お盆に義実家を訪れる際、義父母と円満に過ごすにはどうすればいいのか。マナーコンサルタントの西出ひろ子さんは「その場だけ『いい嫁・いい婿』になりきるくらいの気持ちでいい。100円ショップでも買えるあるアイテムを家族全員分用意し、持参してほしい。少しの心遣いで、義父母の見る目は変わる」という――。
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■義実家に行くのは「役目」と割り切る

お盆の帰省シーズン直前になると、私のもとには「義理の実家に行くのが憂鬱だ」というご相談が少なからず寄せられます。そうした方には、「無理はしないほうがいいですよね」とお伝えした上で、それでも、どうしても行かなければならない、という方には、「それであれば、これはお役目だと思って割り切ってみましょうか」とお伝えしています。

少し乱暴に聞こえるかもしれませんが、イメージとしては、ドラマのワンシーンを楽しむような感覚で、「義実家に行くのが大好きな『いいお嫁さん』『いいお婿さん』になりきること」。いつもと違う自分を演じてみる感覚で。そう考えると、憂うつだった時間が少し軽くなるものです。

せっかくの時間です。ぜひ「愉しもう!」と言う気持ちでまいりましょう。

そもそもマナーとは、相手の立場に立ち、相手が喜ぶことを先回りして行うことです。義理のご両親やパートナーが喜んでくださる。それだけで、マナーとしては十分に価値のある行いです。その心遣いは、たとえご本人たちから直接返ってこなくても、必ずどこか別のところからご褒美となって戻ってきます。お互いが気持ちよくなる「ウィンウィン」を生み出すこと。これこそがマナーの本質なのです。

ただし、決して無理はしないでくださいね。行くことで体調を崩したり、精神的に追い詰められてしまっては本末転倒です。相手の立場に立つといったとき、その「相手」には自分自身も含まれています。自分をいたわる気持ちも忘れずにご自身のことも大切になってください。

ここが最も大事な点ですが、義実家との関係で本当に問われているのは、実はパートナーとの関係性です。パートナーが自分の実家にきちんと事情を伝えてくれていれば、一年帰省しなかったくらいで関係がこじれることはまずありません。義実家の問題の根っこは、突き詰めれば夫婦関係にあります。日頃から良い関係を築いておくことが、遠回りのようでいて一番の近道なのです。

■帰省にエプロンを持っていくべき理由

では、実際に帰省したときにどう振る舞えば「感じがいい」と思っていただけるのか。まず準備の段階でおすすめしたいのが、エプロンを一枚持っていくことです。

写真=iStock.com/Febriana Suwarningsih
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これは「お客様として伺うのではなく、何か自分にできるお手伝いをしたい」という気持ちの表れです。マナーとは、思いやりの心を形にして表現するもの。その心を目に見える形にしたのが、エプロンなのです。

とはいえ、着けるかどうかは相手次第です。「お義母さん、何かお手伝いすることはありますか」とひと声かけて、「じゃあお皿を洗って」と言われたら、そこで持参したエプロンを取り出せばいい。逆に「これを着てね」と用意してくださったら、「ありがとうございます」と素直にそちらをお借りすればいいのです。準備はしておくけれど、押しつけない。この加減が大切です。

夫が妻の実家に帰省する場合も、心遣いの本質は変わりません。エプロンとまではいかずとも、電球の交換や家具の移動、荷物の整理といった力仕事をさっと引き受けられる、動きやすい服装で伺いましょう。さらに大切なのが「話題」です。妻から事前にご両親の近況を聞いておき、「お義父さん、園芸を始められたそうですね」と夫のほうから話しかける。それだけでご両親はとても喜んでくださいます。

そして、明るい表情と丁寧な挨拶。これは基本ですが、ひとつ工夫を加えたいのが、パートナーを立てるひと言です。夫の実家であれば、「いつも○○さんに本当によくしていただいて、ありがとうございます」と、息子である夫のことをご両親にお礼として伝えるのです。ご両親は、いくつになってもわが子を褒められると嬉しいもの。

すると相手は謙遜して「いやいや、うちの息子なんて」とおっしゃるかもしれません。そこですかさず「そんなことありません。お義父様お義母様のおかげで本当に優しい人で、私は幸せです」と返す。それだけで、ご両親はどれほど安心なさることでしょう。パートナー本人も、決して悪い気はしないはずです。

■大変な子連れ帰省を乗り切る方法

お子さん連れの場合は、事前の「リハーサル」が効きます。思春期のお子さんが挨拶をしぶることもありますが、その場で「ほら、挨拶しなさい」と叱るのは考えものです。行く前に「こうするとおじいちゃんおばあちゃんが喜ぶから、やってみようか」と、説教ではなく遊び感覚で練習しておくと良いでしょう。

もし本番でご機嫌ななめでも、「長旅で疲れてしまったみたいで。この子も会うのをすごく楽しみにしていたんですよ」と、親がさりげなくフォローしてあげればいいのです。

服装に絶対の正解はありません。大切なのは、家族全員でトーンを合わせることと、その家のご両親が何を好むかを知っておくことです。ラフな格好を歓迎する家もあれば、きちんとした装いを好む家もあります。相手の実家を一番よく知っているのはパートナーですから、事前に確認しておきましょう。

迷ったら、薄手のジャケットを一枚持っていくと安心です。急なご近所付き合いなど、何が起きるかわかりません。羽織るものが一枚あれば、どんな場面にも対応できます。

意外と見落としがちなのが足元です。特に女性は、素足は控えましょう。夏の帰省はお盆と重なり、ご先祖様をお迎えする時期でもあります。だからこそ足元はきちんと整える。お子さんは靴下を嫌がるかもしれませんが、せめて義実家に入るまでは履いてもらいましょう。年末年始に年神様をお迎えするのと同じ発想で、ある程度きちんとした装いを意識するのです。

■「数珠」で義父母の見る目は変わる

実家に仏壇のあるお宅では、玄関でご挨拶をして家に上がり、あらためてご挨拶をしたあとに「お仏壇にお参りさせていただいてもよろしいですか」とひと言添えて、手を合わせる。これはお盆に限らず、伺ったときと帰るときの両方で行いたい所作です。

仏壇まわりのマナーの出来は、「感じがいい」「育ちが良い」という評価に直結します。そこで、義実家に好かれる人がさりげなく実践している「仏壇マナー」を、三つに絞ってお伝えします。

一つ目は、数珠を準備しておくことです。相手のお宅が仏教のご家庭であれば、これはぜひおすすめしたい心遣いです。

写真=iStock.com/shironagasukujira
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ご自身のぶんはもちろん、パートナーのぶん、そしてお子さんがいらっしゃればお子さんのぶんまで用意して、その場でそっと手渡してあげる。ふだん子どもが数珠を持つ機会はそうそうありません。その姿を義理のご両親がご覧になったとき、「ちゃんとしたお嫁さんだこと」と感じてくださるはずです。

数珠は値段ではありません。今は百円ショップでも手に入りますし、ネットでも手ごろに買えます。大切なのは、準備しておこうというその気持ちなのです。

■線香は「相手の宗派」に合わせる

二つ目は、お参りそのものの所作です。まず、火を扱う場ですから、お子さんがいる場合はくれぐれも気をつけてください。

お線香に火をつけたら、息を吹きかけて消してはいけません。手であおいで消すのが作法です。お子さんが「ふうっ」と吹き消さないよう、あらかじめ伝えておきましょう。「おりん」も、遊び道具ではありません。お子さんが鳴らして遊ばないよう、目を配ってください。

一般家庭の仏壇(写真右上)(写真=MIKI Yoshihito/CC-BY-2.0/Wikimedia Commons)

お参りの作法で、もう一点意識していただきたいのが宗派です。お線香の本数や焼香の作法は、宗派や地域、家によって異なります。ここで意識していただきたいのは、「自分の宗派」ではなく「相手の宗派」に合わせるということです。

たとえば、ご自身の実家が曹洞宗で、義実家が真言宗だったとします。このとき、自分の家の作法を通すのではなく、相手のお宅の作法に合わせるのが礼儀です。

これまで宗派を問わずさまざまな僧侶とお話ししてまいりましたが、皆さん共通しておっしゃるのは、「型よりもご先祖様を敬う気持ちが何より大切だ」ということ。ただ現実には、作法にこだわる方も確かにいらっしゃいます。だからこそ、気持ちを土台にしたうえで、その家の宗派に応じた作法を事前に確認しておくと安心です。宗派はパートナーに聞けばわかります。

■やってはいけない仏壇まわりのNG行為

三つ目は、仏壇まわりで余計なことをしないことです。いくら嫁の立場だからといって、仏壇のあちこちを勝手に触るのは控えましょう。お参りとお供えにとどめておくのが無難です。もちろん「ちょっと拭いておいて」と言われたら喜んでお手伝いすればいいのですが、頼まれてもいないのに自分の判断であれこれ手を出すのは避けたほうがいい。

お供えをするときも同じです。「こちらをお仏壇にお供えさせていただいてもよろしいですか」と、義理のご両親にひと言うかがってから。この「ひと言」があるかないかで、印象は大きく変わります。

ついでに申し上げると、仏壇の前では派手なアクセサリーは控えめに。ジャラジャラと音が鳴ると、数珠と当たって耳ざわりなこともあります。座布団の上に立たないといった昔ながらの所作も、お子さんに前もって伝えておきたいものです。

■なぜお供え物と手土産は別々に用意するのか

お供え物についても補足させてください。理想を言えば、仏壇へのお供え物と、ご両親へお渡しする手土産は、別々に用意したいところです。

写真=iStock.com/hayatikayhan
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お供え物には「御供」ののし紙をかけ、日持ちのするものを選ぶ。一方、ご両親へ直接お渡しするものは、冷蔵・冷凍が必要な傷みやすいものや、すぐに使える身近な品でもかまいません。かさばる缶ビールなどは「お供え物としてお送りいたします」と事前に配送しておく手もあります。これなら「お盆に伺います」というご連絡も兼ねられて一石二鳥です。

こうした心遣いは、普段からの積み重ねがものを言います。出張先で「これをお義父さんお義母さんに」と何かを送っておく。日頃からそうしていれば、久しぶりに会っても自然に温かい空気が流れます。お盆と暮れにしか連絡しない間柄とは、おのずと差が出てくるのです。

■大切なのは型より「敬う気持ち」

最後に、あらためてお伝えしたいことがあります。ここまで数珠や作法についてお話ししてきましたが、型だけをなぞっても意味がありません。何より大切なのは、ご先祖様を敬う気持ちです。

パートナーの家族には、直接の血のつながりも、顔を合わせたこともないご先祖様がいらっしゃいます。それでも、その方々がいなければ、あなたが愛したパートナーはこの世に存在しませんでした。代々続いてきた命への感謝を、心から持つこと。その気持ちがあれば、多少作法が不慣れでも必ず伝わります。

そしてもう一つ、可愛いお嫁さん・お婿さんだと思っていただく秘訣は、知ったかぶりをせず、何でも素直に尋ねることです。ゴミの捨て方一つとっても家庭によって違います。「これはどこに捨てたらいいですか」とうかがいを立てる。勝手にやってしまうより、そのほうがずっと好感を持たれます。気づいたことを、気持ちよく尋ねる。それが、良い関係を育てていくのです。

マナーは一方通行では成り立たず、お互いが相手を思いやることで初めて機能します。ご先祖様への感謝と、目の前の家族への心遣い。それさえあれば、義実家での時間は、きっとあなたにとっても温かいものになるはずです。

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西出 ひろ子(にしで・ひろこ)
マナーコンサルタント
ヒロコマナーグループ代表。ウイズ株式会社代表取締役会長。HIROKO ROSE株式会社代表取締役社長。一般社団法人マナー&プロトコル・日本伝統文化普及協会代表理事。大妻女子大学卒業後、国会議員などの秘書職を経てマナー講師として独立。31歳でマナーの本場・英国に単身渡英し、現地にてオックスフォード大学大学院遺伝子学研究者(当時)と起業。帰国後、大企業300社以上のマナー・人財育成コンサルティング、延べ10万人以上の人材育成を行う。近年は皇室の方々の素晴らしいマナーを解説するなどマナー解説者としてテレビ番組などのメディアでも活躍中。著書・監修書は15万部のベストセラー『改訂新版 入社1年目ビジネスマナーの教科書』『入社1年目ビジネス文書の教科書』(共にプレジデント社)、『突然「失礼クリエイターと呼ばれて』(きなこ出版)。近著に『マナーのカリスマが大切にしている 私スタイルの暮らし方』(主婦と生活社)など多数。
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マナーコンサルタント 西出 ひろ子)