Z世代 は香りを「集める」 香水の小型化が変えるブランド戦略

記事のポイント ブランドが若年層を獲得するために、伝統的な100mlサイズから30mlなどの小型ボトルへ戦略的シフトを図っている。 ミニサイズは、低価格で入手しやすい「香水ワードローブ」構築を志向する若い消費者のニーズに対応している。 しかし、小型化には生産コスト・在庫管理・主力商品の売上競合といった実務的な課題が存在する。
カルロス・フーバー氏が手がけるニッチなフレグランスブランド、アーキースト(Arquiste)は、アステカの儀式や古代ローマなどをインスピレーションにした香りなど、洗練された香水が特徴だ。フーバー氏は近年、若い世代の消費者が自分のブランドに惹かれていることに気づいた。そして、より手頃な価格でアーキーストを体験してもらえる方法を提供したいと考えたのである。
10種類の「チキートス」コレクション
フーバー氏は10月下旬、「チキートス(Chiquitos)」を発表した。これは、地中海風の「グローブ バイ ザ シー(A Grove By the Sea)」やフローラルグアバの「トロピカル(Tropical)」など、アーキーストのベストセラーのフレグランスをミニチュア化した10点のコレクションだ。コレクション名は、アーキーストの香りの多くを手がける調香師、ロドリゴ・フローレス=ルー氏との会話から生まれた。彼は香水を「チキートス」と呼んでいたのだが、これはスペイン語で「小さなもの」を意味する愛称だ。
香水は通常、50mlまたは100mlのボトルで販売されている。しかし、ひとつのシグネチャーフレグランスではなく、「フレグランスワードローブ」を持つ消費者が増えていることから、フーバー氏は、従来のフルサイズボトルの外見の魅力を損なうことなく、旅行用サンプルのように手軽に購入できる小さなサイズの香水の開発余地があると確信している。チキートスの30mlボトルは1本105ドル(約1万5000円)、アーキーストの通常の100mlボトルは225ドル(約3万2000円)だ。
ミニ版市場の広がりと背景
アーキーストのほかにも、フルサイズボトルのミニバージョンを発売し始めたほかのニッチブランドが存在する。韓国のブランド、ボーントゥスタンドアウト(Borntostandout)は2024年9月にポケットサイズの15mlボトルを発売し、パリのナチュラル香水ブランド、オーメイ(Ormaie)は2023年に詰め替え可能な20mlボトルを発売している。このような小型ボトルは、消費者にとってより手頃な価格で香水ブランドを試したり、コレクションを増やしたりするための手段となる。
「ネットフリックス(Netflix)のようなもの。映画はもう所有しないが、100本は観たい」と語るのはオーメイの共同創業者、バティスト・ブイグ氏だ。「香水も似たようなものだ」。
小型化の裏にあるコストと戦略的ジレンマ
しかし、多くの顧客に訴求できる一方、小型で低価格のボトルはフルサイズのボトルと同じほどの製造コストがかかる可能性がある。
「これはマージンの低い商品だと考えるべきだろう。実際のところ利益率は低い。だが、流通範囲が広く、訴求力も高いので、多くの消費者が関与しやすくなる」とフーバー氏。「(このサイズは)とても魅力的だ。美しい箱に入っており、トラベル用とは異なり、意図的な配慮を感じる」。
フレグランス開発・コンサルティング会社、フラワーショップ(Flower Shop)の共同創業者であるアイザック・レカック氏は、どのサイズを提供するかはそれぞれのブランドの戦略と提案に大きく左右されると述べる。そして、大きなサイズのボトルから売上を奪ってしまうリスクもあると指摘する。
「実店舗を持つ会社であれば、ロレアル(L’Oréal)傘下だろうとスタートアップだろうと、ボトルやパッケージの魅力を最大限に引き出すフルサイズが必要だ。そして(トラベルサイズも)必要になる」とレカック氏は語った。「トラベルサイズはたいてい10mlボトル、フルサイズは100mlか50mlのボトルだ。その中間の容量は、主力商品と競合する。なので、重要なのは、その新製品を販売することにより、それがトレンドではあっても、自社のビジネスを損なったり共食いしたりしないかということになる」。
若年層のコレクション志向とサイズ多様化の課題
だが、1オンスあたりの価格が安い大きなボトル1本に投資するよりも、多くの香水を揃えたいと考える若い消費者にとっては、中間のサイズを提供することは魅力的に映るかもしれない。調査会社ニールセンIQ(NielsenIQ)のデータによると、Z世代は香水に年間204.15ドル(約3万1000円)を費やしており、平均消費者よりも年間38ドル(5800円)多いという。パイパーサンドラー(Piper Sandler)の2025年春の「テイキング・ストック・ウィズ・ティーン(Taking Stock with Teens)」調査では、ティーン男子の香水への支出が前年比で26%増加したことが判明している。
「ミレニアル世代からアルファ世代まで、若い世代の消費者は、フレグランスのワードローブを充実させることにますます関心を寄せており、実際、より多様なサイズの選択肢に惹かれることが多い」と述べるのは、インディ香水コンサルティング会社、ニューノーツ(Nunotes)のリードエディター兼ストラテジスト、コスタンツァ・ソフィア・マゼット氏だ。「しかし、複数のサイズを提供することには実務的な課題も伴う。異なるボトルフォーマットの製造と調達はコストと業務の複雑性を増大させる可能性があり、複数のSKUにわたる在庫管理が困難を極める可能性がある」。
ブイグ氏にとって、多くのブランドが使用している既製のトラベルチューブではなく、オーメイの20mlボトル専用の金型に投資することがオーメイのビジュアルアイデンティティを維持する鍵だったという。また、素材コストの関係で、20mlボトルと100mlボトルの利益率に大きな差はないとも付け加えた。
「このようなガラス製品を作る場合、1日に約6万個が生産される」と、ブイグ氏はその特注金型への投資について語った。「美しくて、バッグから取り出したときに最高の気分になれるような製品を作りたかった」。
小型ボトルの「可愛さ」という強み
物流や経済性の問題はさておき、小さいボトルには大きな強みがある。それは、その可愛らしさである。フーバー氏によると、小売パートナーには、チキートスのボトルに抵抗感を抱いていたパートナーもいたという。しかし、実際にミニボトルを目にして、その気持ちは変わったそうだ。
「最初は『いやだ』と言っていた人も多かったが、今では『わあ、とても可愛い。注文するよ』という感じになっている」とフーバー氏は述べた。
[原文:Should perfume bottles be smaller?]
Emily Jensen(翻訳・編集:ぬえよしこ)
