パリッコ 静岡・熱海「東海ひもの」の「さばのひもの」

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家族旅行で行った熱海。家族との時間のほかにひとりで過ごせる自由時間も取ることができた。商店街を歩いていて偶然入った立ち飲み屋は噂に聞いていたお店だった。勝手にもっと今風な店を想像していたけれど、かなり歴史のありそうな佇まいだった。

昨年の夏に家族で行った熱海旅行がとても良くて、今年もまた熱海に行ってきてしまった。

昨年は1泊だったが、今年は思いきって2泊に増やしたので、行程にも余裕があった。もちろんメインイベントは、家族で見物する花火大会や、宿の温泉、海遊びなど。だけどその他に、ひとりで過ごせる自由時間も取れて、いくつかの飲み屋にふらりと寄れたのは、酒飲みとして嬉しいポイントだった。

JR熱海駅の改札を出ると、右手にふたつのアーケード商店街の入り口が見える。どちらもとてもにぎわっており、名物の干物や、温泉まんじゅうや、みやげもの、それから、海鮮系を中心とした飲食店などがずらりと並んでいる。歩いているだけで楽しいし、そこを抜けると、眼下にキラキラと相模湾が見えだすというシチュエーションもたまらない。

そのうちのひとつ「平和通り商店街」を抜けてもう少しだけ歩いたところに「東海ひもの」という店があり、店頭の一角が立ち飲みスペースになっていて、多くの人が飲んでいた。そういえば、熱海には干物をつまみに飲める立ち飲みがあるという噂を聞いていたが、ここがそうか。勝手にもっと今風な店を想像していたけれど、かなり歴史のありそうな佇まいだ。

店頭にはこの時期らしく、赤々とした梅干しが干されており、店内の棚にはもちろん干物たち、それから自家製のらっきょうの瓶が、整然とものすごい量並んでいる。オープンな店頭を海風が吹き抜け、ひさしの先には真夏の陽射し。こんなシチュエーションで飲めるなんて、それだけでわくわくものだ。L字カウンターのすみに空席がある。少しだけ寄らせてもらうことにしよう。

メニューのメインはもちろん干物で、ラインナップは以下。

「鯵のひもの(真鶴)」(税込1,000円)
「さばのひもの(多賀)(塩・みりん)」(1,200円)
「まるまる鯵のひもの(五島列島)」(2,300円)
「つぼ鯛のひもの(宮城)」(2,300円)
「いかの姿焼き(青森)」(3,300円)

特に希少な名物は下3つらしいが、ふらりとひとり飲みに寄った店のつまみとしては大げさすぎるかもしれない。ここはご近所産の鯵かな、と思ったら今日は品切れらしく、さば塩を選ぶ。当然「缶ビール」(500円)とともに。

干物の他に少しあるサイド的なおつまみは、全品に「ばぁばの手作り」の表記。「『鳥取』らっきょう」は甘酢、塩、しょうゆ昆布の3種で、それぞれ500円。「塩辛」(500円)、「梅干(赤・白)」(各200円)、「カラスミ(長崎)」(1,600円)と続く。大好物の塩らっきょうをもらおう。

すぐによく冷えた「アサヒスーパードライ」と真空断熱グラスが届き、トクトクと注いでぐいっ。気分最高。これぞ日本が誇るリゾートと、極上の酒のペアリングだ。

小鉢にたっぷりのらっきょうをひとつつまんでみると、しゃきしゃきと力強い食感で、しっかりしょっぱい。噛んでいると旨味の余韻がどんどん増幅してきて、そこへ流し込むビールがたまらない。

そうこうしていると、目の前の焼き台で次々焼かれる干物の、自分のぶんが焼き上がったようだ。さばの半身がふたつに切られて皿にのり、まだじゅわじゅわと音がしている。こんがりと焼かれた肉厚な身にかぶりつくと、ジューシーな旨味が爆発! 焼きたての自家製干物、なんて贅沢な料理なんだ。

ひとりぶんにしてはしっかりと、それこそランチのおかずになるくらい量があるから、ビールは早々になくなってしまい、次は焼酎「麦(二階堂)」のソーダ割りにしてみよう。合わせて思いついた天才的なアイデアがひとつあり、それは、ばぁばの手作り梅干をそこに加え、梅入りチューハイしてやろうというもの。

というわけでその2品を注文すると、お店のお姉さんが、「梅は別皿にしますか? それともお酒に入れますか?」と。天才的でもなんでもなく、みんなやってる飲みかただったというわけで、なんとも恥ずかしい。ただその梅が、心地よい酸っぱさと果肉感で、とてもうまい。干物の優しくてしみじみとした味わいとも抜群に合う。勝手に感じていた恥ずかしさがふっとんでいく。

並んで酒を飲むお客さんたちに、観光地特有の陽気さがあふれているのもいい。半屋外の店内にはテーブル席もひとつあったから、ここに友達数人と来て飲むのも楽しいだろうな。その際は、遠慮なく高級干物やからすみなどを頼んでみたい。

<了>

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次回第54回は2026年8月27日(木)17時公開予定です。

Credit:
文・イラスト=パリッコ