「支援になる上にお金も増える」その“お得な被災地支援”は罠 国民生活センターが注意喚起

「1000円払ったら1200円戻ってきた。しかも被災地支援にもなる」
これが本当なら、ずいぶん都合のいい話です。
しかし、その“お得な支援”こそが罠でした。少額の利益を実際に受け取らせて信用させ、やがて10万円単位の送金へと誘導する詐欺の相談が、国民生活センターに寄せられています。
■ 被災地支援をうたうDMからコード決済詐欺へ
国民生活センターは8月17日、令和8年熊本地震の発生に便乗し、被災地支援をうたうSNSのダイレクトメッセージ(DM)から「○○Pay」などのコード決済を使った詐欺へ誘導する手口について注意を呼びかけました。
寄せられた相談では、50代女性のもとに、SNSでフォローしていた飲食店のアカウントからDMが届いたといいます。
内容は、指定されたWebサイトで商品を購入すると被災地への寄付になり、さらに購入額を上回る金額がコード決済で返金される、というものです。
DM内のリンクからLINEへ誘導され、友だち登録するとグループに参加。そこで指示に従い1000円分の商品をコード決済で購入したところ、実際に1200円分が返ってきたといいます。
2回目以降も支払った額より多い金額が返金され、さらにグループ内の別の参加者からも「返金を受けた」とするメッセージが入ったことから、女性は信用できると思ったそうです。
しかし、複数回のやり取りを経て10万円を支払ったところ、今度は返金されず。さらに「15万円を決済すれば10万円も返金する」と連絡があり、そこで不審に思った女性は追加の決済をせず、国民生活センターに相談したとのことです。

■ 編集部が注目した「4つの警戒ポイント」
おたくま経済新聞編集部では、かねてよりネット詐欺に関する調査を続けています。そうした視点から今回の手口を見ていくと、いくつか気になる点が浮かび上がります。
(1)「知っている店だから大丈夫」は禁物 SNSアカウントにも注意まず注目したいのが、SNSでフォローしていた飲食店のアカウントから、DMを通じて誘いがあったという点です。
SNSでは昨年以降、アカウントの乗っ取り被害が特に目立っています。もちろん、乗っ取り行為自体は以前から存在していました。しかし近ごろ、編集部の調査でも確認しているのが、乗っ取ったアカウントから既存のフォロワーへDMを送りつけ、そのまま詐欺へ誘導する手口です。
また、実在する企業などを装った偽アカウントを作り、そこからDMを送りつけて詐欺へ誘導するケースも確認しています。
「以前からフォローしている店だから」「知っている人のアカウントだから」「有名な会社だから」。そうした安心感そのものが、詐欺師にとっては格好の武器になります。見覚えのある名前やアイコン、企業名だからといって、それだけで信用してはいけません。
いつもと様子の違うDMが届いた場合には、普段とは異なる投稿が増えていないか、リプライやメンションを通じて不特定多数に同じような案内を送りつけていないかなど、まずはそのアカウント全体の動きを確認してください。
企業や店舗を名乗るアカウントの場合には、公式サイトから正規のSNSアカウントをたどるなどして、本物かどうかを別経路から確認することも重要です。
「知っている相手に見える」「有名な企業を名乗っている」というだけでは、もはや安全を保証する材料にはなりません。
(2)「支援なのにお金が増える」→うますぎる話は疑う次に明らかに不審なのが、「指定されたサイトで商品を購入すると、購入額を上回る金額がキャッシュバックされる」という点です。
今回はそもそも「被災地支援」が名目。支援のために支払ったはずのお金が、それ以上の額になって戻ってくる……誰がその差額を負担し、どのような仕組みで成り立っているのか。この時点で疑問を持つ必要があります。
「支援になる」「しかもお金が増えて戻ってくる」。そんな“うますぎる話”をSNSを通じて持ちかけられた場合には、まず疑ってかかるくらいでちょうどいいでしょう。
(3)まずは本当に儲けさせる 少額の“成功体験”で信用を獲得他にも注目したいのが、女性自身が実際に1000円を支払い、1200円を受け取っているという点です。「実際にお金が戻ってきた」という事実だけで、相手を信用してはいけません。こうした手口では、最初の少額の利益そのものが、相手の警戒心を解くために使われます。
そもそも、SNSやDMを通じて接触してきた相手と安易にお金をやり取りすべきではありません。もし最初の段階で応じてしまったとしても、「一度うまくいったから次も大丈夫」とは考えず、実際にお金が戻ってきた後こそ「本当にこれ、大丈夫?」と警戒するくらいの意識が必要です。
なお、この「序盤に少額の成功体験を与えて信用させる」という手口は、ネット副業などを入口とする、いわゆる「タスク詐欺」でも用いられています。
タスク詐欺では、「指定された動画を見る」「指定された商品を購入する」といった簡単な作業を指示し、最初は実際に少額の報酬を受け取らせます。そして「本当に稼げる」と信用させたところで、「さらに稼ぐには参加費が必要」などと持ちかけ、より大きな金額を要求していく。今回の手口にも、こうした流れと重なる部分があります。
(4)LINEグループの“成功報告”で信用を補強そして、さらに警戒度を一段上げるべきなのが、LINEグループへ誘導されたという点です。
これはSNS型投資詐欺などでも使われている手口で、グループ内にサクラを参加させ、「利益が出た」「儲かった」といったやり取りを見せることで、話の信ぴょう性を高める狙いがあります。
今回の相談でも、女性自身に実際に利益を得る“成功体験”をさせたうえで、さらに別の参加者から「返金を受けた」というメッセージまで入っています。
自分自身の“成功体験”に、周囲からの“成功報告”まで重ねてくる。自分だけでなく「他の人も同じように利益を得ている」と思わせることで、「本当に大丈夫なのかもしれない」とさらに信用させ、警戒心を薄れさせていくわけです。
グループ内にいる「他の参加者」の言葉を、第三者からの客観的な評価だと思わないこと。そこにいる人物が本当に利用者なのか、実際に利益を得ているのか、画面越しには確認できません。
ここまで今回の手口を振り返ると、いくつもの既存の詐欺手口が組み合わされていることが分かります。そこに加わっているのが、「大規模災害直後」という特殊な状況です。
今回、これらの手口が実際に意図して組み合わされていたのかまでは確認できません。しかし、詐欺の手口は一つの型にとどまらず、その時々の社会状況や話題に合わせ、既存の手法を組み合わせながら姿を変えていることは、これまでの取材からも見えています。
■ 「私は騙されない」という過信が一番危ない
大規模な災害が発生すると、その直後から数多くの善意による支援が立ち上がります。一方で、そうした状況は詐欺師にとっても格好の機会。いつも以上に警戒心を持つ必要があります。
そして何より警戒しなければならないのが、「私は騙されない」という過信です。
詐欺師は、人を騙すことを目的に手口を組み立てています。設定を変え、言葉を変え、その時々の社会情勢まで利用しながら、こちらの心に生まれたわずかな隙を狙ってきます。だからこそ、「自分は騙されない」と考えるのではなく、「自分もいつか騙されるかもしれない」と考えておくくらいの慎重さが必要です。
おたくま経済新聞編集部ではこれまで、ネット詐欺の被害に遭った方々からも、当時の心境を数多く聞いてきました。その中でたびたび耳にしたのが、「以前にも似た手口を見たことがあったので、大丈夫だと思った」「ニュースをよく見ていて、この詐欺についても事前に知っていた」といった言葉です。
手口を知識として知っていることと、自分自身がその状況に置かれたときに見抜けることは、必ずしも同じではありません。むしろ「知っている」「だから騙されない」という自信が、時として警戒心を緩めてしまうことすらあります。
少しでも不安を感じた場合は、消費者ホットライン「188」や警察への相談を。善意を急かすようなDMや、「今だけ」「すぐに」と判断を迫る誘いほど、いったん立ち止まり、送り主や仕組みを確認する。
災害時だからこそ、普段以上にそのひと手間が重要になります。
<参考・引用>
国民生活センター「【速報】被災地支援をうたう不審なSNS上のダイレクトメッセージ(DM)に注意!」
(宮崎美和子)
Publisher By おたくま経済新聞 | Edited By 宮崎美和子 | 記事元URL https://otakuma.net/archives/2026081806.html