「休日の寝だめ」は悪ではなかった…健康になる人と不調になる人を分ける”1時間”の差
休日になると布団から出られず、昼過ぎまで寝てしまう……。いわゆる「寝だめ」は、これまで体に悪いと言われてきた。しかし、中国・広西医科大学の研究によると、週末に1〜2時間の「寝だめ」をする人は、抑うつ症状が少ない傾向にあるという。産業医で、著書に『科学的に認められた 疲労回復大全』がある岩見謙太朗氏が、「寝だめ」のメリットを解説する。
「休日の寝だめ」は悪いことではない
平日は仕事や勉強で忙しく、「寝たいのに寝られない」「つい睡眠を削ってしまう」という人も多いでしょう。そんな生活が続くと、週末になると布団から出られず、昼過ぎまで寝てしまう、いわゆる「寝だめ」をしてしまいがちです。
では、この寝だめは体や心にとって良いのでしょうか。それとも、体内時計を乱す原因になるのでしょうか。
結論から言うと、寝だめそのものは悪ではありません。ただし、量とやり方を間違えると、逆に不調の原因になります。近年の研究では、適度な寝だめにはプラスの効果があることが示されています。
2025年に米国で7795人を対象に行われた研究では、週末に1〜2時間だけ睡眠時間を延ばした人は、そうでない人に比べて抑うつ症状の割合が低いことがわかりました。つまり、「週末に少しだけ寝足す」ことで、心の落ち込みやストレス反応が和らぐのです。
また、日本人を対象にした研究でも、平日に6時間以上眠れている人が、週末に1時間だけ寝だめをすると、死亡リスクが低下することが報告されています(ここでいう死亡リスクとは、心血管病やがんを含む「全死亡リスク」を指します)。
つまり、平日にある程度眠れている人が週末に少しだけ多く眠る習慣を持っている方が、健康状態が良好に保たれやすいということです。
週末の寝だめで睡眠不足を完全に取り戻せるわけではありませんが、少し余分に眠ることが長期的な健康につながる可能性があります。
寝だめが逆効果になるケース
一方で、寝だめが逆効果になるケースもあります。
米国で約1万6000人を対象に行われた調査では、平日と休日で睡眠時間が2時間以上ずれている人ほど、うつ・不安症状、肥満、高血圧、糖尿病の割合が高くなることが示されています。これは、平日と休日で生活リズムがずれることで、体内時計が乱れてしまうためです。
また、平日は4〜5時間睡眠、週末にたっぷり寝れば取り戻せるという考え方も間違っています。
睡眠不足が長く続いている場合、週末だけ長く寝ても、脳や体の機能は十分に回復しません。むしろ、平日の睡眠が極端に短い人が、週末に寝だめをしている場合、体調を崩しやすい傾向も指摘されています。
さらに、日曜に昼過ぎまで寝てしまうと、夜に眠れず、月曜の朝に強い眠気に襲われます。いわゆる「ブルーマンデー」の背景には、週末の寝だめによる生活リズムの乱れが関係しています。
寝だめを上手に使う2つのポイント
では、寝だめを上手に使うにはどうすればよいのでしょうか。ポイントは、次の2つです。
(1) 睡眠時間の超過は1〜2時間までにする
最も健康的なメリットが確認されているのは、平日より1〜2時間だけ多く眠ることです。これ以上長く寝るとリズムが乱れやすく、逆効果になる可能性が高まるため、眠りすぎないようにしましょう。
(2) 起床時刻をキープする
寝だめによって起床が3〜5時間後ろ倒しになると、かえって夜に眠れなくなる可能性が高まります。長く眠りたいなら、起きる時間を遅らせるのではなく、寝る時間を早める方向で調整する方が安全です。
「生活習慣を大きく変えなくても疲労回復ができる」という点で、寝だめは効率のよい方法のひとつといえます。前述の2つのポイントを守れば、週末に1〜2時間ほど長く眠る習慣を続けても、基本的には問題ありません。
実際に、体調不良を感じていた方が、週末に適度な寝だめを取り入れることで、平日のだるさや起床時のつらさが軽減したケースや、「仕事の能率が上がった気がする」とおっしゃる患者さんもいらっしゃいます。
ただし、寝だめはあくまで補助的な手段です。本来、疲労は日々の安定した睡眠によって回復していくものです。週末にまとめて眠ることで一時的に楽になることはあっても、それだけで根本的に改善するわけではありません。
そのため、寝だめに頼るだけでなく、平日の睡眠を整える意識も重要です。たとえば、日中に20〜30分ほどの短い昼寝を取り入れる、週に1〜2回でも7時間以上の睡眠を確保するなど、無理のない範囲で工夫してみましょう。
そのうえで足りない分を週末の寝だめで補う、というバランスが現実的でおすすめです。
もっとも、こうした調整以前に「そもそも夜に眠れない」という人も少なくないでしょう。実は、寝つきをよくするつもりでやっている行動のなかにこそ、睡眠の質を下げているものがあります。詳しくは後編記事〈「布団の中で目を閉じて待つ」のは逆効果…眠れない夜にやってはいけない"3つのNG行動"〉でお伝えします。
【参考文献】
Zhong BL, Xiang YT. Challenges to and Recent Research on the Mental Health of Older Adults in China During the COVID-19 Pandemic. J Geriatr Psychiatry Neurol. 2022 Mar;35(2):179-181.
