佐野海舟にトレーナーも衝撃「ウェイトをやらない」 独自のフィジカル論も…内に秘める”エゴ”
佐野海舟の元トレーナー水野純一氏が回想
欧州へと羽ばたく直前の約1年間、その肉体を影で支えたのが、専属パーソナルトレーナーであり理学療法士の水野純一氏(WellBody株式会社代表取締役社長)だった。第1回では異次元のフィジカルに迫ったが、今回は「独特なフィジカル論」と「内面の貪欲さ」にスポットを当てる。(取材・文=FOOTBALL ZONE編集部・小西優介/全3回の2回目)
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佐野海舟はマインツ移籍1年目から全34試合スタメンで出場(うち32試合がフル出場)。2年目の今季も後半アディショナルタイムに1度交代したのみで、2年連続でほぼフル稼働となったが、特徴に得意とするボール奪取だけでなく、そのタフさがある。
佐野はピッチ上で激しい接触があっても、決して倒れない。水野氏のセッションを受けており、鹿島時代の同僚のMF知念慶選手らからも「なんであんなに身体が強いの?」「何の筋トレをしてるの?」と不思議がられていたという。しかし、本人の口から出たのは意外な答えだった。
「海舟はウェイトトレーニングを全然やらないんです。チームでもあまり積極的には行っていなかったと言っていました。今は違うかもしれませんが、その頃は本人曰く『筋トレで重いものは持ちたくない』と。その代わり、彼は『可動域をフルに出せれば、筋肉のパワーは発揮できると思っています』と言っていました。20代前半の若さで、僕ら専門家と同じロジックを感覚的に掴んで体現していることに驚きました」
水野氏が見た佐野の身体は、決して「超ごつい」わけではなく、サッカー選手としてよくいるサイズ感だったという。では、なぜあれほど当たりに強いのか。水野氏は「出力のタイミング」と「しなやかさ」にあると分析する。
「適切なタイミングで、足指から地面の力を100%もらって相手にぶつかることができる。だから倒れないんです。よく選手に例え話をするのですが、ガチガチに固まったビルは強い地震でパキッと折れてしまいますが、耐震・免震構造のビルはしなやかに揺れて衝撃を吸収しますよね。海舟の身体はまさにそれ。ぶつかった瞬間にこんにゃくのようにしなやかに衝撃を吸収し、そこからドカンとパワーを押し返す。可動域がフルに出せるからこそできる芸当です」
水野氏が提供するメニューは、腸腰筋(ちょうようきん)や肩甲骨を動かすような、地味で地道なストレッチがメインといい、途中で飽きてしまうかと心配していた。しかし、佐野は「地味が大事ですから」と、コツコツと自主トレにも取り入れていた。自分の体に「合う・合わない」を見極める、取捨選択の能力が際立っていたと強調した。
佐野の人間性について水野氏は「味わい深い、いい意味での自己中(エゴ)がある。メタ認知能力がものすごく高い」と評する。人柄としても大人しく、他人に気を使うタイプに見えるが、内に秘めた「エゴ」があるという。象徴的だったのが、2024年のアジアカップを控えた時期のやり取りと振り返る。
「1月4日から代表活動が始まるという話をしていた時、海舟から急に『1月3日(正月)にいけますか?』って連絡が来たんです。普通、トレーナーに気を使って正月の三が日なんて頼めないじゃないですか。でも彼は、自分が目的を達成するためなら『聞いて損はない』とスパッと行動できる。最低限のラインは守るから決して失礼には感じないのですが、その我の強さと貪欲さには、僕も勉強になりました」
常に自分を外から客観視し、必要なものとそうでないものを冷徹に見極める。その性質は、日々のコミュニケーションの場でも、独特な空気感となって表れていた。(第3回に続く)(FOOTBALL ZONE編集部・小西優介 / Yusuke Konishi)

