探索し続ける原動力は何なのでしょうか?

dog.keeper:アガベは他の植物に比べて、まだ分かっていないことがすごく多いんです。研究の蓄積も、他の植物ほど進んでいるとは言えません。自生地に足を運べば、まだ誰も見たことのない不思議な種類が発見されるかもしれない。そうした未知の領域に挑む「冒険心」が、彼を危険なフィールドへと突き動かしているのだと思います。

ジェレミーがメキシコの自生地で比較対象となる。ラペリング(ロープで崖を降りる技術)なしで、切り立った崖の急斜面の大株に辿り着いた。

Shabomaniac!: それに彼は、自分の美学しか認めないような閉鎖的な園芸家ではありません。非常に大らかで、日本の愛好家が作った交配式も残されていない交配種でも、素敵なフォルムであれば素直に「かっこいいよね」と言ってくれる。園芸家としての目線が徹底しているからこそ、国境を越えてアガベ・カルチャーを共有できるのだと思います。

dog.keeper: 細かな分類の違いを指摘することよりも、自生地で得られる肌感覚をとても大切にしている人なんですよね。

Shabomaniac!:園芸家、育種家としての目線が徹底しているからこそ、国境を越えて多くのアガベファンを魅了する図鑑、この本を生み出せたのだと思います。