「音が違う選手」や「第二の監督」の存在も…W杯『森保ジャパン』が「イケイケどんどん」快進撃のワケ
3人のキーマン
「チュニジア戦の試合前、ピッチ上で黙々とシュート練習に励む選手がいました。上田綺世(あやせ)(27)です。チーム2点目となったペナルティエリア右外からのミドルシュートと同じ位置から、面白いようにシュートを決めていた。相当調子がいいように見えました」
北中米W杯グループリーグ第2戦・チュニジア戦を現地取材したスポーツライターのミムラユウスケ氏は、快勝の裏側にあったエースの努力をこう振り返った。
試合は4-0で日本が快勝したことは、今さら触れる必要もないだろう。日本テレビ系で解説を務めた本田圭佑(40)が興奮のあまり連呼した「イケイケどんどん」がSNSを席巻するなど、サムライブルーの躍進に日本中が沸き立った。
史上最強と言われる森保ジャパンだが、日進月歩で完成度が高まっているウラに「3人のキーマン」の存在があるという。
一人目のキーマンは冒頭に挙げたエース・上田だ。チュニジア戦では2得点を挙げてマン・オブ・ザ・マッチに輝いたが、ミムラ氏はそのパンチ力に脱帽する。
「『上田のシュートは音が違う』というのはメディア関係者の間でよく言われる話。蹴る瞬間に″ドンッ″と鈍い音がする。重いシュートが打てている証拠です。
上田は非公開練習で新しいシュートを試していたそうで、チュニジア戦後に確認すると、『フィーリングはずっといい』と手応えを口にしていました。どんなシュート練習を重ねてきたのか具体的には教えてくれませんでしたが……あのミドルシュートだったのかもしれませんね」
往年のサッカーファンのトラウマである″決定力不足″。この言葉を今大会中に聞くことはないだろう。
快進撃の要因は得点力アップだけではない。中盤のフィルター役として守備を支えつつ、攻撃にも参加。上田の2点目をアシストしたのが2試合連続フル出場の佐野海舟(25)だ。今季、ドイツ1部リーグで走行距離3位、デュエル勝利数2位を記録した″体力お化け″の面目躍如だが、佐野の流儀は意外なものだった。
「筋トレをしないんですよ。『可動域をフル稼働させて筋肉が本来持つパワーを100%引き出す』のがモットーで、余計な筋肉はつけない。下半身と上半身を繋ぐインナーマッスルである腸腰筋や腕と肩を繋ぐ肩甲骨のストレッチやトレーニングをする程度。体の柔軟性を高め、ムダな体力消費を抑えているのです。今大会でも、トレーニングルームに籠って地味なストレッチを延々と続けている姿をよく見ますね」(サッカー協会関係者)
ロッカールームの合い言葉
躍進を支える最後のピースは「メンタル」だ。重要な役割を担っているのが今大会の日本代表最年長プレーヤー・長友佑都(39)である。選出時には「長友不要論」が巻き起こり、実際、第2戦までの出場時間は0分。しかし、ピッチ外では「勝者のメンタリティー」をチームに植え付けるために欠かせない存在になっているという。スポーツジャーナリスト・了戒(りょうかい)美子氏が打ち明ける。
「チュニジア戦の3日前、長友が音頭を取って選手だけのミーティングを企画したんです。自身が参加した過去4大会中、第2戦で一度も勝てていないことを訴え、選手に発破をかけた。
選手ミーティングはその日が2回目だったんですが、大会期間中に複数回行うこと自体、初めて。オランダに善戦したことによる気の緩みや久保(建英・25)の怪我による混乱を感じ取り、チームを落ち着かせたかったのでしょう」
ミムラ氏は「その存在感はさながら″長友監督″です」と表現した。
「大ベテランのゲキを受け、チュニジア戦前のロッカールームで選手たちは合い言葉のように『集中力を切らさずに緊張感を持ってやっていこう』と口にしていたそうです。実体験をもって選手を導く姿勢はまさに第二の監督。
試合後、″まるで長友監督じゃないですか″と声をかけると、『ただ自分が思うことをしゃべらせてもらっただけ。少しは大人になったからかな』と反応は控え目でした。本当は自分も出たいはずなのに、チームを優先してサポートに徹する。快勝のウラには間違いなく長友の献身があると思います」
攻守の成長に加えメンタルも充実し、完全体となった森保ジャパン。「ベスト8」の壁を破り、世界の頂に立つその日まで″イケイケどんどん″は終わらない。
『FRIDAY』2026年7月10日号より
