トランプ氏は“究極のナルシスト” 自由化か保護主義か…揺れるアメリカ経済の行方 専門家が解説
アメリカのトランプ大統領の政策が世界に与える影響について、構想日本代表の加藤秀樹氏が分析。国益よりも個人のメンツや名誉欲が優先され、その結果が世界を揺さぶっている政策決定の実態をOBSラジオ『モーニングエナジー』(6月16日放送)で明かした。一方で、トランプ氏が大統領に選ばれる背景として、戦後80年続いた経済自由化とグローバル化の流れが大きな転換点を迎えていることも指摘した。
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メンツ重視の外交が生む国際関係の動き
加藤氏によれば、トランプ大統領をよく知っている人は彼を「究極のナルシスト」だと言うとのこと。トランプ氏の決断の背景には常に強い自己愛と虚栄心があるとし、「赤い帽子にMAGA(Make America Great Again)と書いてありますが、本当はMake Donald Trump Greatなんでしょう」と語る。
トランプ氏と仕事でやり取りした人から、『資料を読まない』『メンツを非常に重視する』といった証言もある。こうした事情が国同士の交渉であっても、トランプ氏個人への“お土産”=手柄が重視される理由だろうと説明する。
トランプ氏がメンツを重視する姿勢は随所にあらわれている。ウクライナのゼレンスキー大統領との会談では、ゼレンスキー氏の態度に反発してすべての協定締結を中止したものの、後にゼレンスキー氏が謝罪し、譲歩する形で協定が結ばれた。
また、日本製鉄によるUSスティール買収についても、『アメリカの象徴だった製鉄会社を日本の会社が買収しても、最後に守るのは俺だ』というメンツを立てる形で黄金株をアメリカ政府が持つ妥協案が成立した。
しかし、メンツを重視することにかけては中国やイランも負けていない。そうなると、メンツの背後にある覚悟の強さ、背負うものの大きさが勝負どころになる。それが世界全体が直面しているリスクだと強調した。
関税引き上げがもたらす連鎖的な経済混乱
もし、自動車に対して25%の関税が課されれば、アメリカの現在の関税の10倍になり、「300万円の自動車が375万。一気に70万円近く高くなる。アメリカ国内で組み立てられる自動車でさえ、部品の多くはメキシコやカナダなど海外から輸入しているため、部品の値上がりが最終製品の価格上昇につながる」と分析した。
さらに、「関税の影響は自動車だけでなく加工食品や衣料品、スマートフォンなどアメリカに住んでいる人の生活全般にも及ぶ」と指摘。
「一般消費者は物価が上がり生活が苦しくなる。その結果、物を買い控えるようになると景気が悪化し、企業業績も悪くなり、解雇される従業員も出てくる可能性がある。悪いスパイラルが始まる」
「輸入を米国内生産に変えると言っても、工場を新設して生産体制を整えるには時間がかかる。こういった波及が時間を伴いながら動いていくので、一旦関税を引き上げると混乱が数年以上続く可能性が高い」と予測する。
経済自由化の光と影を見つめ直す転換点
一方、加藤氏は、トランプ政権の保護主義的な政策を単に批判するだけでなく、第二次世界大戦後80年間続いてきた経済自由化の流れ自体を再考する必要性を強調した。「本当に何でも自由化がいいのか」と問いかける。
「アメリカやヨーロッパと同様、日本だって自由化によって木材や牛肉を安く買えるようになった裏で、様々なマイナスがある」と指摘。安い木材を海外から輸入する一方で、利用されなくなった日本の山林が荒れ、伐採が進んだ熱帯雨林の環境が悪化していることなども例示している。
貿易に限らず、アメリカの圧力で自由化したスーパーの立地、コンビニの24時間営業や正月営業などの"便利さ"の裏で「多くの人が安い賃金で時間に追われてストレスを抱えている」現実を挙げる。
「経済の自由化は物の豊かさや便利さをもたらした反面、分断、格差、地球環境の悪化というマイナス面も引き起こしている」と加藤氏は述べ、トランプ政権のような保護主義的な動きの背後にある真の理由を考える必要があると説く。
加藤氏は最後に「トランプ政権は歴史的必然の産物でもある。『だからトランプ流はダメだ。もう一度自由化に戻そう』ではなく、ここで経済の回し方を考え直す必要がある。地産地消という言葉もあるように、より落ち着いた、身の回りのものを大事にして過ごす道を探すべき時代を迎えている。自由化、グローバル化とその反動を潜り抜けた次の社会のビジョンを早く作らないといけない」と問いかけた。
加藤氏は「メディアでもそういう声はあまりないが、ここが一番大事なところ」と強調した。
加藤秀樹(構想日本代表)
京都大学経済学部卒業後、1973年大蔵省入省。証券局、主税局、国際金融局、財政金融研究所などを歴任。1997年4月、非営利独立のシンクタンク「構想日本」を設立。2009年に政府の行政刷新会議の事務局長に起用され、国レベルの事業仕分けに取り組む。公益財団法人国際連合協会評議員、一般財団法人地球・人間環境フォーラム評議員などを務める。
