エアコンでも冷蔵庫でも照明でもない…猛暑の電気代削減のために専門家が「真っ先に手をつけて」と勧める場所

■イラン情勢が電気代に反映されるタイミング
まだ本格的な夏前ですが、すでに汗ばむような日が増えてきました。天気予報を見ても、今年の夏は例年以上の猛暑になると予想されています。「また電気代の高くなる季節がやってくるのか……」と憂鬱な気持ちになる人も多いのではないでしょうか。
「猛暑だと、具体的にいくら電気代が増えるの?」という疑問をよく耳にします。これは住んでいる地域の気候や家の広さ、家族構成、そして使っている家電の性能によってまったく異なるため、一概に「○○円高くなる」と言い切るのは難しいところです。
ただひとつ確実に言えるのは「何も対策をしなければ、電気代が跳ね上がり、家計を脅かしかねない」ということです。
というのも、今年の夏は気候の変化だけでなく、社会情勢の悪化による「電気代そのものの値上がり」が考えられるからです。

イラン情勢の緊迫化により、国内の原油不足やエネルギー価格の高騰が懸念されています。日本の電気は、その多くがLNG(液化天然ガス)による火力発電でまかなわれているため、「原油の値上がりは直接関係ないのでは?」と思われるかもしれません。
しかし実は、日本が調達しているLNGの価格の約8割は、原油価格に連動しており、3〜4カ月のタイムラグを経て、電気代の「燃料費調整額」に反映されます。まさにそのタイミングが、今年の6〜8月という、エアコンをフル稼働させる真夏に重なる可能性が非常に高いのです。
■政府による「電気・ガス料金支援」の恩恵は
一方で、政府は5月25日に、今年も夏の電気・ガス料金支援を実施すると発表しました。主に一般家庭で使用される低圧電力の料金は、7・9月で3.5円/kWh、8月で4.5円/kWhの値引き、都市ガス料金は、7・9月で14.0円/m2、8月で18.0円/m2の値引きとなります。

例えば、1カ月の電気使用量(低圧)が300kWhの家庭では、7月と9月は1050円、8月は1350円、つまりトータルで3450円が補助される計算になります。
今年の値引き単価は、昨年の2倍弱になりましたが、補助金はあくまで「急激な値上がりをマイルドにしてくれる程度」です。結局のところ、家庭内でしっかりと対策を講じる必要があります。
■電気代の節約で「要対策」の場所
多くの電気代を使用する家電としては、エアコン、照明、冷蔵庫です。しかし、夏の光熱費を下げるために最優先で対策してほしいのは、家電そのものではなく、部屋の「窓」です。
夏場に室外から部屋に流れ込んでくる熱の約7割が、窓などの開口部から侵入してくると言われています。部屋に熱を入れないことが、夏の光熱費対策の大前提です。
窓の対策としておすすめなのは、サンシェードやすだれ、よしずを使って、窓の外側で直射日光を遮ることです。室温の上昇を抑えることができ、エアコンの効きが良くなります。
カーテンを閉めるだけでも一定の効果はありますが、カーテンは「室内に入ってしまった熱」を遮るものなので、どうしても窓際が熱くなります。熱が部屋の中に入る手前でシャットアウトするのがベストです。

■逆効果になるエアコン「室外機」のNG対策
窓対策の次に行うべきは、エアコン周りの工夫です。例えば、屋外に置いてある「室外機」の熱対策は講じているでしょうか。
エアコンは、室内機と室外機の間で熱を移動させることで部屋を冷やしています。室外機は部屋の中の熱を外に捨てる役割を果たしますが、この室外機に直射日光が当たって本体が熱くなっていると、排熱の効率が低下します。その結果、余計な電気代が必要になってしまうのです。
理想は、室外機そのものが日陰にある状態です。ただし、「うちの室外機は日当たりが良すぎるから、場所を少しずらそう」と自分で動かすのは絶対にやめてください。室内機と室外機をつないでいる配管が折れたり、ガス漏れを起こしてエアコンが故障したりする原因になります。
場所を動かせない場合は、ベランダ全体にすだれを垂らしたり、室外機にかかるようにサンシェードを張って、室外機に日陰を作ってあげましょう。人間が炎天下にいるとき、日傘を差したり帽子を被ったりするのと同じです。
室外機の上部にカバーをかけるのも効果的です。ただし、室外機をすっぽり覆うタイプのカバーは、熱がこもりやすくなるためかえって逆効果になります。あくまで「風通し」を最優先にして、正面の吹き出し口を塞がないようにしてください。
■エアコンの使用方法と照明の「熱」に要注意
エアコンは部屋を冷やすまでに多くの電気代を消費し、一度部屋が冷えた後は、少ない電力で室温をキープできます。短時間の買い物や子どもの送り迎えなど、30分以内の外出であれば、電源を消さず「つけっぱなし」にしておいた方が、帰宅後に電源を入れて室内を冷やすよりも電気代が安く済みます。
また、冷たい空気は下に溜まる性質があります。エアコンに扇風機やサーキュレーターを併用し、室内の空気を循環させることで、エアコンの設定温度を上げても快適に過ごせるでしょう。
それから、照明も多くの電気代を使用しやすい家電です。特に夏は照明が発する「熱」にも気を配りましょう。
昔ながらの白熱電球や蛍光灯は、光を放つと同時に、かなりの熱を発生させています。エアコンで部屋を冷やそうとしているのに、照明が部屋を温めていては元も子もありません。
おすすめは、家中の照明を「LED照明」に切り替えることです。LEDは消費電力が非常に少なくて電気代が安く抑えられるだけでなく、白熱電球や蛍光灯と比べて発熱量が少ないという特徴があります。照明をLEDに変えるだけで、部屋自体の温度上昇を抑えることができるため、エアコンの負担を減らして節電効果を生み出してくれます。
LEDは寿命が非常に長いので、まだ家の中に蛍光灯や白熱電球が残っている方は、この夏に交換を検討してみてください。

■「エアコン2027年問題」の影響
最近「エアコン2027年問題」という言葉を耳にする機会が増えています。2027年4月から、エアコンの省エネ基準が改正されるのに際し、エアコンが全体的に値上がりするだろうと言われています。
日本の家電の省エネ基準には「トップランナー方式」というルールが採用されています。これは、「現在発売されている製品の中で、最も省エネ性能が優れているもの(ハイエンドモデル)」を基準(100)とし、メーカーが年度ごとに出荷する製品全体で基準値を満たすことを求める制度です。
2027年に省エネ基準が引き上げられる際、メーカー全体の省エネ性能の「底上げ」が求められることになります。これにより、エントリーモデルやスタンダードモデルなど機能がシンプルで価格の安い機種が、新しい省エネ基準をクリアするために、より高性能・高価格になったり、市場に出回らなくなったりする可能性があるのです。
■エアコンを買い替えるかどうかの判断基準
では、今年中にエアコンを買い替えたほうがよいのでしょうか。買い換えを検討したほうがいいのは、以下の人です。
2.今使っているエアコンがすでに製造から10〜13年以上経過している人
「うちは安い機種で十分」という方は、安いモデルが手に入りやすく、かつ駆け込み需要で品薄になる前に、なるべく早く購入するのがベストです。
また、内閣府の調査によると、エアコンの平均買い替え年数は「13.4年」で、その理由の7割が「故障」です。また、メーカーは製造終了から9〜10年間しか部品を保有していません。つまり、10年を超えて使用しているエアコンはいつ壊れてもおかしくなく、壊れても直せない可能性が高いのです。
逆に、エアコンを急いで買い替えなくてもよい人は、次に該当する方です。
2.今使っているエアコンがまだ新しく、何の問題もなく動いている人
ハイエンドモデルは、現時点でもすでにトップクラスの省エネ性能を持っているため、2027年基準になっても大きな影響を受けません。高機能モデルを求めている人や、エアコンがまだ新しい人は、慌てて買い替える必要はないでしょう。

■ナフサ不足の影響がエアコンにも波及
もしエアコンを買い替えるなら、早く動いたほうがよいです。現在はエアコン2027年問題の駆け込み需要に加え、ナフサ不足によるプラスチックや部品不足が起こっています。エアコンの配管カバーや室外機を乗せる架台の不足から、エアコン工事が通常よりも遅れがちだそうです。
のんびりしていると、エアコン工事が真夏のピークに間に合わず、暑い時期にエアコンを使用できないという惨事になりかねません。買い替えるなら早めに行動するのがおすすめです。
エアコンを買い替える際には、「適用畳数」をよく確認してください。例えば、「8〜12畳用」という表記のエアコンがあったとき、「うちのリビングは10畳だから、このエアコンで大丈夫だ」と選ぶのは間違いです。
この「8〜12畳」という表記は、「8畳から12畳の部屋で使えます」という意味ではありません。前の数字(8畳)は、木造平屋建てなど気密性・断熱性が低い家で使用する際の目安、後ろの数字(12畳)は、鉄筋コンクリートのマンションなど気密性が高い家で使用する際の目安です。
つまり、木造一軒家の10畳のリビングで使用する場合、このエアコンではパワー不足です。部屋に見合わない小さなエアコンを使うと、エアコン内のコンプレッサーが常にフル稼働し、電気代が高くなってしまいます。お住まいの家の構造に合わせて、余裕を持った能力の機種を選びましょう。
■中途半端な「お掃除機能」は不要
買い替え時のポイントをもうひとつお伝えします。最近は「自動お掃除機能」のついているエアコンが多いのですが、実はそのほとんどが「フィルター表面のホコリを軽くブラシで掻き落とす」程度の機能しかありません。
ホコリが溜まるダストボックスは自分で定期的に掃除しなければなりませんし、フィルター自体も完全に綺麗になるわけではないので、自分で外して洗う必要があります。
それなのに、お掃除機能がつくだけで本体価格は1万〜2万円高くなります。さらに、専門業者にエアコンクリーニングを頼む際には、お掃除機能付きエアコンだと料金が5000円から1万円ほど高くなることが多いです。
買うときもメンテナンス時も費用が高くなるのに機能は中途半端であれば、「お掃除機能なし」のシンプルなモデルを選んで費用を抑えるほうが賢いと言えます。
もしくは、結露水を使って内部を凍結洗浄し、熱風でカビを防ぐといった「本格的な内部自動洗浄機能」のついたハイエンドモデルを購入するほうが、合理的な選択でしょう。
■買い替え時は「自治体の補助金」をチェック
エアコンや照明、冷蔵庫などの家電を省エネ性能の高いものに買い替える際は、お住まいの自治体の補助金制度を調べてみてください。現在は多くの自治体が、脱炭素や家計支援のために、省エネ家電への買い替えに対する補助を行っています。
たとえば東京都では「東京ゼロエミポイント」という制度を数年前から実施しており、省エネ基準を満たしたエアコンへの買い替えなどで、最大8万円分の値引きやポイント還元が受けられます。東京都以外の地域でも、数万円規模の補助を行っている自治体は数多くあります(※)。

制度の適用には「古い家電からの買い替えであること」「一定以上の省エネ性能がある製品に買い替えること」などの条件があります。購入前に自治体のホームページを確認するか、家電量販店の店員さんに質問するのが確実です。
以上の対策を講じて、光熱費のかかる暑い夏を乗り切っていきましょう。
※以下参照:
東京都「東京ゼロエミポイント」
高知県「こうち省エネ家電等購入応援キャンペーン」
京都府京都市「省エネ家電買換えキャンペーン」
兵庫県「省エネ家電買い替え促進事業」
愛知県名古屋市「名古屋市省エネ家電への買い換え促進事業」
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和田 由貴(わだ・ゆうき)
節約アドバイザー
日本女子大学家政学部卒。消費生活アドバイザー、家電製品アドバイザーなど、暮らしや家事の専門家として活躍。環境問題にも精通し、2人の子供を持つ現役“節約主婦”としてテレビ出演や、講演などで活躍。著書に『即実践! 即効果! 節約のプロがおしえる家計防衛術100』。
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(節約アドバイザー 和田 由貴)
