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更年期を過ぎたあたりから血圧値が上昇してきた――。そんな人は多いのではないでしょうか。実は、大半の高血圧は日々のセルフケアで改善できるのです(イラスト:末続あけみ 取材・文・構成:菊池亜希子)

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血圧上昇は体の調整反応の一つ

年齢を重ねると、「最近、血圧が高くて」「私も!」といった会話が増えますが、体の中では何が起きているのでしょうか。

「心臓から送り出された血液が血管の壁を押す力が血圧です。

その力によって血液は体の隅々まで酸素と栄養素を送り届けることができるのですが、加齢や運動不足が原因で血管が硬くなったり、ストレスで自律神経が乱れたりすると、それまでと同じ血圧では栄養素を手足の先まで運べなくなる。それを察知した心臓が、何とか末端にまで血液を送り届けようと血圧を上げて対応するのです。

つまり、『高血圧』は病名ではなく、状態を表す言葉。そして、高血圧のおよそ9割は体の調整反応の一つで、さほど怖いものではありません」

と、薬剤師で血液研究者の加藤雅俊先生は話します。

「体の状態は人それぞれ。体格や体質によって血液を循環させるために必要な血圧は異なります。つまり、血圧にも個性(個人差)がある。従来は『上の血圧が年齢+90までが許容範囲』とされたほど、加齢の影響も大きい。

ところがWHO(世界保健機関)の血圧基準値の改定を受けて、2000年以降、日本でも年齢を問わず、上の血圧(収縮期血圧)140以下が基準値と定められました。年齢や体質を考慮せず、140を超えたらみな『高血圧症』と診断されるようになってしまったのです。

しかし、140を少し超えた程度で薬を服用して強制的に血圧を下げると、体内の血液循環が滞ってしまう。誤解を恐れずに言えば、60代以降に血圧が140前後になるのは、ある意味、自然なこと。体調不良がなく快適に日常を送れているのならば、問題ありません」(加藤先生。以下同)

血圧に個人差があるとはいえ、許容範囲の目安は知りたいところ。

「多くの研究から、男女ともに最高血圧160未満では死亡リスクや健康寿命に差がないものの、160を超えると死亡リスクが上がり始め、180からは急上昇することがわかっています。ということは、リスクが高まる境界線は160。

もし現在、上の血圧が160前後で体調不良がないのであれば、薬に頼らず、降圧体操や食事法を取り入れ、血管をしなやかに保つよう心がけましょう。

ただし、180を超えるほど高い場合は医師に相談し、薬の力を借りて速やかに下げるのも一考です。160前後なら、まずは自分でできる対策を試しましょう」

起床時の血圧は高くなる

高血圧には、メンタル要因の血圧上昇とフィジカル要因の血圧上昇がある、と加藤先生。

「仕事や人間関係によるストレス、緊張や不安など、精神的な理由で自律神経が乱れると血圧は上がります。これがメンタル要因の血圧上昇で、自宅で測定すると正常値なのに医療機関で測るとはね上がる『白衣高血圧』もその一つです。

一方、加齢や運動不足によって血管が硬くなり、筋肉量や肺活量の減少も重なって血行が悪くなると、心臓のポンプの力を上げるよう脳から指示が出て、血圧を上昇させるのです。これがフィジカル要因の血圧上昇。

実際は両方の要因を併せ持つことが多いですが、どちらの比重が大きいかを知ると対策しやすくなります」

いずれにせよ、60歳を過ぎたら、普段から自身の血圧がどれぐらいかを知っておくことが大切です。

「血圧計には上腕式と手首式があります。誤差が出づらい上腕式を勧める医療機関が多いですが、手首式でも、装着した手首を心臓の高さに上げさえすれば、上腕式と遜色ない正確さで測れるので、どちらでもOK。

ちなみに、起床時の血圧は高めに出ます。起き上がる動作は体に大きな負荷をかけるため、起床時は、いわばエンジン全開の状態。就寝前より20〜30高いこともよくあるのです。

また、測定1回目の数値が高くても、何度か測るうちに下がっていけば大丈夫。数回測って数値が落ち着いた時点で記録しましょう。朝晩の血圧を毎日記録していくと、自身の適正血圧値の幅も見えてきます」

ただし、少ないながら「怖い高血圧」があることも忘れてはなりません。

「腎機能の異常、甲状腺や副腎からの過剰なホルモン分泌など、原因が明らかな高血圧(約1割)には要注意。根本原因の早急な治療が必須です。中でも、脳梗塞や心筋梗塞を起こしかけている急激な血圧上昇が最も怖い。

たとえば、普段は130前後なのに突然180前後にはね上がった場合は、脳や心臓にできた血栓を押し流そうと、心臓が必死に血圧を急上昇させている可能性があります。脳梗塞や心筋梗塞の前兆は、急な血圧上昇以外にも、ろれつが回らない、顔の片側が麻痺する、視野が狭くなる、手足がしびれるといった異変を伴うことも。

『何かおかしい』という自覚症状、もしくは家族や周囲の気づきが頼りです。こういうときは決して様子を見たりせず、夜中でも、すぐに救急車を呼んでください」 

次回からはタイプ別の具体的な降圧対策を紹介します。