一見すると何かの金属部品に見えるこの物体。実は、アメリカのSpaceX(スペースX)社が開発中の再使用型ロケット「Starship(スターシップ)」の1段目にあたる大型ロケット「Super Heavy(スーパーヘビー)」ブースターの縮小模型です。


NASA(アメリカ航空宇宙局)は2026年7月31日付の記事で、同局のエイムズ研究センターで行われたスーパーヘビーブースターの風洞試験の様子を紹介しています。


【▲ NASAエイムズ研究センターの風洞試験に使用された大型ロケット「スーパーヘビー」の模型(Credit: NASA)】

新型スーパーヘビーの風洞試験をNASA施設で実施

スターシップは1段目のスーパーヘビーと、2段目の大型宇宙船「スターシップ」からなる全長124mの再使用型ロケットです。打ち上げシステムとしてもスターシップの名称で呼ばれています。


最新型となるスーパーヘビーブースターのバージョン3(V3)では、33基搭載されているエンジンの基部を覆うカバーが一体型のヒートシールドに置き換えられています。大気圏内での姿勢制御に用いるグリッドフィンは4枚から3枚に削減された一方で、1枚あたりのサイズは1.5倍に大型化。スターシップ宇宙船との接続部も使い捨て型から一体型に変更されるなど、再使用性を高めるための刷新が施されています。


スターシップ宇宙船は地球上からの有人飛行や無人飛行に使用されるだけでなく、アメリカ主導の有人月探査計画「Artemis(アルテミス)」の有人月着陸船「HLS(Human Landing System)」のひとつとしても採用されています。そのため、NASAとSpaceXの技術者は、設計変更が施されたスーパーヘビーブースターへ大気圏再突入時に加わる空力(空気の流れが機体に及ぼす力)を改めて把握する必要がありました。


冒頭の画像に写っているのは、実物の1.2%のサイズで作成されたスーパーヘビーブースターの模型です。2025年後半にこの模型を使用して、エイムズ研究センターにあるマッハ0.2〜1.4の遷音速風洞と、マッハ1.55〜2.5の超音速風洞で測定が行われました。


【▲ NASAエイムズ研究センターの風洞試験に使用された大型ロケット「スーパーヘビー」の模型(Credit: NASA)】

最近ではSLSの改良に結びついた実績も

NASAによると、機体表面を空気が滑らかに流れる際の力を定常空力、空気が予測しづらいタイミングで叩きつけられるような時の力を非定常空力と呼びます。定常空力のデータは飛行ソフトウェアによる誘導精度の向上に、非定常空力のデータは機体荷重の解析に使用されます。


ちなみに、2026年4月の「Artemis II(アルテミスII)」ミッションで使用されたNASAの大型ロケット「SLS(スペース・ローンチ・システム)」には、気流を安定させるためのストレーキ(小さなフィン)が追加されていました。風洞試験では、こうした改良につながるデータを得ることができるのです。


【▲ 「アルテミスII」ミッションのSLSに追加されたストレーキ(赤丸)。コアステージ(1段目)の側面、固体燃料ロケットブースターの先端付近に取り付けられていた(Credit: Boeing)】

スーパーヘビーは2028年に予定されているアルテミス計画初の有人月面着陸ミッション「Artemis IV(アルテミスIV)」や、2027年に予定されている地球低軌道でのHLS実証ミッション「Artemis III(アルテミスIII)」でも打ち上げに使用される、重要なロケットです。小さな模型を使う風洞試験は、大いなる挑戦を支える重要な取り組みのひとつとなっています。


 


文/ソラノサキ 編集/sorae編集部


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