希少本の輸送状況を追跡したらAmazonのAIトレーニング施設に到着していたことが判明

Amazonが大量の物理書籍を購入し、AIの学習データとして利用するために背表紙を切り落としてスキャンしていることが、テクノロジーメディアの404 Mediaによる調査で明らかになりました。404 Mediaが大量注文された希少本の1冊に追跡装置を仕込んだところ、最終的にAmazonが書籍をデジタル化しているラスベガスの施設へ到着したとのことです。
We Tracked a Shipment of Rare Books. It Ended at an Amazon AI Training Facility
AI企業はモデルの性能向上に必要な学習データを確保するため、大量のテキストを収集しています。インターネット上の文章にはすでにAI生成コンテンツが大量に含まれているため、AIが生成したデータを学習してしまうことを避けられる情報源として、AI普及以前に出版された紙の本が注目されています。
404 Mediaによると、2026年7月にオンライン古書市場のBiblioを通じてある古書販売業者のもとに約1000冊という非常に大規模な注文が入ったとのこと。注文された本の中には流通している部数が少ない希少本も含まれていたため、404 Mediaは販売業者の協力を得て、そのうち1冊にAppleのAirTagを仕込み、購入者がどこへ本を運ぶのか追跡しました。
AirTagを仕込んだ本はアメリカ国内を移動した末、ネバダ州ラスベガスにあるAmazonの倉庫へ到着しました。404 Mediaによると、この施設では「VGT3」と呼ばれるAmazonのチームが大量の印刷された本を受け取り、素早くスキャンできるよう背表紙を切り落としてページをばらばらにした上でデジタル化しているとのこと。裁断された本は元の状態に戻せないため、この工程で物理書籍は原型を失うことになります。

紙の本を大量に購入して裁断・デジタル化する手法はAmazonだけが採用しているわけではありません。AnthropicもClaudeの学習データを確保するため数百万冊の紙の本を購入し、背表紙を切断してスキャンした後に原本を廃棄していたことが明らかになっており、希少本まで失われる可能性があるとして古書業界から懸念が出ています。
AnthropicがAI学習のために数百万冊の紙の本を裁断してデジタル化しまくるため希少本が失われると懸念の声、イーロン・マスクは「SpaceXAIはそんなことしない」とアピール - GIGAZINE

404 Mediaは2026年7月にも、AI企業向けの書籍データ調達をうたっていたISBNデータベース企業のISBNdbについて報じています。AI企業にとって紙の本はAI生成文章が混入していないデータ源として価値があり、オンラインでは入手できない書籍を探し出して購入し、デジタル化しようとする需要が生まれているとされています。
Amazonの広報担当者は404 Mediaに対し、「Amazonは顧客が利用する製品やサービスの開発・改善に役立てるため、商業的な経路を通じて書籍を購入しています」と説明しています。
なお、404 Mediaは追跡した書籍の具体的なタイトルを明らかにしていませんが、「希少」とは流通している冊数が少ないという意味で、発行部数がもともと少ない本や話者の少ない外国語で書かれた本などが含まれていると説明しています。初版本など一般的な古書市場で高値が付く本とは限らないものの、古書販売業者は「需要がほとんどない本であっても歴史的な価値まで失われるわけではない」と指摘しています。
