「ハビタが無責任な態度に終始するなら…」 イオンモール爆発事故の被害者遺族が怒りの証言 専門家は「刑事責任の追及は可能」
【前後編の後編/前編からの続き】
過去の震災でも類のない惨事の全貌がようやく見えてきた。7月28日の熊本地震発生から1時間23分後に起きたイオンモール熊本の爆発。果たして生死を分けたターニングポイントは何だったのか。真相解明を求める遺族たちと、被害を免れた生存者たちが重い口を開く。
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【写真を見る】「爆発直前に撮影」 イオンモール熊本の「緊迫の館内」
前編では、被害を免れた生存者による緊迫の証言を報じた。
一方、爆発事故では7人の従業員が亡くなっている。そのうちの一人である、アパレル大手のオンワードホールディングスの系列店で働いていた女性の兄がこう語る。
「妹が働いていた店は、やや北側にありました。本来なら南側より近い出口から外に出られたはずなのに、なぜ妹はそこにいたのか。オンワードの事故報告では、妹を含む自社系列の店員3名が亡くなった経緯をまとめていますが、非常に不可解な点が多いのです。3人が再入館したことを会社に電話で報告したのが、17時19分。そこから店舗内だけに限っても約20分、合わせて約30分も館内にとどまり続けて、最後は爆発に巻き込まれてしまった。貴重品を取って来るためにしては、あまりに長過ぎるのではないでしょうか」

「なぜ荷物を持って避難できていた玖瑠美が館内に戻ったのか」
実際、生存者の話を聞く限り、大抵が再入館してから10分前後で貴重品を回収して再び避難できている。
「オンワードの報告では、爆発の30分ほど前に妹たちから電話があったことについて、事実を淡々と書けばいいのに、会社の担当者は〈従業員が施設の中にいたことに驚くとともに〉などと、わざわざ主観を交えて書いた上で〈一切やることはなく速やかに施設の外に出るよう〉と指示したと主張しています。遺族からすれば、客観的な証拠もなく“死人に口なし”をいいことに、何か会社側は責任逃れのアピールをしているように受け取れてしまいます」
そう話す兄は、とにかく真実が知りたいと言う。
「会社側は妹たちが亡くなった経緯について、すでに調査は終了したと言うのです。これ以上、遺族が会社側に矛盾点を追及しても、失われた命は返ってこない。それでも、遺族として客観的な事実を基にした納得のいく説明を求めていきたい。でなければ妹は浮かばれないと思っています」(同)
同様に会社側へ爆発に巻き込まれた経緯の再調査を求めているのは、同じイオンモール内にあった雑貨店「ハビタ」に勤めており、亡くなった大竹玖瑠美(くるみ)さん(享年22)の遺族である。
親族の男性によれば、
「そもそも玖瑠美は、自分の荷物を持って外に避難できていた。その彼女が、なぜ安全の確認ができていない館内に戻ってしまったのか。遺族として疑問に思うのは当然ですよね。しかもハビタは当初、玖瑠美と共に亡くなった女性の同僚が“店に荷物を取りに戻りたい”と言っていたとごまかしていたんです」
「ハビタが無責任な態度に終始するなら……」
玖瑠美さんは一度避難した駐車場で、偶然会った親族に“会社から売上金を金庫に移すよう言われている”と伝えていたのだ。
「そのことを追及されたハビタは、最終的に金庫への入金を玖瑠美たちに頼んだことは認めたのに“イオンが入っていいと言うなら”と条件をつけていたことを、やたら強調するようになった。このような二転三転の説明を繰り返すハビタは、保身に走っているとしか思えず、誠実さをまったく感じません」(前出の親族の男性)
しかも玖瑠美さんの通夜に姿を現したハビタの社長と幹部は、その場で遺族に今後の補償について提案を行っていたというのである。
「その時点では葬儀も終わっておらず、何より真実が分かっていない段階では、遺族として補償の話なんてできません。まずは玖瑠美の最期に何があったのか。それをわれわれは知りたいので、ハビタ側の提案は蹴りました。遺族が納得できる説明を受けられて、初めて今後のことを考えられるようになる。私だけでなく、玖瑠美の母親やきょうだい、親族たちも、今後もハビタが無責任な態度に終始するなら、法廷で責任の有無や真実を明らかにするしかないと思っています」(同)
「刑事責任の追及は可能」
玖瑠美さんのみならず、今回の爆発で亡くなった人々の遺族は、刑事責任や民事上の補償を求めることができるのだろうか。
元東京地検特捜部副部長で弁護士の若狭勝氏は、
「いったんは避難したにもかかわらず、イオン側が再入館を認めて、テナント企業も後片付けなど業務上の指示をしていたとなれば、遺族の方々は双方に民事賠償の請求ができます。刑事的には業務上過失致死罪を問うことになる。地震直後は、爆発のみならず建物が崩壊するなどさまざまな不測の事態を予見して、イオンやテナント側は再入館しないよう徹底しなければならなかった。それを怠ったとなれば、刑事責任の追及は可能です」
今回のケースでは労災の申請も可能になると話すのは、社労士の北村庄吾氏だ。
「厚労省は地震で業務中に被災した場合、正社員、契約社員、パートといった雇用形態によらず労災の対象になるという考え方を示しています。最大のポイントは、亡くなった方々がなぜ館内に戻ったのかという点です。会社の業務が理由なら労災と認められる可能性は極めて高い。私物を取りに戻った場合でも、再入館が認められた事情まで考慮すれば、労災は否定できないと考えられます。また労災と企業側の補償は別問題で、再入館を認めた経緯や安全管理上の問題が明らかになれば、民事上の損害賠償を求めることができる可能性もあります」
いつまた起きるかもしれない震災で同様の犠牲者を出さないためにも、真相の解明を求める遺族の闘いは続く。
前編では、被害を免れた生存者による緊迫の証言を報じている。
「週刊新潮」2026年8月27日号 掲載
