亡くなった彼氏が脳味噌だけになって戻ってきた。触れられず、満足に意思疎通ができない彼氏を生前同様に愛せるか? 「愛」について問いかけるSF短編集【書評】

【漫画】本編を読む
『死んだ彼氏の脳味噌の話』(Ququ/KADOKAWA)というタイトルだけを見ると身構えてしまうかもしれない。しかしその中身は、「愛」というものの本質を問いかけてくる8つの短編がまとめられた作品集なのである。各エピソードで描かれる舞台は、発達したテクノロジーから生まれた画期的に思えるサービスが日常に溶け込んでいる、今より少しだけ未来の世界だ。
表題作の「死んだ彼氏の脳味噌の話」は、ある日、主人公・マリコのもとに「ブレブレブレイン」という医療ベンチャー企業の男性社員が訪れてくる。彼が来た目的は、先日事故で亡くなった彼氏の「脳味噌」を届けることだった。透明な瓶に入れられた脳味噌を見たマリコは驚くが、それが彼氏のものであることを確信し、それから脳味噌との共同生活が始まる。「彼」は「うれしい」と「かなしい」の2つの感情しか表すことができないのだが、それでもマリコは幸せを感じていた。しかし時間とともにその気持ちが少しずつ変わっていく――。
「脳味噌」や「ロボット」といったフィルターを通して、少しの皮肉を交えながら「本当の愛」を伝えてくる本作は、現代のおとぎ話である。
文=坪谷佳保
