「雇用統計ショック」週明けの日本株も大幅安か この1カ月で為替介入効果はほぼ消失

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5月のアメリカの雇用統計は、労働市場の好調さが際立つ結果となった。FRB=連邦準備制度理事会が、高止まりするインフレを重視して「年内利上げ」に踏み切るとの観測も広がるなか、先週末のニューヨーク市場は大幅な株安となり、円相場では円売り基調が強まった。

想定以上の雇用の底堅さ

今回の統計が市場に与えたインパクトは、予測値と実績値の大きな違いに起因するものだ。

5月の非農業部門の雇用者数は、8万5000人ほどのプラスを見込んでいた市場予想をはるかに上回り、17万2000人増加して、記録的な上振れとなった。3月分は18万5000人分増から21万4000人増へ、​4月分も11万5000人増から17万9000人増に上方改定され、直近3カ月の月平均は18万8000人増と、2年2カ月ぶりの伸びとなった。5月の失業率は4.3%、労働参加率は61.8%と横ばいを維持した。

アメリカ年内利上げ予想は7割に上昇

雇用の安定ぶりが想定以上に鮮明になる一方、物価高は当面続く公算が大きいことを受け、市場では、FRBはインフレ警戒に集中しやすくなるとの見方が急速に強まった。アメリカ金利先物市場の値動きから政策金利を予想する「フェドウオッチ」によると、5日、年内に1回以上の利上げが行われる確率は、前日の約5割から一時、約7割にまで上昇した。

クリーブランド連銀のハマック総裁は5日、リンクトインに投稿し、「失業率が4.3%にあることは、自身が考える完全雇用の水準とほぼ一致している」との認識を示す一方で、「高インフレが持続的に続くことこそ大きな懸念材料だ」とし、「近いうちに何らかの対策を講じる必要が出てくるかもしれない」と結んだ。

5日のニューヨーク債券市場で、長期債相場は反落し、指標となる10年物国債利回りは、一時は4.55%と2週間ぶりの高水準をつけ、前日比0.06%高い4.53%で終えた。

FRBは金利据え置き、日銀は利上げか

FRBの新議長に就任したケビン・ウォーシュ元理事は、16〜17日のFOMC=連邦公開市場委員会が金融政策運営の初舞台となる。

トランプ大統領は5日、利下げすべきかどうかを記者団に問われ、「利下げを望む」と答え、ウォーシュ新議長に判断は任せるとも語った。パウエル前議長時代に何度も利下げ要求を突きつけたトランプ氏は、ウォーシュ氏の就任時はそうした姿勢を控えていた。改めて利下げを求める意向を示した形だが、金利据え置きの公算が強まっている今回の会合で、ウォーシュ体制のもとFRBが初めて示す声明や政策金利見通しが、タカ派トーンに傾く可能性を指摘する声が広がっている。

一方、日銀は、15〜16日に開く金融政策決定会合で、政策金利を現在の0.75%から1%に引き上げるとの観測が強まっている。植田総裁は、3日の講演で、「物価の上振れリスクが高まると判断される場合には、利上げの是非についてしっかりと議論する必要がある」と述べ、中東情勢が不安定なままであった場合でも、利上げに踏み切る可能性を示唆した。原油価格が高止まりしてインフレが加速する懸念が根強いなか、経済・物価情勢や金融市場の動向などを直前まで見極める構えとみられる。

介入効果はほぼ消失

こうしたなか、外国為替市場の円相場は、円安圧力が強まっている。

植田総裁の講演後、円は1ドル=159円台前半まで買われたが、勢いは維持されず、160円近辺での取引が続いた。5日に発表された雇用統計で、アメリカの年内利上げの可能性が意識されると、円売り・ドル買いが一層強まって、一時160円34銭まで円安が加速した。4月末以降、政府・日銀が11.7兆円を投じて行った円買い介入では、一時、最大5円ほど円高にふれたが、この1カ月あまりでその効果はほぼ消失した格好だ。

市場では追加介入への警戒感が広がっているものの、原油高が続くなか実需のドル買い圧力は根強く、市場関係者の間からは、「日銀が利上げペースを加速させる姿勢を見せない限り、円高は期待できない」との声も上がっている。

過熱するAI投資への警戒も重荷に

FRBの次なる一手をめぐる市場の見方が、タカ派的な引き締め方向へとシフトするなか、5日のニューヨーク株式市場は、主な株価指数が大幅安となった。前日に終値ベースで過去最高値を更新したダウ平均は700ドル近く値下がりして取引を終えた。

この日の売りはこのところ急騰していたハイテク銘柄に集中し、ナスダック指数は半導体関連の急落で押し下げられ、1日の下落率としては2025年以降で最大となったほか、フィラデルフィア半導体株指数も10%下落した。過熱するAI投資への警戒感とともに、金利の上昇が株価の重荷になっている。

日経平均株価は、先週、初めて6万8000円台に到達したが、今週の日本株は、アメリカ株安の流れを引き継いで、売りが先行しそうだ。6日早朝の大阪取引所の夜間取引で、日経平均先物は前日の清算値比2850円安の6万3820円で取引を終えた。市場の注目材料は、10日に公表されるアメリカの5月の消費者物価指数だ。強い結果となりFRBの利上げ観測がさらに高まった場合、4月の円買い介入前につけた安値の160円70銭台を超えた円安進行の可能性も指摘されている。

日米での金融政策を決める会合を翌週に控え、市場ではFRBと日銀の姿勢を瀬踏みしようとする値動きが続きそうだ。
(フジテレビ解説副委員長 智田裕一)