今年最注目の「フェルメール展」が早くも人気沸騰…先行販売に“アクセス殺到”でチケット販売サイトが炎上する事態に
今年は注目の美術展が目白押しである。なかでも注目を集めているのが、8月21日から9月27日にかけて「大阪中之島美術館」で開催される「フェルメール《真珠の耳飾りの少女》展」であろう。オランダ美術界を代表する巨匠・フェルメールの傑作「真珠の耳飾りの少女」が実に14年ぶりに来日するということもあって、SNSでは話題が沸騰していた。
そして、6月15日の12時から、「tabiwa by WESTER」で始まったチケットの先行販売には申し込みが殺到。「10時間以上待機したのに順番待ちになっている」「フリマサイトでチケットを転売している人がいる」など苦情が寄せられ、公式サイトが炎上する事態になっている。【取材・文=山内貴範】
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大人気の少女が14年ぶりに来日
前回、「真珠の耳飾りの少女」が来日したのは2012年の「マウリッツハイス美術館展」だが、このときは約120万人が来場している。今回の入場料は3000円で原則的に日時指定制(前日までの販売状況に応じて空きがある場合は当日券も販売)となっているが、とにかく開催期間が1ヶ月余りと短いこともあって、詳細が発表された段階からチケットの争奪戦が予想されていた。

そのうえ、世界的に人気の高いキャラクター「ミッフィー」や、人気漫画『葬送のフリーレン』とコラボするなどして、普段美術展を訪れない層の取り込みも図られていた。SNSでの盛り上がりも先行販売前から凄まじかったため、「tabiwa by WESTER」は事前にサーバーの増強など準備はしていたとは思われる。が、対策が不十分だったか、もしくは申込件数が想定を上回ったのか、受付が始まると大混乱に陥った。
現在、チケットを取れなかった人たちから、SNSに膨大な量の非難が書き込まれる事態に発展しており、「フェルメールごと嫌いになりそう」といったコメントも寄せられている。そのうえ、サーバーに負荷がかかった結果、「tabiwa by WESTER」の通常の利用者までもがサイトにアクセスできないトラブルが発生した。今後、7月と8月に一般販売が相次いで行われるようだが、再び同様の混乱が起きないか、不安の声も広がっている。
注目度が高くなった最大の要因は、“今回が最後の来日展になるのかもしれない”というプロモーションではないだろうか。「真珠の耳飾りの少女」を収蔵するマウリッツハイス美術館のマルティネ・ゴッセリンク館長が、「おそらくは最後となるであろう特別な機会」とコメント。結果、過酷なチケット争奪戦へと発展したのだろう。
日本人は何かと“限定”や“最後”という言葉に弱く、過去にもイベントでこうした言葉を用いたことで、客が殺到するトラブルは多数起こっている。宣伝文句として使いたい気持ちは十分理解できるが、一方で、消費者心理を煽りすぎるため、安易に使うべきではないという指摘もある。
日本の美術展が異常に混雑する理由
ところでなぜ、日本の美術展はいつも混雑してしまうのだろうか。それは、いつでも見られる常設展ではなく、期間限定の特別展を中心にスケジュールが構成されているためである。
一方、海外の美術館・博物館は常設展が中心である。「ミロのヴィーナス」も「ロゼッタストーン」も、原則、いつ行っても鑑賞できる。今回の「真珠の耳飾りの少女」も、現地では特段混雑することなく、ゆっくり見ることができるという。日本では特別展を企画し、集客するスタイルが中心になってきた。そのため、常設展はガラガラ、特別展だけが異常に混むという事態になってしまいがちなのだ。
さて、特別展に何十万人の来場者があると聞くと華々しく思えるが、美術品の輸送時に多額の保険をかけるため、入場料だけでは実はそれほどの利益が見込めない。そこで、主催側はグッズなどの販売を積極的に行うことになる。ミュージシャンのコンサートも、公演のチケット代だけではほとんどが赤字であり、グッズの売上で赤字を補填するのが定石だが、特別展もこれとまったく同じ構造になっている。
美術展で販売されるものといえば、かつては図録がメインだった。ところが、昨今はアクリルスタンドを筆頭に、アイドルのコンサート並みに様々なグッズが発売されるようになった。15〜20点ものグッズが発売される美術展も珍しくない。売上を少しでも伸ばしたいという主催側の思いが見え隠れするが、このグッズ販売がスタッフにとっては悩みの種なのだ。美術展のスタッフのアルバイトをしたことがあるA氏がこう話す。
「とにかくグッズの種類が多い上、金額がバラバラなので、会計が本当に大変です。形も様々なので袋に入れると嵩張る。レジ袋が必要かどうかも聞かないといけないし、袋の値段が10円単位だったりするので、お釣りの計算も手間。列ができているので、早くさばかないといけないというプレッシャーも大きいんですよ。
私がバイトをしたある美術展では、スタッフの手際がかなり悪く、お客さんから罵倒される事態が起こっていました。しかも、グッズを一気に袋に入れたせいでクリアファイルが折れ曲がったり、ポストカードに傷がついたりといったトラブルも。グッズ目当ての人も多いので、主催側には綿密な対策を立ててほしいですね」
グッズ販売をトラブルなく行えるか
さて、「フェルメール展」は、あらかじめ指定された日時に入場するかたちになっている。一見するとスムーズに入場できそうだが、東京・上野公園にある「上野の森美術館」で5月29日から開催されている「大ゴッホ展」は、時間が指定されているにもかかわらず、行列が発生した。館内に入るために、60分並んだという人もいたようだ。
しかも、限定グッズを買おうとした場合、またまた30分待ちという状態になったという。展示を見るより、列に並んでいる時間のほうが長かった人もいたのではないか。
今回のフェルメール展でどんなグッズが発売されるのか、6月16日現在、全体像は明らかになっていない。しかし、グッズ売り場には人が殺到する可能性が極めて高い。転売屋(転売ヤー)も確実に発生するとみられる。今の段階から、十分な対策が必要だろう。
美術展で混雑が起きると、作品を傷つけてしまうなどのトラブルが発生しないかも懸念材料となる。筆者は行列と混雑が苦手なので「フェルメール展」を訪れる予定はまったくないが、とにかく「真珠の耳飾りの少女」が無事に来日し、何事もなく帰国できることを強く祈っている。
ライター・山内貴範
デイリー新潮編集部
