(※写真はイメージです/PIXTA)

写真拡大

借金1000万円から10年で「億り人」となった、『借金1000万円から億り人 じゃない方芸人の大逆転投資術』(KADOKAWA)著者のオモロー山下氏。投資を始めて半年ほどで、“FOMO”(自分だけが取り残されているかもしれないという恐れや焦り)から〈テスラ株〉を買った結果、5000万円もの含み損を抱えるピンチに直面します。しかし、それでも同氏がパニック売りをせずテスラ株を持ち続けたのには、同社が描く壮大な「ストーリー」の存在がありました。同書より、山下氏が惹かれたテスラの魅力と、投資家を動かすストーリーの力を詳しく見ていきましょう。

「含み損5000万円」の地獄を味わうも…〈テスラ株〉を持ち続けた理由

僕がテスラに投資したのは、株価が過去最高値を更新して熱狂に包まれていた2022年の年初でした。

でも、ここで正直に白状しておくと、僕がテスラを買った理由は、最初から「自動運転が世界を変える!」という壮大なストーリーを描けていたから……ではありませんでした。投資を始めて半年くらいで完全に調子に乗っていた僕は、「テスラは今一番勢いがある」「みんながもっと上がるって言ってるから」という、ただの焦り(FOMO)で飛びついただけだったんです。

そして買った直後に株価は大暴落。そこから「含み損5000万円の地獄」が始まったというわけです。それでも僕がパニック売りをせず、テスラ株を今日まで握り続けられているのは、テスラという会社の「本当のストーリー」に気づくことができたからです。

YouTubeで目にした「自動運転」で世界が変わる未来

当初、僕は自動運転というものに対してかなり懐疑的でした。「技術的には可能でも、法律や事故の責任問題があるから、日本で走るなんて夢のまた夢やろ」と。

でも、YouTubeでアメリカのテスラユーザーが投稿している動画を見まくっているうちに、その考えは吹き飛びました。一般のユーザーが最新のソフトウェアをインストールして、「車が勝手に車庫入れをした!」「工事スタッフが手で『進め』と合図すると、それに反応して走行した!」と興奮気味に投稿していたんです。そして実際に無人のテスラ車が街中を走っている映像を見たとき、僕の中で強烈なストーリーが立ち上がりました。

「自動運転が完全に実現したら、世界がひっくり返るぞ」

もしタクシーもトラックも全部自動運転になれば、どうなるか想像してみてください。最大のコストである「人件費(ドライバー)」がゼロになり、利益率が劇的に上がります。しかも機械は疲れないので、24時間365日休まず働ける。世界的な物流の人手不足も一気に解決する。

そうなれば、テスラはただの自動車メーカーではなく、「世界の移動のプラットフォームを握る会社」になる。そんな未来が見えてきました。

ライバル企業との決定的な差…テスラが持つ「圧倒的なアドリブ対応力」

ここからは、テスラが他の自動運転企業とどう違うのか、少し技術的な話を掘り下げます。テスラの自動運転における最大の強みは、「カメラだけ」で走るという点です。

グーグルの子会社である「ウェイモ」などのライバル企業は、LiDAR(ライダー)という高価なレーダー装置を使い、事前に走行エリアを精密にマッピング(地図化)して走らせています。これは言ってみれば「決められた定期コースを走る観光バス」です。地図がない場所では走れません。

一方、テスラは車に搭載されたカメラとAI(ニューラルネットワーク)だけで自動運転を実現しようとしています。人間が目で見て状況を判断して運転するのと同じように、AIがカメラの映像を処理して走る。だから、地図がない初めての道でも走れるし、コストも圧倒的に安く済みます。

この「ルールベース(ウェイモ)」と「AIベース(テスラ)」の違いを象徴する、興味深いエピソードがあります。

ある日、カリフォルニアで大規模な停電が起き、街の信号が消えてしまったことがありました。このとき、ウェイモのロボタクシーは「信号が消えたら路肩に止まりなさい」というプログラムに従って一斉に停止し、広範囲で立ち往生して大渋滞を引き起こしました。

でもテスラの車は違いました。信号が消えているという異常事態をAIが瞬時に判断し、速度を落としながら、周囲の状況を見て慎重に走行を続けたと報じられたのです。

「テスラは圧倒的なアドリブ対応力がある。これはテスラが勝つな」

僕はそう確信しましたし、調べてみるとテスラには僕をワクワクさせるビジネスモデルが他にもいくつもあると知りました。

ロボタクシー、自動車保険…テスラが仕掛ける「ビジネスモデル

例えば、「ロボタクシー」です。これは、完全自動運転の車が人間のドライバーなしで乗客を運ぶ、いわば「無人タクシー」のこと。テスラはこの構想を、自社の電気自動車と自動運転技術を組み合わせて実現しようとしています。

そもそも、普通のマイカーというのは1日のうち90%以上は駐車場で眠っているだけの「金属の塊」です。さらに駐車場代もかかります。しかし自動運転が完成すれば、自分が会社で働いている間や寝ている間に、車を無人のタクシーとして稼働させて、勝手にお金を稼いでもらうことができます。オーナーにとっては、駐車場代を払うだけだった車が、逆にお金を生む資産に変わるわけです。

しかも、テスラ側にとってもこれは美味しいビジネスです。自動運転のソフトウェアは一度開発してしまえば原価はほぼゼロなので、導入1台あたり数十万〜100万円単位の高利益な課金が見込めます。

もう一つ、「自動車保険にも可能性を感じています。テスラは車に搭載したソフトウェアを通じて運転データをリアルタイムで取得できるため、「安全運転スコア」を算出して、それに連動して保険料が安くなるという独自の保険ビジネスを始めています。

「お、安全運転したらスコアが上がって保険料が下がるの? じゃあ頑張ろう!」とドライバーに思わせる。運転にゲーム性を持たせて、車を売るだけでなく保険でも稼ぐ。こんなビジネスを作れるのはテスラだけです。

もちろん、テスラの自動運転ビジネスにはリスクがないわけではありません。政府の方針によっては自動運転の認可が取り消されるかもしれないし、何か重大な事故が起きればストーリーは一気に崩れます。それに、CEOのイーロン・マスクはめちゃくちゃ「やんちゃ」な経営者です。大胆な言動で世界を動かす天才ですが、ときどき大統領と喧嘩したりして株価が暴落することもあるので、本当に心臓に悪い(笑)。

それでも僕がテスラに投資を続けているのは、彼が描くストーリーが規格外だからです。

データセンターを火星に?…投資家を魅了する「SF映画の先」を行く構想

イーロン・マスクは、テスラの自動運転と、彼が率いる宇宙企業・スペースXのスターリンク(衛星通信網)を組み合わせて、全世界のインフラをリードしようとしています。

さらに、AI開発に必須なデータセンターの莫大な電力・冷却・騒音問題を解決するために、「寒いし、空気もないし、苦情を言う住民もいない『火星』にデータセンターを作ればいいじゃないか」なんていう、SF映画も真っ青の構想まであると言われています。

こんな話、普通の社長が語れば荒唐無稽な話と思うだけですが、テスラやロケット技術を高めてきた歴史と技術力を見れば、あながち不可能だとも言い切れない。こんな壮大でワクワクするストーリーを見せてくれる会社だからこそ、僕は今もテスラに投資を続けることができているんです。

オモロー山下

お笑い芸人

実業家/個人投資家