NEC軽井沢72ゴルフトーナメントで優勝した安田祐香(左)と大西翔太コーチ【写真:柳田通斉】

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NEC軽井沢72ゴルフ最終日

 国内女子ゴルフツアー・NEC軽井沢72ゴルフ最終日が16日、長野・軽井沢72ゴルフ北C(6590ヤード、パー72)で行われた。首位で出た安田祐香(NEC)が6バーディー、2ボギーの68で回り、通算23アンダーとし、2位に7打差をつける圧勝を飾った。自身初の完全優勝、初のホステスV、ツアー通算3勝目。計26バーディーで、アニカ・ソレンスタムが保持していた3日間大会の最多バーディー優勝(24)を23年ぶりに更新する快挙も達成した。だが、会見では、ラウンド中は1度もリーディングボードを見ず、ギャラリーの歓声で優勝したことを知ったと明かした。

 20センチのウィニングパットを沈めると、キャディーを務めた姉の美祐さんが抱き着いてきた。ギャラリーからは大きな拍手と「おめでとう」の祝福。優勝したことに気づいた安田は目を潤ませながら、心の中でこうつぶやいていた。

「お姉ちゃん、長いな〜。いつ離してくれるんやろ(笑)」

 初日61、第2日64。2日間のツアー最少記録を更新する19アンダーをマークした。2位に7打差。大量リードでスタートしながら、緊張から1番パー4の第1打を右にミスしてボギー発進。5番パー4では3パットでスコアを落とした。この時点で2位との差は4打に縮まっていた。だが、冷静さは失っていなかった。

「ボギーを打つと縮まるので、安全にグリーンセンターを狙う感じにしていました。バーディーを狙えるホールはありましたし、前半中にはイーブンに戻したいと思っていました」

 迎えた8番パー3。追ってくる同組の菅楓華が第1打をピンそばにつけた後、ピン右5メートルに1オン。そこからバーディーパットを真ん中から沈め、姉とグータッチを交わした。

「第1打はミスでしたが、意外とバーディーチャンスだったので決められて良かったです。それ以降は自信をもってやれました」

 言葉通り、ここから前日までの勢いが復活。11番パー4まで鮮やかに4連続バーディーとし、13番パー5、16番パー5でもスコアを伸ばした。

コーチも絶賛「これが祐香ちゃんの強さ。素晴らしい人柄です」

 ボードを見ない決断は、大西翔太コーチとの約束でもあった。コーチは優勝を見届けた後、感心しきりだった。

「一打に集中するための約束でしたが、キャディーのお姉さんにも確認しなかったようです。決められたことを徹底できる。これが祐香ちゃんの強さであり、本当に素直。素晴らしい人柄です」

 古江彩佳、西村優菜、吉田優利らと同じ2000年度生まれの「プラチナ世代」。アマチュア時代の実績は、その中でもトップだった。19年のプロテストには一発合格。だが、ルーキーイヤーの20年シーズン途中に頸椎捻挫を発症するなどケガに苦しみ続けた。その間にライバルたちは優勝を重ね、米女子ツアーを主戦場にするようになった。それでも、「焦りはあまりなかった」という。

「『ケガは仕方ない』と思って過ごしていましたので」

 転機となったのは、先輩プロの青木瀬令奈とコンビを組んでいる大西コーチに師事したことだった。

「優勝するために何が必要ですか」

 安田から相談を持ち掛けられ、大西コーチは「まずは楽しくプレーすることだね。とりあえず、(青木と)一緒に練習しよう」と返し、ここからワンチームに。その後、年下プロの中村心もチームに加わった。

 大西コーチが最も大切にしているのは「ティーチングではなく、コーチングに撤すること」だという。

「一方的に『こうしなさい』と押し付けると、ゴルフがつまらなくなってしまう。それだとせっかくの素晴らしい技術が発揮できない。祐香ちゃんが悩んでいる課題に対して一緒に悩み、一緒に解決していく。毎週がトライ&エラーの繰り返しです」

 安田が抱えていた技術的な課題の一つが、この日の1番でも出た「右まっすぐに飛ぶ球」だった。そこで大西コーチは、「左側(インサイド)へ振り抜く意識」をアドバイスしていた。

「最近では拳1、2個分インサイドへ振り抜けるようになり、自然とフェースローテーションが入ることで右へのミスが減ってきました。結果、ヘッドスピードが上がり、スイングアークも大きくなってきました」

増えた笑顔「祐香ちゃんは笑顔の時、良いプレーができる」

 大西コーチいわく、「傾斜や風があっても合わせてこられる縦距離の感性は天才的。左右に多少ずれても距離が合ってくるから、それが全部チャンスにつながるんです」。今大会ではそこにパッティングがかみ合い、着実にスコアを伸ばした。

「何よりも笑顔が増えてきたことが一番うれしいです。祐香ちゃんは笑顔の時、良いプレーができるので」

 ホステスプロとして最大の重圧がかかる大会で、安田は最高の結果を残した。23アンダーは08年、同じNEC所属の原江里菜が記録した21アンダーを超える大会新だ。

「私にとって一番緊張する大会で勝てたことがうれしいです。今年は複数回優勝を目標にしています。まだまだチャンスはあると思うので、また頑張りたいです」

 大西コーチに師事してから、24年のミヤギテレビダンロップ女子オープンで初優勝を飾り、25年の富士フイルム・スタジオアリス女子オープンで2勝目。いずれも雨の中で激闘を制した。だが、この日は晴天。安田はそれもうれしかったという。

「青空の下で優勝の写真を撮ってもらえて良かったです」

 苦しい時期を乗り越え、サポートを受けながら着実に前進してきた25歳。同期のライバルたちのように、現段階で海を渡ってプレーするつもりはないが、「(海外)メジャーに出られる機会があったら、挑戦してみたいです」と言った。このまま国内ツアーでの活躍を続ければ、世界ランキングでその資格を得られる。「天才・安田祐香」が世界を驚かすのはこれからだ。

(THE ANSWER編集部・柳田 通斉 / Michinari Yanagida)