暑い車内に放置、落下による衝撃だけじゃない…モバイルバッテリーを発火させてしまう「意外な行為」

■夏に事故が集中する理由は「熱」
スマートフォンの充電に欠かせないモバイルバッテリーなど、「リチウムイオン電池」製品がからむ事故の約85%が火災に発展しており、特に6〜8月に集中しているのをご存じでしょうか。

リチウムイオン電池は、一度発火すると「花火のように火柱が立ち、消火器でも消せない」という恐ろしい特性を持っています。この発火や爆発の原因は、電池の中に入っている揮発性の液体です。ただ、この液体は紙に染み込ませてあるので、電池を振っても音はしません。
電池内部の温度が上がると液体が蒸発しようと膨張するため、外側を覆っている金属筒やフィルムに大きな力がかかり、接着部分などから揮発性のガスが漏れ出します。このガスは燃えやすい引火性であり、さらに金属筒やフィルムが変形することで電池内部がショートするため、ほとんどの場合に発火・爆発をともなうのです。
■「発熱」「傷」「水没」に要注意
発煙や発火の原因は発熱と傷です。モバイルバッテリー自体を充電するとき、モバイルバッテリーで何かを充電するとき、どちらの場合も熱くなります。熱くなるのは想定内なので、通常の範囲内なら耐えられるように作られていますが、閉め切った車内や就寝中の布団の中、カバンの中で衣類に包まれた状態で充電した場合などは、想定された放熱ができず事故につながる場合があります。
また、落下や衝撃でできる傷に注意してください。モバイルファンやバッテリーのケースが壊れてしまった、電動アシスト自転車や電動工具、掃除機のバッテリーを落とした場合なども要注意です。ケースが壊れてしまった場合は、内部の電池に傷が入ったり変形して発火しやすくなります。ただちに使用を中断することをおすすめします。
また水没も落下と同じように使用中断をおすすめします。機器の内部に水が入るとリチウムイオン電池の保護回路が腐食して、安全機能が正しく動作しなくなる場合があります。つまり、異常な発熱、ケースの破損、焦げ臭さ、顕著な膨らみ、水没に注意しましょう。子どもが使用する場合は、通販などで購入できる「耐火・防爆ケース」を使うことをおすすめします。
■普通ゴミとして出すのは絶対NG
意外とあまり知られていない事故原因がもうひとつあります。それが普通ゴミとして廃棄したことによる爆発事故です。
実際に日本で起こった事故では、ゴミ回収車の火災事故、焼却施設での爆発事故がありました。どちらもモバイルバッテリーなどリチウムイオン電池が内蔵されている機器を普通ゴミとして廃棄したために起こった事故です。
ゴミ回収車は、圧力をかけてゴミを圧縮した瞬間に発火し、他のゴミに火が移り車両火災になりました。焼却施設では、普通ゴミとして捨てられたリチウムイオン電池が焼却炉内で爆発。焼却炉の修繕費に数千万〜数億円が必要になるほど破損しました(製品評価技術基盤機構調べ)。
このような事故により、全国で毎年100億円程度の被害が出ていると推定されています(国立研究開発法人国立環境研究所調べ)。
■正しい廃棄やリサイクルの手順
正しく廃棄をしなければ、数億円規模の損害を出すことになるリチウムイオン電池。そのため法に基づき、メーカーや輸入業者にはリチウムイオン電池そのものに加え、内蔵している製品の回収とリサイクルが義務付けられています。
それでは手間や時間がかかりすぎるという場合は、一般社団法人JBRCが行っている「小型充電式電池リサイクルBOX」を利用しましょう。家電量販店やホームセンター、自治体などに設置されている黄色い缶または箱が目印です。廃棄する際には必ず金属の端子をガムテープで塞ぎます。また乾電池やボタン型電池、破損した電池などは廃棄できません。条件や廃棄手順がホームページで説明されているので、そのルールに従ってください。
たとえば、リチウムイオン電池が内蔵されているモバイルファンや、破損・膨張したバッテリーは回収BOXが利用できません。この場合は、お住まいの自治体の案内に従ってください。多くの場合は役所に持ち込んだり、不燃ごみの処理センターに持ち込むように案内されています。

■飛行機・新幹線・長距離バスの規則
モバイルバッテリーの持ち込みに一番厳しいのは航空機です。以前からの規則通り、必ず手荷物として機内に持ち込みます。収納棚には入れず、座席ポケットなど目につく場所に置きましょう。ただし、機内ではモバイルバッテリー自体の充電、またモバイルバッテリーからスマホやパソコンへの充電も一切禁止です。手のひらに収まる製品なら問題ありませんが、ノートパソコンを何回も充電できるような大容量の製品はNGです。機内に持ち込めるバッテリーは2個までですが、カメラやビデオ、イヤフォンやデジタルガジェットの内蔵電池はカウントされません。詳細は、各エアラインに尋ねましょう。
新幹線を運行するJR各社や私鉄各社にはそれぞれ独自の規則がありますが、おおむね「荷棚に乗せるカバンの中にモバイルバッテリーを入れないように」とアナウンスされています。筆者の知る限りでは、今のところ持ち込みや使用の制限などは規定されていないようです。
深夜バスをはじめとした長距離バスは、必ず手荷物として車内に持ち込むように案内されています。モバイルバッテリーをバスのトランク預け荷物とするのは各社禁止事項になっていることが多いので注意してください。
■万が一発火した際の延焼防止策
それでも、モバイルバッテリーやリチウムイオン電池を使った製品、それらを入れたバッグから煙や火が出た場合は、まわりの人に危険を知らせると同時に、手から離して延焼しないよう何もない床や道に置きましょう。オゾンなどの有害ガスを含む場合があるので煙は吸わないよう要注意です。
デジタルカメラやビデオカメラの場合、本体だけでも守ろうとしてカセット式のバッテリーを取り外したりしないでください。また首にかけているモバイルファンなどはただちに外し、爆発の可能性があるのでいち早く機器から離れます。

もしも消火器や水があれば、それらを使って周囲に火が移らないようにしましょう。新幹線の場合は、デッキに消火器、約1m四方の「消火シート」、水汲み用のバケツが配備されています。これを火元に被せて延焼しないよう、爆発時にまわりに飛び散らないようにしてください。

リチウムイオン電池は、いったん火が付くと花火のように火柱が立ち、なかなか消すことができませんが落ち着きましょう。中のガスが燃え尽き、貯えていた電気がショートするなどして全部なくなるまで、延焼防止とまわりへの警告を行いながら待つことが大切です。もちろん、火災になりそうな場合は消防に通報してください。
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藤山 哲人(ふじやま・てつひと)
家電ライター
1967年、横浜生まれ。「家電おじさん」として、テレビやラジオのニュースやワイドショー、バラエティ番組に年50本以上に出演。そのかたわら雑誌やWeb、ラジオなどの取材を受け、自らも年間50本以上の記事を書く。生活家電から美容家電、電気代の節約からお得なテクニックなど、電気に詳しくなくてもたとえ話や比喩で笑いを入れつつ分かりやすく解説する。
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(家電ライター 藤山 哲人)
