健康のために、何をすべきなのか。40年間の医師生活で2500人の最期を看取った長尾和宏さんは「最も重要なのは『歩くこと』。ただし、太陽の光を浴びながら歩かなければ、どんな健康法も無意味となってしまう」という――。(第1回)

※本稿は、長尾和宏『病気の9割は自分で治せる!』(PHP新書)の一部を再編集したものです。

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※写真はイメージです - 写真=iStock.com/AJ_Watt

■光に当たらないとどんな健康法も無意味

セルフメディケーションの最重要項目は「歩くこと」です。1日7000歩ぐらいがちょうどいい。それより少なくてもいいですから、ゆっくりでもいいので、こまめに歩いてください。歩くことは万病に効きます。

ウォーキングマシンでもいいけれど、日光に当たりながら歩ければ最高です。

「歩きながら太陽に当たる」

これをしないならば、どんな健康法も無意味だと断言します。なぜ太陽の光に当たらなければならないのか。

たとえば「お肌の敵」とされる紫外線は、ビタミンDを生成するためにどうしても必要なことがわかっています。体内でビタミンDがうまく生成できずに不足すると、睡眠時無呼吸症候群になってしまうリスクが高くなります。睡眠時無呼吸症候群の患者さんは、血中ビタミンD濃度が低い傾向があります。

ビタミンDの濃度は、症状の重さとも関連すると言われます。保険診療で測れます。また、一般にウイルスは紫外線にとても弱く、紫外線に当たると不活化します(ノロウイルスのようなしぶといウイルスもいますが)。感染症にやられないためにも、日光はとても重要なのです。さらにビタミンDには、骨を丈夫にしてくれる、という働きもあります。

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太陽光を浴びるとなぜ幸せな気分になるのか

紫外線に当たるとシミやシワが増える、皮膚がんの原因になるなどいろいろ言われていますが、紫外線は人体に絶対に必要なのです。美容業界のデメリットを強調した刷り込みに騙されてはいけません。太陽光を日常生活で自然に浴びるべきです。

太陽光の働きは、それだけではありません。太陽光を浴びると脳内で、幸せホルモンと呼ばれている、セロトニンという神経伝達物質が分泌されます。つまり、太陽の光を浴びると、それだけで幸せな気分になるのです。

さらにセロトニンは、睡眠ホルモンであるメラトニンの材料になります。朝から日中にかけて脳内にセロトニンがたくさん分泌されると、夜にメラトニンが分泌されやすくなります。

朝7時に太陽の光を浴びれば、その15時間後の夜10時くらいには、睡眠ホルモンのメラトニンが出てきて、自然に眠たくなります。朝、太陽の光を浴びながらの散歩は気持ちがいいものです。その結果、睡眠の質が高まります。

写真=iStock.com/Xurzon
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そして、騙されたと思ってやってほしいことがあります。

■太陽をお尻と足に当てると体調が良くなる

「お尻や足に太陽の光を当てる」ことです。家のベランダや窓辺でもいいから、周囲から見えない場所でパンツを下ろして、顔ではなく丸出しにしたお尻や足の皮膚に日光に当ててみてください。10分でもいいのです。

太陽のエネルギーを直接、皮膚で受け止めると気持ちがいいです。すると、元気になります。体調が良くなります。美容的な理由で、帽子やマスクなどで顔に太陽光を当てたくないという人も、腕や手の甲はしっかり露出してください。可視光線も赤外線も紫外線も全部まとめて、太陽のエネルギーを受け止めてみましょう。美容への悪影響が気になる人にはそうおすすめしています。

■無意識にストレスを溜める危険性


病気の原因の多くは、ストレスにあります。私のもとに勉強に来る研修医たちに毎回言ってきたのは、患者のストレスが職場にあるのか、それとも家庭にあるのかをまず見極めろ、でした。職場の場合は、嫌な上司がいる、過重労働など、その内容はいろいろですが、賃金と引き換えに労働を提供する人に、職場は常に過酷なものです。

結果を求められますし、競争にさらされています。家庭に原因がある人もいます。パートナーや親との関係性、子育ての悩み、経済的な不安など、これも絶え間ないプレッシャーです。職場でのストレスは、上司や仕事の内容が変われば軽減することがありますが、家庭内の人間関係は簡単には改善できず、かなり長期間続くケースもあります。

このようなストレスは、本当に怖い。ひいては人を殺します。ストレスに苦しむ主体とは、それを受け止める「脳」です。慢性的なストレスは、脳から副腎<ふくじん>に命令が行き、体調を崩す種々のホルモンが出て、激しい疲労感をもたらしたりします。

うつ、胃の調子が悪くなったり、肩や背中がガチガチに凝こって呼吸が浅くなったりして、体にいいことは何もありません。そのようなストレス状態を本人が理解・自覚していないと、知らぬ間に深刻な病気になってしまうことがあります。本人が気づいていないので、無自覚に無理をし続けるのです。

写真=iStock.com/Asia-Pacific Images Studio
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Asia-Pacific Images Studio

病気が顕在化してはじめて、「ああ、自分は多大なストレスにさらされていたのだ」と気づく場合が非常に多い。実は、患者のストレス源を見つけるのが医者の大事な役割なのです。

そのためには丁寧な問診が必須です。それからその内容を詳しく聞いて、正体を浮き上がらせていきます。それが、患者自身によって解決できるストレスなのか、できないストレスなのかを検討します。

■「妥協」と「開き直り」が大事

長尾和宏『病気の9割は自分で治せる!』(PHP新書)

具体的に言うと、会社を辞めれば無くなるストレスかどうか。辞められないとしたらそれはなぜか。配置転換は可能なのか。勤務時間や場所を変えられないのか……。いくらかでもストレスを軽減できる道を探るのです。たとえストレス度が高い職場環境であっても、完全解決は難しくても、軽減はできる可能性があるかもしれません。

産業医との連携が必須です。健康を優先するには、時には妥協したり、割り切ることも大事です。ストレスと上手に付き合うこと、ストレスを上手にコントロールすることの秘訣は、第一に妥協や開き直りや割り切りなのです。

それがうまくできていないと、溜まりに溜まったストレスが爆発する形で、必ず反動が起きます。そうならないように、自分のストレス度を毎日自己点検して知っておくべきです。軽度のストレスはむしろプラス要因です。

ストレスは医者でなければ見つからないかというと、そんなことはありません。自分で点検するためには、厚生労働省の「5分でできる職場のストレスセルフチェック」なども一つの参考になると思います。(QRコードもご利用下さい)私はストレスと上手に折り合えている状態を「幸せ」と呼びます。

(※編集部注:外部配信先ではQRコードを閲覧できない場合があります。その際はPRESIDENT Online内でご確認ください。)

写真=iStock.com/MIND_AND_I
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長尾 和宏(ながお・かずひろ)
医学博士
1958年、香川県生まれ。1984年、東京医科大学卒業、大阪大学第二内科入局。大阪大学病院第二内科、市立芦屋病院内科などを経て、1995年、尼崎市に長尾クリニック開業。複数の医師による365日24時間態勢で、外来診療と在宅医療を両立させ、40年間の医者生活で2500人の最期を看取る。2023年、長尾クリニックを定年退職。主な著書に、『歩く人はボケない』(PHP新書)、『病気の9割は歩くだけで治る!』(ヤマケイ文庫)、『「平穏死」 10の条件』(ブックマン社)、『僕とイベルメクチンの物語』(南東舎)など。
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(医学博士 長尾 和宏)