福井県の県立高校から塾に一切通わず東京大学に現役合格し、在学中からクイズ番組「東大王」にも出演していた伊藤七海氏。学力の土台には、幼少期に打ち込んだ「文字遊び」があったという。天才と呼ばれる人はどのように育てられたのか、本人に話を聞いた。全4回の第1回




塾なし東大生・伊藤七海の原点にあった“親の工夫”


 勉強を無理強いされた記憶はほとんどないという伊藤氏だが、幼少期の環境には工夫があった。最初に夢中になったのは、文字を使った遊びだったという。


 「小さい頃から文字が好きで、家にあったひらがなとカタカナのパネルを並べて言葉を作る遊びをよくしていました。ただ、それぞれ一通りずつしかないので、作れる言葉にはすぐ限界が来てしまって」


 「あ」も「い」も一枚ずつしかなければ、同じ文字を二回使う言葉は作れない。物足りなくなった伊藤氏は、パネルにない漢字にも興味を持ち始める。それに気づいた母は、市販品を買い足すのではなく、手書きで同じ大きさの漢字パネルを一から作った。


 「並べたらどんな言葉になるかな、という感じでたくさん作ってくれて。家や車でよく流れていた曲のタイトルとかアーティスト名とか、身近なものを題材にしてくれていましたね。中島みゆきさんの『地上の星』とか、そういう曲名も並べた記憶があります」


 市販の教材では、子どもが今どこに興味を持っているかまでは合わせられない。手作りだからこそ、飽きる前に次の段階を用意できる。母の愛情がたっぷり詰まったこの遊びが、後々まで続く「漢字好き」の入り口になった。


 「そこからずっと漢字は好きで、後にクイズ番組でも漢字が絡む問題を任されるところまで、いけたのかなと思っています」


伊藤氏が出演していた「東大王」でも、漢字問題といえば伊藤氏、という立ち位置だった。あの日、母が手書きで作ってくれたパネルの数々。そこから積み上げた漢字への愛着が、何年も先のテレビ画面の中で花開いていた。



疑問だらけだった幼少期、母の対応に見えたある法則


 伊藤氏は幼い頃から何事にも疑問を持つ子どもだったという。


 「文字に限らず、何事にも疑問を持って、いろんなことを質問していたみたいです。これはなんで?この言葉はどういう意味?みたいな感じで」


子どもの「なんで」にどう答えるか、どこまで説明すればいいのか、悩む親は多い。伊藤家の母には、決まった返し方があった。