「繊細さん」のカウンセラーが自身の離婚トラブルに直面。実体験をもとに伝える“傷ついた心の対処法”
60万部超の大ヒットを記録した『「繊細さん」の本』の著者であり、HSP専門カウンセラーとして活躍されている武田友紀さん。最新刊『ある日、夫が出て行った。どうする心理カウンセラー!』(扶桑社刊)では、自身の離婚エピソードを振り返るとともに、その経験を乗り越えるために役立った「自己肯定感の育て方」についても掘り下げています。本書を執筆した武田友紀さんに、執筆の動機や、どのように離婚と向きあったのか、話を伺いました。

心の世界を楽しみながら感情を扱う「スキル」を伝えたい
――新刊『ある日、夫が出て行った。どうする心理カウンセラー!』はこれまでの「繊細さん」シリーズとは違い、小説に近い形で書かれています。この本を執筆しようと思った動機をお聞かせください。
武田友紀さん(以下、武田):心の世界をわかりやすく伝えたい、と思ったのが始まりです。カウンセリングでは「自信なんてもったことがない。自己肯定感って、どうやって育てるの?」「私の人生、どこまでが『親のせい』なの?」といったテーマを扱いますが、こうした話は抽象的で、文字にすると退屈で読めなくなるんですよね。
「心理カウンセラーがスキルを駆使して、離婚を乗り越える」という実話と、カウンセリング場面を小説のように書くことで、心の世界を楽しみながら感情を扱うスキルをお伝えできるのでは、と考えました。
たとえば「浮気疑惑の元夫に激怒している」というエピソードをとおして「怒りとはなにか」「どう扱うと安全なのか」「そのためのスキルは?」といったノウハウを展開しています。
読者の方から「一気に読んだ」「普段は本を読まないけれど、久々に最後まで読めた」と感想をいただいたので、読みやすく仕上がったのでは、と思っています。
夫と別居後、当時4歳の娘にかけた言葉

――夫に突然家を出て行かれて、相当混乱したとお察しします。残されたお子さんにはどのように説明したのでしょう?
武田:当時、娘は保育園の年少で、夫の不在を「パパとママがケンカしちゃったんだよ」と伝えました。娘が父親を慕う気持ちを「自然で、あっていいもの」として扱うことを心がけました。
娘は父親が大好きです。もし私が元夫の話をいやがったら、娘は「父親が大好き」という気持ちを封印せざるを得ない。心の一部を封じるのは、とてもつらいことなんです。
ですから「パパとも暮らしたいし、ママとも暮らしたいよね。両方の気持ちがあっていいんだよ。今はママと暮らして、パパに会いたいと思ったら会いに行こうね」と折に触れて伝えています。
日常のなかでも父親の話をよくします。「パパはあなたのことが大好きなんだよ」「算数はパパが得意だから、今度教えてもらったらいいよ」などです。
これは、元夫からのDVやハラスメントがなかったからできることなので、父親の話をしても大丈夫かどうかは各ご家庭によっても違うと思います。心身の安全を確保した上で、考えていただけたらいいのかなと思っています。
離婚危機のなか、メンタルを保つために心がけたこと
――ご自身が離婚問題に直面しながら、カウンセラーとして相談者さんをケアするのはつらいときもあったと思います。どのようにメンタルを保ったのでしょうか。
武田:火事場の馬鹿力というか、ひとり親として「娘を食べさせていかなきゃ」というのがあったので、がむしゃらに働く時期が何年も続きました。今思えば、仕事を減らして娘とすごす時間を増やせばよかったのですが、混乱している最中は生き抜くだけで精一杯。それはそれでよくやった、と思うことにしています。
私は、カウンセラーの仕事がすごく好きなんです。相談者さんと話すのは、心の深いところで相手とつながることですから。働くことで体力を使いますが、心は元気になるというか、むしろ支えてもらったと思っています。
振り回されないために「私はどうしたいのか」に立ち返る

――夫と共同養育の形を模索したと書かれていますが、離婚協議ではどんなことが大変でしたか? 新たに得られた知見はなにかありましたか?
武田:元夫とは「娘が両親のもとを自由に行き来できるように」という方針で一致していましたが、それでも細かい離婚条件で揉(も)めました。
協議でNOの返事がくるたびに「お前のことが嫌いだ」と言われている気がして、しんどかったですね。私にとって元夫は大切な人だったので、揉めること自体がメンタルを直撃するというか。
離婚協議で意見がぶつかるたびに、「私はどうしたいのか」に立ち返りました。「相手がこう言ってきたら、こうしよう」と考えると、どうしても振り回されます。
振り回されないためには、主語を「私は」にして「私はどうしたいのか」を考える。そうすることで気持ちを落ち着けつつ、これは譲る、ここは譲らない、と協議していきました。
心を守るために「自分の感情に耳を傾ける」ことが大切
――書籍『ある日、夫が出て行った。どうする心理カウンセラー!』では、実際のカウンセリングの事例を引きつつ、「心を守るスキル」がたくさん紹介されています。ご自分の知識やスキルが自身を救ってくれた場面はありましたか?
武田:本では「矛盾する気持ちがあるときは、それぞれを別のキャラクターだと考える」という方法を紹介していて、離婚時にも大いに活躍しました。離婚時は相手に対していろんな気持ちが湧(わ)きますよね。怒りも湧くし、「私が悪かったのかな」という気持ちもあるし、悲しくなるし。
どんな気持ちにも、そう思うだけの理由があるんです。だから、感情に耳を傾けて、ひとつずつ受け止める。怒りが出てきたら「そりゃ怒るよね。あんなことされたんだもんね」。悲しみにも「悲しいよね、ほんとに大事にしていたものね」と。
矛盾していても、ひとつひとつを「そりゃそうだよね」と受け止めていく。そうすることで、荒れ狂う感情を少しずつ消化していけたのかなと思います。
「しんどさ」を感じている人に読んでほしい
――『ある日、夫が出て行った。どうする心理カウンセラー!』をどういう人に読んでもらいたい、どういう風に活用してほしい、といった思いはありますか?
武田:人間関係や仕事で悩んでいて「なかなかしんどいぞ」という方に読んでほしいですね。
タイトルは離婚エッセイに見えますが、この本は「自分と向き合う方法」を伝える本なんです。「感情の扱い方」「自己肯定感の育て方」「境界線のつくり方」といったスキルを書いています。
人生の転機にいると「今日はこう思ったのに、次の日には逆のことを思っている」など感情が乱高下しますよね。そんなときに読んでいただくと、感情を上手に受け止めながら前に進むヒントになるんじゃないかな、と思っています。
