ほぼ毎日、自炊する黒木華が年中リピート。俳優仲間に教わったお気に入りの鍋料理とは
俳優が自分をどういう人かを見せることは、芝居をする上でノイズになるーー
インタビューでそう語ったのは俳優・黒木華さん。そんな彼女がこのたび、365日間「今日作ったもの、食べたもの」を記録した料理エッセイ&レシピ集『はるの献立日記』(飛鳥新社)を上梓。これまで見せることのなかった彼女の日常を、食を通して綴っています。
刊行を記念して行っているインタビューの前編「プライベートを見せない黒木華が、365日間の食事をすべて公開。記録を残して気づいた『私』」では、本を書こうと思った経緯や、365日間の食べたもの、作ったものを記録し続けて気づいたことを伺いました。
続く後編では、毎日のようにキッチンに立つ黒木さんに、食との向き合い方や実際にどんな料理を作っているかを尋ねました。リピート率の高い、俳優仲間に教わった鍋料理のレシピとともに紹介します。
身についた「料理の勘」
本格的に料理をするようになったのは、上京して一人暮らしを始めてからだったと本書に書かれています。インタビューではその当時と今では、料理をする上で少しずつ変化したことがあると語ってくれました。
「自炊を始めたころは、これ使うかな、あれも必要かなと、いろいろ試したくて、調理器具や食材を買うことさえ楽しんでいました。ただそのころは、食材がどれくらい必要なのかとか、どういうふうに使い回せばいいのか、調味料の分量など、分からないことも多くありました。
それでも、毎日のように作り続けているうちに、“料理の勘”みたいなものが培われていきました。1週間分の献立を頭で考えて、買い物をすることが次第にできるようになっていったんです」(以下、黒木華さん)
毎日の積み重ねが、少しずつ「料理の勘」を育てていったのでしょう。こうして身につけた感覚は、黒木さんが母の姿に近づけたと感じる出来事でもあったようです。
「私の母が当たり前にしていたことで、ずっとすごいなと感じていたことでした。それを私もできるようになったんだ、と思えたときは嬉しかったです」
作ることと、食べること
こうして料理の勘を培った黒木さん。今ではどんなに忙しい日でも、できる限り自炊を心がけているそうです。料理をする時間は、暮らしの中で欠かせない大切な時間だと話します。
「仕事で忙しくても料理を作るのは、それが私にとって気分転換になるからです。食材を切ったり炒めたりと手を動かしている間は、その作業に集中できるので、悩みや考えごとから少し離れることも、気持ちが整理されることもあります。
それに作った料理はそのあと、おいしく食べられますからね(笑)」
そして料理は、自分自身を整える時間になっているだけでなく、人とのコミュニケーションを育む時間にもなっていると言います。
「自宅に友人を招いて、一緒に料理を作って食べることもあります。“食いしん坊”な仲間と過ごす時間はとても楽しいです。『食』は人と人を繋いでくれるものでもあるなと感じます。
だから私にとって、料理は暮らしの中で欠かせないもの。とても大きな存在です」
得意な料理、苦手な料理
では実際に、黒木さんの食卓にはどんなメニューが並ぶのでしょうか。
「和食が圧倒的に多いです。ドラマ『みをつくし料理帖』で魚をさばけるようになったことで、料理の幅が広がりました。私の中ではとても大きな出来事でしたね。魚がさばけるようになってからは、煮魚やお刺身なども気軽に作れるように。食生活が豊かになりました」
魚をさばけるほどの腕前なら、どんな料理も難なくこなしてしまいそうですが、意外にも苦手に感じているメニューがあるそうです。
「洋食はあまり作らないので、難しく感じます。とくにパスタは、簡単そうに見えて麺の茹で加減がじつは難しくて、うまくいかないことが……。いつか極めたいですね」
魚はさばけるのに、パスタを茹でるのが苦手という、少し意外な答えが返ってきました。
「不思議ですよね、偏ってますよね(笑)。カレーも大好きな料理なのですが、あまり作りません。使用する具材が多いので、どうしても作り過ぎてしまうんです。一人暮らしなのでそうなると、何日も続いてしまって……。二日目、三日目はカレードリアにしたり、食べ方の工夫はするのですが、食べ終わるころには『しばらくはいいかな』って(笑)」
俳優仲間に教わった鍋料理
日々の食卓は和食がメインだと話す黒木さん。その中でも、何度も登場する料理があります。それが鍋料理。本書でも季節を問わず、一年を通して作っていることが綴られています。
「具材を切って鍋に入れるだけでいいし、冷蔵庫の残りもので作れます。とても簡単なのに野菜をたっぷり摂ることができ、お腹も満たされます。どんなに疲れていてもきちんと栄養が摂れるので、とても便利。私は季節を問わず作って食べています。
夏にあえて辛い鍋を作り、ハフハフ言いながら汗をたくさん流して食べることも」
そんな鍋料理の中でも、ひときわ登場回数が多いのが「ピェンロー鍋」。
「白菜と豚肉が主役のシンプルな鍋です。俳優の高橋一生さんに教わって以来、病みつきになって、よく作っています。高橋さんにコツを聞いたら『しいたけの出汁をきちんと取ること』だとおっしゃっていました。私はどんこを前日から水に浸して戻し、その戻し汁を翌日に使うようにしています」
本書の中でも何度も登場する、黒木さんの定番料理「ピェンロー鍋」。レシピを抜粋して紹介します。
※以下、『はるの献立日記』(刊行/飛鳥新社)より抜粋
「ピェンロー鍋」の作り方
〈材料〉4人分
鶏もも肉…1枚
豚バラスライス肉…250g
白菜…1/4株
鍋用春雨…30g
A
・干ししいたけ…8個
・昆布…8g
・水…2L
塩…適量
ごま油…大さじ4〜5
一味唐辛子…適量
〈作り方〉
【準備】Aを合わせ、ひと晩おいてだしを取る。
1.鶏肉と豚肉、白菜は食べやすい大きさに切る。
2.鍋にAを入れて中火にかけ、沸騰直前に昆布を取り出す。
3.2に1の半量を入れる。ひと煮立ちしたらふたをし、火を弱めて40分煮込む。途中水分が少なくなったら200mlの差し水をする。
4.3のしいたけを取り出し、やけどに注意しながら食べやすい大きさに切って戻す。残りの1を入れて中火にし、煮立ったら火を弱めて再び5分煮る。途中春雨とごま油を加え、さらに5分煮る。塩で味を調える。
お好みで一味唐辛子をかけていただく。
※以上、『はるの献立日記』(飛鳥新社)より抜粋
【黒木華(くろき・はる)】
1990年3月14日、大阪府生まれ。俳優。2010年NODA・MAP番外公演『表に出ろいっ!』でデビュー。以降、数多くの舞台、映画、テレビドラマで活躍。2015年、映画『小さいおうち』でベルリン国際映画祭・最優秀女優賞(銀熊賞)、日本アカデミー賞・最優秀助演女優賞を受賞。2016年、映画『母と暮せば』、2021年、映画『浅田家!』で日本アカデミー賞・最優秀助演女優賞をそれぞれ受賞。
『下妻物語』『告白』を手がけてきた中島哲也監督が、打海文三の傑作ミステリー小説を映画化した『時には懺悔を』で、過去を抱えながら生きる主婦・尋津民恵役を演じる。※2026年8月28日(金)全国公開予定。
インタビュー時着用衣装:シャツ\26400/Yarmo(グラストンベリーショールームTel.03-6231-0213) シューズ\39600/ヨシトデオランジェ(ニューロンドンTel.03-5603-6933) 他、スタイリスト私物
ヘア&メイク/新井克英
スタイリング/田畑アリサ
取材・文/笹本絵里(FRaUweb)

